緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

ガバペンチンとプレガバリン・・どちらが鎮痛補助薬としてよいか+デュロキセチンメモ

2017年02月26日 | 医療

プレガバリンとガバペンチンの比較について
過去の記事なのですが、
今なお、沢山のアクセスがあり、
再掲いたしました。





神経障害性疼痛に用いる薬剤の一群を
鎮痛補助薬といいます。

末梢神経障害に保険適応があるのがプレガバリンです。

それ以外の多くの鎮痛補助薬は
保険適応がありません。



余談ですが。

鎮痛補助薬としてプレガバリン以外で
比較的最近よく使われているものに
デュロキセチンが挙げられます。

このデュロキセチン、
2015年、繊維筋痛症に保険適応拡大があり、
2016年、慢性腰痛症に伴う疼痛で保険適応拡大がありました。

末梢神経障害ではなく、
腰痛症というところが
病態評価をしっかりしないと
効果がでないものにも
投与してしまったりしそうです。

 

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2010年12月12日




鎮痛補助薬として、
ガバペンチン(ガバペン)がよいのか
プレガバリン(リリカ)がよいのか。

そんな質問が増えていました。

保険適応上はプレガバリンなのですが、
薬理学的にどちらがすぐれているのか・・



14日の勉強会の資料を少しレビューしてみます。

結果から述べると
プレガバリンです。

理由は、2つあります。

1)プレガバリンは血中薬物濃度が線形動態を示すから
 ガバペンチンは、非線形性動態です。

もっと分かりやすく言うと

2倍量内服して頂いた時、血中濃度が倍になるのがプレガバリン。

2倍投与したにも関わらず、血中濃度の上昇が倍にはならないのがガバペンチン。
特に、量が多くなればなるほど、
ガバペンチンは頭打ちになっていきます。

ガバペンチンは、2倍の投与をしても2倍の効力が得られるわけではなくなるのです。
このことから、ガバペンチンでは効果予測がつかなくなるわけです。






2つ目の理由は

2)プレガバリンの方がバイオアベイラビリティ(生体利用率)が
  投与量によらず安定しているから

経口投与した薬剤は、消化管で吸収され、
門脈経由でまず肝臓に運ばれます。
ここで、一旦代謝を受けるのですが、
その時、どの位代謝を受けないで
全身循環に乗ることができるかという割合を
生体利用率といいます。

プレガバリンでは通常投与量の範囲では、90%以上です。

それに対し、ガバペンチンでは

  200mg    70.1%
  400mg    42.1%
  600mg    46.4%
  800mg    41.2%
1000mg    32.0%
1200mg    30.5%
(ガバペンチン インタビューフォームより)

と、頭打ちになっていくのだそうです。

製薬企業の方に質問したところ、
ガバペンチンの吸収は、
アミノ酸トランスポーターによって吸収されるため、
ある程度量が増えると飽和状態となってしまい
頭打ちとなり、利用率が低下すると考えられているとのことでした。

でも、プレガバリンも同じだったと思うのですが、
なぜ、プレガバリンは頭打ちにならないのか・・
企業の方もそこは不明とのことでした。




あたらめて、これを知って、
今までの臨床上で疑問に思っていたことについて
そういうことだったのか・・と
納得することができました。

(いまごろ、遅いよ・・と反省・・)

増やす割には、効かないよ~
じゃあ、もう400位で止めよう・・
副作用ばかり表に出ても・・
といった具合に、
増量は結局あまり行わない傾向にありました。
最大800程度と他の施設に比較すると
私はいつも抑えていました。

800程度で吸収は飽和状態になるようです・・
理にかなっていました。



新しい薬剤が出たら、
インタビューフォームなどは、
臨床疑問を感じるたびに
繰り返し見直さなければ気がつかないものだなあ・・と
感じています。




あるレビューで、
神経障害性疼痛では、
プレガバリンはガバペンチンの
鎮痛効力比は1:6である
といったものを読んだことがありました。

ずっと、これには?????でした。

当たり前ですよね。
投与量が増えると頭打ちになるガバペンチンと
きちんと線形に増えていくプレガバリンでは、
どの投与量かによって、一律には
1:6といった比率は成りたたないことがわかります。



これも、今回の勉強会のために、
改めて勉強しなおさせて頂いたお陰だったなあと思います。


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6 コメント

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プレガバリン (ねこ姫)
2010-12-14 14:40:21
ガバペンチンからの移行えはなくて、プレガバリンを最初に使うことが増えてきました。
プレガバリンのほうが立ち上がりがよくて効果の安定もいい、でも早期の悪心とふらつきはやや強い、という印象があります。
あくまで「印象」でしたが、薬物動態的に説明できそう。

先生がブログに書いてくださったおかげで勉強できました。
ありがとうございました。
きちんと原典に戻って勉強しなくてはだめですね。
返信する
ねこ姫さん (aruga)
2010-12-19 19:56:05
んん・・
悪心、ふらつきですか・・
あまり多くない印象ですけれども・・
75mg 1X 眠前から開始することが多いです。
返信する
たまたま……でしょうか (ねこ姫)
2010-12-22 01:09:27
私も75mg 1× 眠前から開始しています。
開始した翌日に、なんだかむかむかします、と言われることが何度か続いているのです。
食事はできる程度で、数日でおさまっています。

ちょっと気になったこと……薬剤師さんが処方開始時に薬の説明をしに行ってくれるのですが、リリカ内服前には「悪心が出ます(出ることがあります)」という説明を必ずしてるので、ひょっとしてその影響もあるのでしょうか?

ふらつきというか、ちょっとふわっとした感じがする、というのは今のところ2名だけです。
返信する
ん・・・ (aruga)
2010-12-23 20:31:48
傾向内服薬は、すべての薬剤で消化器症状は起こりえるとは思います。
が・・ん・・誘導的なところはないとはいえないようにも思います。

副作用を説明するとき、患者さんにいっしょに注意していただくこと、頻度が高いこと、早期対応が必要なものに重心をおくようにしています。
返信する
NNT (suga)
2012-02-11 10:36:11
finnerupの論文の中だったかどうか忘れましたが、gabapentinは2400mgを超えるとNNTが5弱から4弱に下がるというのがあり、実臨床でもガバペン1200mgで痛みとれなかった人が2400mgまで増やしたら(眠気なく増やせたら?)良くなった人が数人いて、何でかなあと思ってました。これもbioavailabilityで説明がつきそうですね
返信する
sugaさん (aruga)
2012-02-12 22:12:14
コメントありがとうございます。
ご指摘の通りだと思います。
でも、どうして同じ機序で吸収される(らしい)プレガバリンとこのような差が生じるのか、いまだに答えに行きついていません。

sugaさんに、論文と臨床をバインドさせつつ、説明がつきそうって言って頂くことができ、嬉しかったです。
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