緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

In a better world (未来に生きる君たちへ)

2012年03月18日 | 社会時事

昨年のアカデミー賞最優秀外国語映画賞・・

がんで母を亡くしたクリスチャンは、暴力に対する復讐の結果、大切なものを失いかけて、自死にいたろうとします。その時、アフリカの難民キャンプで働くクリスチャンの同級生の父であるアントンに、お母さんが恋しいと心の内を話します。アントンは、こんな風に言います。

生きているものと死の間にはベールでへだれられているんだ。
愛する人や大切な人を失ったときに
そのベールが上がる瞬間がある。
その時、人は死を鮮明に見ることがあるんだ。
でも、それは一瞬で、ベールはすぐに降りてしまう。
そして・・
人はまた、生きていくんだ。

In a better world (未来に生きる君たちへ)
デンマーク映画で、原題は「復讐」




憎しみと許し
絶望の中で生まれる絆・・
とても、感動的な映画ですが、
医師ならではの苦悩を見たように思います。

子育てにエネルギーを使うのは、
10歳前後だとかねがね感じていました。
イジメや成績のこと、ちょっとした作法のこと
学校とのやり取りや親同志の付き合いも入ってきます。

また、崇高な思いで医療に望んでも、
アントンがアフリカで感じた葛藤に近似した経験も
国際協力に限らず、病院という社会の中でもあります。

医師の立場も分かるけれど、
そんなことをしている場合じゃない、
自分の家族にもっと目を向けて・・
という思いを投射しながら見ていました。

悲しみを抱え、心の中で複雑化していく母を失った気持ちを
子供たちは、中々打ち明けてはくれません。
小さなSOSは出し続けているのでしょうが、
本当に、気がつくことが難しいのです。
この映画の中にもそれが随所に感じられました。

幸いにも、結末に救われたような気持になりました。

昨日、ブログに頂いたコメントに返信を書きながら、
夜中3時頃まで思わず見てしまった映画・・

子供たちから奨められた映画でした。
これから医師を目指したいと思っている方も
医師として働いている方にも
キャリアの積み重ね方に戸惑っている方にも
是非、観てください。





久しぶりに4人家族が集いました。
次に4人が一緒に会えるのは
来年の4月以降のことになりそうです。




http://www.mirai-ikiru.jp/video/trailer.mp4


(ストーリーから抜粋;http://www.mirai-ikiru.jp/story.html

デンマークに家を持つ医師のアントンは、アフリカの地に赴任し、キャンプに避難している人々の治療を行っている。様々な患者の中には、妊婦の腹を切り裂く悪党“ビッグマン”の犠牲者もいた。母マリアンと幼い弟のモーテンと暮らしているエリアスは、毎日学校で執拗なイジメにあっていた。父親のアントンが大好きなエリアスはその帰国を喜ぶが、両親は別居中である。ある日、母親の葬式を終えたクリスチャンが、エリアスのクラスに転校してくる。その放課後、イジメっ子のソフスにエリアスは絡まれ、クリスチャンも巻き添えを食らう。翌日、クリスチャンはソフスを殴り倒し仕返しをする。ソフスの怪我が表沙汰になり、呼び出された父親クラウスは、報復にはきりがないと諭すが、クリスチャンはやり返さなきゃだめだと口応えする。帰国したアントンが、子供たちとクリスチャンを連れて出掛けた帰り、モーテンがよその子と公園でケンカになった。割って入ったアントンだが、駆け寄って来た相手の子の父親に、理由も訊かれずに殴られてしまう。明くる日、クリスチャンとエリアスが、自分を殴った男ラースの職場を割り出したことを聞いたアントンは、子供たちとラースの職場を訪れる。殴った理由を問いただすアントンを、ラースは再び殴るが、アントンは決して手を出すことなく、屈しない姿を子供たちに見せた。帰り道、殴るしか能のない愚か者だとラースを評するアントンに、エリアスとモーテンは同調するが、クリスチャンは報復しなかったアントンに納得がいかない。アントンがアフリカへと戻った後、祖父の作業場で大量の火薬を発見したクリスチャンは、爆弾を作ってラースに復讐しようとエリアスに持ち掛ける。一方、アフリカのキャンプでは脚に怪我を負ったビッグマンがやって来る。アントンは周囲に反対されながらもビッグマンの治療を行うのだが・・・。デンマークとアフリカ。異なる二つの地で揺れ動くアントンと子供たち。憎しみを前に、どのような選択をするのだろうか——。


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4 コメント

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最近の自分 (くまごろう)
2012-03-20 01:33:03
ブログの最近の話題・・・どれもこれも、今の私があてはまるような、何とも表現できない気持ちです。

復讐してやりたいと思うこと・・・あります。
そういう思いに至るまでの間に、いっぱいサインは出したのに、気づいてもらえず、お互いに腹が立つばかり。

じゃあ、どうして欲しかったのか・・・「話をきちんと聞
いて、考えて欲しかった」たったそれだけでした。そういう時は、きっと、自分に振り向いて欲しいと思っていることが多いような気がします。

この映画の最後は、どのようになるのか、見てみたいです。世の中、いろいろなことがあるのだから、気が付いて欲しかったです。やっぱり、権力って、そんなにエライのかなって思いました。
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くまごろうさん (aruga)
2012-03-21 00:07:58
くまごろうさんの率直な言葉に心うたれます。

コメントを読ませていただいて、差はあるでしょうが、同じなんだって思いました。この映画は、人に共通するものを描いているのだと思います。
是非、映画観てみてください。そして、感想をお聞かせいただけると嬉しいです。
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同じく最近の自分 (まる)
2012-03-21 00:41:46
復讐したいくらいの気持ち・・・自分を認めてもらいたい気持ち・・・どれもみな持っている気持ちなのかなと感じました。
子どものことをもっと見つめてあげなきゃいけないと、思いながらも、仕事も捨てきれず、ここまでやってきました。

なので、ぜひ、この映画をみて、共感してみたいです。

先生は子育て最高潮の時代っていつでしたか?
大きくなったら(中学生と小学生がいます)もっと楽に仕事できるとおもっていたけど、かえって子どもの精神的なfollowが必要な年頃になってきて、ホントに仕事続けていていいのかなと悩みがつきません。
子どもの友人関係、学校関係のことって、自分の悩みより、深く、胸にささります。そして、ほんとに私は何をしてるんだろと無力感にとらわれます。子ども達は別段、何もいいはしませんが、たまに仕事早く終わって帰ると、それは嬉しそうで、かえって心が苦しくなるのです。

なので映画みて、色々考えてみます。
ごめんなさい。少し愚痴になってしまいました。
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まるさん (aruga)
2012-03-25 21:55:18
>先生は子育て最高潮の時代っていつでしたか?

最高潮というか、一番大変だったときということでいえば、10歳~13歳位だったように思います。小学校高学年から中学で慣れるまでくらいです。男の子だったからこの時期かもしれません。
多感で、他の人には変わってもらえない母親の役割があって、それに気づきながら、応えきれない自分や子供との距離感が図れなくなったりして、本当に未熟さを感じた時期でした。

きっと、まるさんが書いてくださっていることとほぼ同じような感覚です。

これは、母親になって、その過程で初めて気づくことですよね。

同感、共感・・・
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