物事の選択は、論理性や偶発性の間にそう差があるものではない・・
Eテレ 白熱教室で展開されていました。
コロンビア大学 シーナ アイエンガー教授
http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/columbia.html
いかに人は物事を選択しているか。
よりよい選択をするにはどうすればよいか・・
そんな番組でした。
選択にかかる影響の差として、
ベネフィット確率とリスクの確率
どちらから説明すると人は選択する可能性が高いか。
医療現場では、直面することです。
動機づけ効果として、コカコーラ社の一例
清涼飲料水の40数%のシェアを持っているという話より
地球上の全人口 X 一日飲水量(2L) に占める自社製品の割合は2%という提示をした方が
社員のモチベーションが上がったこと
正と負の効果の話・・・
新聞の株価変動を見て選択した結果と
ダーツで決めた結果ではダーツで決めた方が
より利益が大きかったこと
つまり、物事の選択は、論理性や偶発性の間にそう差があるものではない・・
ということ。
では、もっとも望ましい形はどういう選択をした時なのか。
”情報に基づいた直感”
という結論。
情報に基づいたというのは、
論理的な情報もですが、
経験を積むことが大変重要だと説明。
また、同時に自分の知識の限界を知る能力でもあり、
過信から自分を守ることにもなると。
経験が豊富で大変優れた投資家の例をあげました。
その投資家は、直感を”匂う”と表現したといいます。
これには、トレーニング方法があり、
そこで進められていたのが、「選択日記」
週1回は少なくとも、記述し振り返る時間を持つこと
どんな思考プロセスを経たか
何が上手くいって、何が上手くいかなかったか
選択がどれだけ成功したか、
そこに点数を自分なりにつけていくこと。
そして、上手くいった場合に共通している要素は何か
失敗した場合に共通している要素は?
これを、自分の選択プロセスにフィードバックしていくことで
よりよい選択を直感を磨くことも含め行っていくことができると
解説していました。
これを聞いていて、
緩和ケア領域で常々感じていたことだと思いました。
疼痛のWHO方式は簡便な手順書です。
ここにガイドラインや論文を絡めても
目の前の患者さんの苦痛を取り除けていない場合があります。
そこに共通しているのは、
病態評価がされていない
または
評価すべき点が見誤られているなどです。
患者さんの問診を十分し、
丁寧に身体所見をとって、
あれば画像や採血の結果をじっとみます。
直感が働くと行うことが見えてきます。
時に、患者さんの体が透けて見えるような感覚になることがあります。
また、前回の、”違う”と感じる感覚。
これは、投資家の匂うという感覚に近いものかもしれません。
評価が十分にできているプレゼンテーションを聞くと
この直感が働きますが、
表面的な手順書的なプレゼンでは、
まったく、見えてきません。
事例検討を多施設で行うと
上手くいく事例検討は、十分な評価がされているけれど方法がわからない場合で
上手くいかない事例検討は、評価そのものに問題があり、いくらプレゼンを多くの人で聞いても、
病態が理解されていなければ、何が問題かも整理できないのものです。
つまり、緩和医療のトレーニングは、
「情報に基づく直感」の
情報として、患者さんの十分な病態評価、学術的な知識
直感として、それまでの蓄積された経験、感じる力
の両輪が必要なのではないでしょうか。
EBMは大変重要な情報ではありますが、
それだけでは、良質の緩和医療には到達できないと感じています。
経験を積むこと、それによって、気づくことができる直感力を養うこと
の両者が大切なのだと思います。
現場で、この3年間ずっと悩んでいたことがありました。
このEテレを観ていて、頭の整理ができたように感じました。
直感力・・
これはどうすれば得られるのか・・
前述の「選択日記」に相当するのが
症例をまとめることなのだと思います。
通常の症例報告の記載に、
さらに、自分の選択プロセスを残し、その結果を残し、
自分なりの評価を最後につけること。
上手くいったケースと上手くいかなかったケースをまとめ
自分の方法論的な引き出しを作っていくこと。
退院サマリーをまとめるなど施設のタスクがあると思いますが、
個人的な考察ははいりませんから、そこは、工夫が必要です。
専門医申請に20例の症例をまとめなければいけませんが、
これも、日常から週1症例程度まとめていくことが
実は、この直感力を磨くには、よいのではないかと思います。
よくよく考えてみると
私は、急性期病院でチーム立ち上げを始めてからは
一症例一症例振り返りを続けていました。
直感・・・
自分なりの努力はできても、
これは、人に教えるのは難しい・・・
緊急手術で予測できなかった展開の時、ひらめきが降りてきたことがありました。なぜと聞かれても説明できないのですが、「魂のささやき」とでも言うやつですかね。
何となく、女性の方が直感は優れているような気がします。大脳生理学的にはどうなのでしょうね。
私も振り返りのトレーニングを心がけてみようと思いました。
雑談をするなかで、検温をするなかで
話始めた患者さんの言葉に、
時間がかかっても、この言葉を最後まで傾聴し、思いを引き出して上げなければと感じて、その場に腰を下ろすことがあるのですが、
そういうことも直感の一つといえるでしょうか?
私も、ただ時が流れて終わり、ではなく、
蓄積される経験にしたいと思います。
toruさんも、すごいんだなあって思います。
女性が得意とする直感は、感性的な直感力のことが多いような印象があり、医療的には頼れる直感と役に立たない直感の両方がまざっているように感じます。
なぜ、留まろうと感じたか・・そこに患者さんからの非言語的なメッセージを感じ取る力があるのでしょう。
素敵だなって思います。