天国はまだ遠く 瀬尾 まいこ 新潮社 このアイテムの詳細を見る |
天気 のち
千鶴は、北を目指しました。
日本海側の、さびれた町のもっともっと奥まった
誰も知らないような、切り離された場所。
そんなところが最適なような気がしていたのです。
仕事を辞めて、貯金を全部おろして、小さな手荷物一つで
夜になってたどり着いたのは、どことも繋がっていないと
感じる程、山の中の小さな集落。
そして、そこにあった民宿たむら。
彼女には、そこが大変適した場所のように思われました。
民宿で風呂に入り、今まで飲まずにとっておいた
睡眠薬を14粒飲み込むと、千鶴は永遠の眠りにつくために
冷たい布団に入りました。
結局、丸二日眠ったけど、死ななかった千鶴と
民宿たむらのオーナーである、田村という男の物語。
一度死んだ千鶴が体験する、桃源郷での生活は、
千鶴にいったい何を教えるのか?
主人公の千鶴って、なんだか私と似ていました。
「自分では敏感で繊細だと思っているけど、
はたから見たら、実は結構我儘で厚かましい。」
民宿のオーナー田村は、千鶴をこう表現しました。
もっと若い頃、私も千鶴のように人間関係のストレスで、
すぐにボロボロになるタイプでした。
あの頃の私は、きっとこんな人間だったのだろうな。
そんな事を思い出した一冊でした。