怒り(下) (中公文庫) | |
吉田 修一 | |
中央公論新社 |
吉田修一 著 : 怒り(下)を
再読した。
房総の漁協に現れた田代。
東京に現れた直人。
沖縄に現れた田中。
それぞれ、近しい人達とほのぼのと暮らしつつ
誰にも立ち入れない謎を持っている。
凶悪犯罪の犯人山神は、一体誰なのか?
再読してみると、全く救いのないラストでもなかった。
ただ、人の心の中は誰にもわからないという
当たり前の事が、よくわかった。
以前読んだときは、この本のテーマは
“信じる”なんじゃないか?という事を書いたけど
今回は、“信じる”というよりは“信じたい”なんじゃないか?と感じた。
見えないものを、100%信じるって簡単な事じゃない。
登場人物の洋平も、最愛の娘を信じきる事が出来ずに苦しんでいる。
愛して止まない娘でさえも信じる事は難しい。
でも、反面なんでもかんでも、ただ信じていればいいってもんでもない
純粋無垢に何もかもを信じて、裏切られた時のダメージは
考えただけで気が狂いそう。
そんな恐怖も感じつつ、それでも信じたい。
再び読み返して感じたのは、そんな思いだった。