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月のしずく 文藝春秋 このアイテムの詳細を見る |
天気 降りそうで降らない
浅田次郎 著 : 月のしずく
を、読みました。
7編の物語が収められた短編集。
4つ目の物語、琉璃想(リュウリィシアン)は
戦後の混乱の中国から、子どもながらに一人で、日本に帰りつき
時が経って、今では会社を大きく成長させた、紅林が主人公。
社内報の取材と撮影のために訪れた北京の街は
紅林が8歳まで育った街というのに、全く記憶にない異国だった。
思い出せそうにない幼少期の思い出は、彼が生きてゆくために
心の奥底に封じ込めたのだと思いだし、思い出の扉は少しずつ
開かれてゆく。
生きてゆくために忘れてしまうって、どんなに辛いことだろう。
と、悲しくなってしまいそうですが
ラストシーンで、ずっと独りで戦ってきた紅林が
自分を褒めて、過去の孤独を手放してゆくシーンが、
心に残った作品でした。