緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

がんも育児も、労働の構造を変化させていく必要がありそうです

2016年05月08日 | 医療

人生には予定していないことが起こります。

仕事のギアを上げ、ココから大切という時に、
がんがわかった、
家族が病気になった、
計画通りではない妊娠・・
さまざまなことが起こりえます。

長期的な漠然とした夢を持ちながら、
実現すべきことやしたいことは短期的な目標としても、
それすら予定通りにはいかないことがあります。

最近読ませて頂いた患者さんのインタビュー記事で、
がんと診断されたとき、
仕事が順調だったこともあり、
キャリアが途絶えるのではないかという思いから、
治療を先延ばしにされていたことが書かれていました。

なるほどなあ・・
確かにそういう気持ち、ありえるなあ
と自分の過去を振り返りつつ、
そんな風に思いました。




また、それで、治療に入ったとしても
治療で休みをとったりしたときの
空白の時間を埋めてくれる人がいないことも
問題だと言う指摘もありました。

これは、がんに特化したことではなく、
育児や介護でもいえることでした。




健康で、時間を他に使う必要がせまっていない場合の
週40時間働けることを前提とした社会構造です。

もう少し、ワークシェアリングとか、
人材プールとか、
非常勤の常勤との差を少なくする工夫とか
職場の構造の変革が必要となっているような気がします。

例えば、ある大学病院の乳腺外科のグループは
7名で、うち3名が女性医師で妊娠・出産が
重なってしまい、4名で回しているというのです。

保育園を整備することは、母親を早く労働環境に戻す役割があります。
とはいえ、子どもは疾病に罹患しやすいため、職場の抜けたところを
どう補完するかという検討が必要となります。

産休・育休中であっても、定員1としてカウントされ、
給与も出ているため、定数上増員は不可となります。

国連の職員は、非常勤でも
ほぼ常勤と同じ勤務条件のため、
非常勤配置を増やすことで
対応ができるという話を聞いたことがありました。

 




外来化学療法や外来放射線治療で
職場を抜けることにも近似しているように思うのです。

例えば、外来化学療法なら、
毎週何曜日には有給をとって、
その後、副作用があれば
適宜、休暇をとってということになるでしょう。






がん就労支援というと、
ハローワークで求職紹介などを連想することがありますが、
もっと、違う機能整備が求められているようにも思います。

緩和ケアも、早期からの支援をうたうなら、
こうしたことにも、注意を払い、
勉強しなければいけないなあと思いました。


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2 コメント

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まさしく私も。。 (ぴょん)
2016-05-09 16:39:04
まさしく私も。。。パート仕事が始まったばかりの頃、両親が、身動きとれない時期が重なりました。

介護を手伝う時間が私の時間に組み込まなくてはなりませんでした。

おまけに、甥っ子の脳腫瘍も重なりました。

そして、緊急の1週間の私自身の入院も重なりました。(今思えば、その時すでに私は大腸がんだったと思われます。大腸カメラを撮影してはどうか?との、主治医からの提案も、両親のことがあるので、大丈夫です。と断って、半ば強引に退院しました。)

母を看取りの時を迎えつつ、父を私の家の近所の施設に入所させました。

その数ヶ月後、腹痛を覚え、気楽にかかりつけ医にかかったら、大腸がんが判明しました。

パート先では、正社員にしてもらえるかも?と言う時期も迎えておりました。


約1ヶ月の入院手術を経て、半年間の化学療法が私の生活に組み込まれました。


本当に。。。思いもしない事が起こり、正社員になる話も随分先に延びることになりましたし、介護要員としての私自身の役割も果たせなくなりました。

私の入院、治療についても、殆ど一人で頑張る状況へ。。。

あれもこれも。。。全部足りない状況になり、本当に。。。色々ありました。。
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ぴょんさん Re:まさしく私も。。 (aruga)
2016-05-10 00:41:19
そうでしたか。
簡単に仕事を休んだりできるものではないですよね。とはいえ、治療をしないというわけにもいかず、活字にすると、簡単な様にみえますか、大きな葛藤がおありだったに違いありません。よくぞ、お一人で、がんばられました!!
返信する

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