ご家族の方に看取られ
何と幸せなあきさんだったのだろうと
感無量でした。
ご家族も、外科病棟での日々から一変して
仕事を休むなどの工夫は必要でしたが
本当にかかわってやれてよかったと
口々におっしゃっていました。大学病院での孤独な時間。
それをバネにして
自宅で最期まで過ごすことを決心し
自分の生き様を納得しながら
歩みきったあきさんでした。
私達医療者は、症状を上手に緩和し
話しに耳を傾けましたが
人生を歩みきったのは
あきさん自身でした。
在宅療養支援診療所の制度が始まる
ずっと前の経験でした。
心拍の停止、呼吸の停止の時に
必ずしも医師が立合うというのではなく
ご家族に不安や焦燥感がなければ
ご家族の看取りに医師が支援するような
形をとることも少なくありませんでした。
ご家族に時計を見ていただいて
息を引き取られた時間を死亡の時間としたり
医師がそばにいても
ご家族が集まり亡くなったと感じられた時間を
死亡の時間とすることもありました。
それは
心肺が停止するという生物学的な死
ではなく、むしろ
いのちの終焉でした。
穏やかで平安の中の看取りでした。