![]() |
海峡の南 |
伊藤 たかみ | |
文藝春秋 |
天気 連休二日目もいい天気
伊藤たかみ 著 : 海峡の南
を、読みました。
祖父の危篤の知らせで、北海道やってきた洋は
滞在中の数日で、失踪した父と向き合う。
父の若き日の行い、故郷を後にした父の姿
幼い頃の父への憧れ、大きくなってからの父への思い。
夢と希望を詰め込んで、渡った海峡の南側で
父は何を手にして、何を失って、何をあきらめたのか?
何もかもを捨て、消えてしまった父を
大人になった主人公が、一人の男の立場から
冷静に見つめる物語。
親じゃなくともそうなんだろうけど、
生きるのでも、死ぬでもなく
ただいなくなる、失踪って周りの人への
心のダメージって、とても大きいと思う。
きちんとお別れすることも出来ないし、
理由を聞くことも出来ず、
ずっと心の中に、べたっと貼り付いて取れない
思いとして、居座り続けるような気がします。
そんな特殊な環境下で、北の国を飛び出して
ひたすら夢を追い続けた父を、
思い起こす主人公の視線が、とても冷静なのが
印象的でした。
ただひたすら何かに流されていった父と
同じように、自分も何かに流されて
流れてゆくという意識を持っていた気持ちが
ちょっとわかる気がした作品でした。