後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔127〕『「本当のこと」を伝えない日本の新聞 』を読んで思考回路が繋がりました。

2017年02月02日 | 図書案内
  マーティン・ファクラー著『「本当のこと」を伝えない日本の新聞 』を読んだのは、二兎社の芝居「ザ・空気」のパンフレットに永井愛さんと著者の対談があったからです。この本は読んで確実に得する本でした。今日本に起きている様々な現象が私の頭の中で見事に繋がってきました。
  まずは本の概要を紹介したいのですが、アマゾンの〔内容紹介〕が実に的確です。内容をしっかり伝えてくれています。面倒くさがらずに目を通してください。

■『「本当のこと」を伝えない日本の新聞 』マーティン・ファクラー、双葉新書 2012/7
〔内容紹介〕
 3・11、そして福島第一原発事故を経て、日本人は新聞の限界を知った―。
 なぜ日本の新聞は国民が知りたい事実を伝えず、「権力者の代弁」ばかりをたれ流すような報道に終始するのか。
 日本取材歴12年の米国人ジャーナリストが明らかにする「国民総新聞不信」の真実!
 新聞は誰のためにあるのか
 この当たり前の問いに対し、はたして日本の新聞は胸を張って答えを出せるだろうか。
「社会の木鐸」と例えられ、権力を監視し、市民社会をより良きものにするために存在するはずの新聞。
 だが、福島第一原発事故をめぐる報道では、当局の発表をそのまま報じる「記者クラブメディア」の限界を国民の前に自ら晒すことになった。
 著者のマーティン・ファクラーはそんな「発表報道」に背を向け、東北の被災地を自分の足で回り、地元の人々や行政機関の窮状や奮闘を全世界に向けて発し続けた。単身乗り込んだ南相馬市役所では、原発事故により記者クラブにいるはずの記者はみなすでに退避していた。
 桜井勝延市長は、著者にこう訴えた。
「日本のジャーナリズムは全然駄目ですよ! 彼らはみんな逃げてしまった! 」(本書p42より)
 著者は12年間にわたり日本を取材し続けている。この国において、アウトサイダーと自覚するからこそ見えた、日本の新聞が抱える「ジャーナリズムの欠落」という根源的な問題。そのための議論を起こすために、あえて実体験に基づいた厳しい指摘をいくつもしている。同時に、志をもって働く日本人ジャーナリストたちと、3・11から立ち上がりつつある第二の故郷・日本にエールを送る。

【目次】
第1章 青い目の3・11取材記
第2章 情報寡占組織・記者クラブ
第3章 かくもおかしい新聞
第4章 ジャーナリストがいない国
第5章 日本の新聞 生き残りの道

  著者が真っ先に批判するのは、日本独特の「情報寡占組織・記者クラブ」のことです。「検察当局と一体化する記者クラブ」だからこそ、権力の発表を鵜呑みにする傾向が強く、しっかり調査して記事を書く「調査報道」でなく「発表ジャーナリズム」になっているというのです。アメリカではそうしたジャーナリズムのことを「アクセス・ジャーナリズム」と言っているようです。
  私が最も合点がいったのは次の件です。
「ジャーナリストとは、基本的に権力寄りであってはならない。権力の内側に仲間として加わるのではなく、権力と市民の間に立ちながら当局を監視し、不正を糺していく。」(130頁)
「私が12年間、日本で取材活動をするなかで感じたことは、権力を監視する立場にあるはずの新聞記者たちが、むしろ権力側と似た感覚をもっているということだ。」(150頁)

  しっかり権力に対峙するのが新聞やマスコミの使命ではないでしょうか。そのとおりだと拍手を送りたくなりました。
  しかしながら著者は、日本の新聞をすべて批判の対象にはしていません。朝日新聞の中山由美記者、「プロメテウスの罠」を立ち上げた依光隆明特別報道部長、加藤洋一編集委員、船橋洋一主筆(いずれも当時)などは評価しています。琉球新報や沖縄タイムス、高知新聞、神戸新聞、愛媛新聞、河北新報、東京新聞など地方紙には注目しているようです。
  そして、『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』は気になる本です。近いうちに手に入れようと思っています。

■『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』マーティン・ファクラー、双葉新書 2016/2
〔内容紹介〕
 2012年末に第二次安倍政権が誕生してから早や3年。その間、大きく変わったことが権力とメディアの関係だ。
 朝日新聞に代表される政権に批判的な大手メディアはなぜ軒並み"大人しく"なったのか。その背景には安倍政権の巧みなメディアコントロールと、ネットによる大転換期に対応できず組織防衛に走る既存メディアの腰砕けぶりがあった――。
 前ニューヨーク・タイムズ東京支局長の著者が明らかにする「世界から見たアベ・ジャパン」の真実。
「BOOK」データベースより
「今、日本はアメリカが辿った“暗い未来”へと突き進んでいる」右傾化する政権、監視国家化、ネトウヨ…権力からの「圧力」に屈し、なすべき批判を放棄する大手メディア。日本取材歴20年のニューヨーク・タイムズ前東京支局長が決意の告白!世界から見たABE JAPANの危うい正体。


  マスコミということで、最近はテレビが大いに気になっています。「発表ジャーナリズム」の典型がNHKです。会長が替わっても権力を支えるNHKには変わりありません。なぜそんなNHKに受信料を払う必要があるのでしょうか。受信は希望制にして、希望者だけ料金を払うようにしたいものです。受信を希望しない人には、NHKが見られなくなればいいのです。日本テレビやフジテレビはあまり好きではないのですが、受信料を取っているわけではないのでまだ我慢できます。見たくなければ見なければいいのですから。でもNHKはそうはいきませんよね。

  それにしても、最近の東京MXテレビ、月曜日夜の「ニュース女子」という番組、ひどいですね。正月2日の沖縄特集は最悪でした。沖縄ヘイト番組でした。高江や辺野古で基地反対闘争をしている市民運動に対しての敵意丸出しです。
  一番の問題点は、きちんとした取材に基づかない内容で、まさにバラエティー番組という趣でした。レポーターは井上和彦という人です。テレビで時々見かける6人の中年男性コメンテーターが、4人の若い女性におもしろおかしく社会問題を「教えてあげる」という感じのものでした。この司会が、長谷川幸洋という人で東京新聞論説副主幹というから驚きです。東京新聞を信頼、評価している私には大いなる違和を感じたのです。
  この番組、今ならユーチューブで視聴可能です。
  やはりユーチューブですが、「のりこえねっと」というサイトがあって、この番組について2時間ほどの徹底批判対談(安田陽一vs野間易通)が素晴らしかったです。事実に基づいた反証です。
  先日の「ニュース女子」は安倍政権に注文するという内容で放送していました。はっきりした批判にもなっていないのですが、左翼だけでなく保守も批判していますよ、ということをアリバイ的にやっておこうという趣旨が見え見えでした。