相当以前のことです。
胃癌の患者さんを受け持っていた時の事。
息子さんは国際線のパイロットでした。
その頃、ドラマの影響もあって、男性一番人気の職業でした。
ある朝、診察に病室に伺いました。
サイドテーブルには地図が広がっていました。
昨夜から息子さんはフライトなのですか?
ええ・・クアラルンプールです。
素敵ですね。
パイロットって花形ですね。
そんなんじゃないんです。
私にとっては、本当に心配で。
パイロットになってからずっと、フライトの日はいつも祈るような気持ちなんです。
祈るとは?
無事に到着するまでは飛行機が落ちるんじゃないかと。
無事に到着するまでは飛行機が落ちるんじゃないかと。
中々ぐっすりと寝られなくて。
地図を見ながら、安全を祈っていらっしゃったのですね。
ええ・・今、この辺りかなあと思いながら。
ええ・・今、この辺りかなあと思いながら。
パイロットになった最初からずっとこうしてフライトの日は祈ることが日課のようになっています。
安全な乗り物
パイロットは素敵といった
私の一般的な感覚の一方で、
患者さんは、
無事に事故無く到着し、
帰国便で何事もなく帰ってきてと
息子さんを想い、
祈っていらっしゃったことを
改めて知りました。
当時、手術の前の説明で
合併症がおきる確率を、
飛行機が落ちる程度のリスク
というフレーズがよく
使われていました。
医療者にとって、
飛行機は安全なもの
だから安心してください
という固定観念的感覚の一方で、
一人一人には物語があり
この時の患者さんのように
異なった価値や印象を
持っていらっしゃること・・
当たり前のことなのですが、
一晩中心配し、祈っていた
患者さんの表情や言葉を聴き
改めて心に染み入るような
気持ちになりました。
例え話を使う説明には、
細心の配慮が必要であることを
今も心に留めています。
患者さんがお亡くなりになった時、
ご挨拶に来てくださった息子さん。
こんなに苦痛がなく、最期を迎えられるとは予想もしていませんでした。
いつか、ボランティアのような形でも、恩返しをしたい気持ちです。
苦しくない最期だったというのは
緩和ケアを専門にしているものにとっては
最高の言葉でした。
どうぞ、患者さんが祈り続けていらっしゃった安全なフライトを私達を含めた社会に還元してください。息子さんの置かれたところでその役割を果たしてくださることが私たちの喜びです。
でも、ボランティアとして来てくださる・・そんな日が来るのもまた、楽しみです。
そんな風に言葉を返したような記憶があります。
それ以降、飛行機に乗ると、
機長さんのお名前が
その時の患者さんの
お名前ではないかしらと
耳を傾けます。
私も飛行機大好き人間ですが、もし息子がパイロットなら同じように心配し祈っていたことと思います。
息子さんのお言葉、素敵です。
私もホスピス勤務時代にはいろいろな患者さんと接し、非常に勉強になりました。
あれから20年経ちますが、あるお母さんの忘れ形見の双子のお嬢さんとは未だに交流があり、母の日には毎年プレゼントが届きます。
ホスピスで働いた日々は患者さんが亡くなったり辛いことも多かったですが、私の人生の中でダイヤモンドのように輝いています。
どうかこれからもお身体にお気を付けられて患者さんの為にがんばって下さい❣️
確かに、価値観を始め、考え方や感じ方の基準は一人一人まったく違いますね。
私は、この世には絶対的なものなど一つもなく、すべて相対的なものだと、昔から思っています。
特に仏さまの勉強を始めて、それを強く思うようになりました。まさに諸行は無常であり、諸法は無我なのだと思います。
そう考えると、特に先生のようなお仕事だと、
>例え話を使う説明には、
>細心の配慮が必要である
まったくそうなんだろうなと思いました。
いつもありがとうございます。
ホスピスでのこと、教えてくださり、ありがとうございます。
人生の集大成の場は、私たちに共に泣き、共に笑う繋がりを与えてくれます。その記憶は本当に宝物ですね。
優しい言葉を頂き、また、明日から頑張れそうです。
aruga
いつも温かな励ましの言葉を残して下さり、本当にありがとうございます。
そして、仏教の大切な教え、まさにその通りだと感じます。
無常を生きるからこそ、今を大切にしなければ・・と思います。
こちらこそ、ありがとうございました。
aruga
ブログを読ませていただき、はっとさせられ、
何かコメントをさせていただきたいと思うの
ですが、なかなかまとめることができません。
今回も、誰もがわかったように口にする
「相手に寄り添う」ということがどういうことか、
改めて考えさせられました。
かつて、私が好きだった方に、コラムニストの
金平敬之助さんという方がおられました。
その金平さんが、講演や著書(PHPなどです)で
言われていたことが、
「一言で人は活きる。一言で人は沈む。」です。
「一言の大切さ・一言のおもいやり」は、
いつの時代でもかみしめなければならないですね。
ブログをお訪ねくださりありがとうございます!
そして、感じてくださったこと、その感情をいくつかの角度から表現してくださったこと、本当にありがとうございます。
生きた言葉にするには、丁寧に大切に伝えなくては、ですね。
心に刻みます!!
aruga
病気の関連だけでなく、日常でも気を使わなくてはいけない場面、言葉を選ばなくてはいけない場面というのは、いつも心に留めておかなくてはいけないですね。
しかし、私がもしも息子さんの立場で、父親や母親の祈りを知ることがあったら、どうしたかな、といろいろと1日考えていました。
知らなかった、という風に周囲に漏らすしかないのかな?
同時に自分の子どもに対して、そこまではしないとも思いました。それを知ったら子どもにとっては重すぎるなぁ、と。そして子どもの自由に重しをつけているように思ってしまいました。
難しい‥。先の見えない袋小路に入ってしまいます。
ありがとうございました。
子供を亡くしたお母様、知り合いの方から、「❍❍ちゃんは星になって空からあなたを見守っているから」と言われた後、「あんなに寒そうなところに一人で行って寂しいだろう」と夜空を見られなくなってしまったそうです。
母の愛は本当に有難く、切ないほどです。
悲しい時、辛い時ほど、かける言葉って難しいと思いました。
言葉と真心を大切にしなければいけませんね。
星になって見守ってくれている・・
よく使われる表現ですが、そのお母様にとっては別の意味があったのですね。
お書きくださっているように心を込めた言葉なら、それが仮にその方の価値観とは異なっていたとしても、共にいるものとしての姿勢は伝わるように感じます。
爽やかな今日のお天気もあり、お昼休みのひと時にありがとうございました。
aruga
ブログをお読みいただき、色々考えを巡らせてくださったことがまず、とてもありがたいことでした。
親と子の距離感、様々な取り方があってよいですよね。
きっと、Fsさんのコメントを読んで、ほっとした方もいらっしゃることでしょう。
本当に、ありがとうございました!
aruga