緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

コーラスラインからのヒント(1)

2007年06月01日 | 医療

人生に最期は平等に必ず訪れる・・
ならば、病気が治るということに人生の目標をおいたとすると
死はすべて敗北になってしまう・・

では、何を目標にすればよいのか・・

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外科で研修をし
渡米後、遺伝子治療の研究室に在籍しつつ
並行して在宅緩和ケアの研修をしながら
このことを、ずっと考えていました。
帰国して、緩和ケア病棟にいるときも考え続けていました。

以前に書いたことがある膵臓がんの患者さん
唐突に
「何故、私にはがんが治ったという奇跡が起こらないのでしょうか」
という難しい質問をもらったとき
封印していた踊りのことが
急に意識の中に浮上してきました。
靭帯を切って15年ほど経ったときのことでした。
そして、コーラスラインの歌を思い出していました。

がんが治ったかどうか・・が最終目標ではなく
人生幸せだったと感じられることが大切・・

そんな話をしたとき、その患者さんは
幸せな自分を自ら感じ取られ
これでいいんですねと自分で答えを出され
微笑みながら最期を迎えられました。

まるで、迷いの中から
一人で立ちあがることができ、
微笑みながら歩んでいらっしゃったような感じでした。

よい人生でした・・
そうおっしゃった方々
心が自立しているような印象でした。

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3 コメント

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Unknown (たぬくまぞうさん)
2007-06-01 23:35:29
弁護士会副会長まで勤めた叔父さん、弁護士を辞めてからは俳句の会を主宰し、最後は癌で亡くなりました。
お医者さんからは体中が痛くて仕方ないだろうと言われましたが、弱音をはく事も無く’囀りを 浴びてこのまま 眠りたし’と言う句を残して、幸せな一生だったと言って静かに去っていきました。
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病気が治る (fiorentino)
2007-06-02 07:21:07
病気が治るというのはどんなことでしょう.完全に元の体に回復する?そんな病気がどれだけあるのでしょう.がん,狭心症,糖尿病,みんな元通りにはなりません.病気が治ると言うことは,社会生活ができる,家庭で生活ができると言うことだと思います.よく生きることが大切だと思います.
いろいろな患者さんの最期を見ていて,死に様は生き様,自分の毎日を振り返っています.
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コメントありがとうございます (aruga)
2007-06-02 19:46:54
たぬくまぞうさん
囀り(さえずり)を 浴びてこのまま 眠りたし
あびるという音に、何か強くさらされている様な、包み込まれるような印象を受けます。壮絶でありながら平和と尊厳に満ちた最期だったのでしょうか。人として羨ましいなあと思いました。

fiorentino先生
本当にそうですね。おっしゃるとおりだと思います。がんに限っては、治るの対側には死という構図ができている場合が多く、それがサポートを難しくしているようにも思えます。
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