ほかならぬ人へ | |
白石一文 | |
祥伝社 |
白石一文 著 : ほかならぬ人へ
を、読みました。
「俺はきっとうまれそこなったんだ」と、主人公の宇津木明生は、
幼い頃から思っていた。
父は旧財閥家の二男として生まれ、学者の道に進んだが、
元麻布の大邸宅で、明生は大きくなった。
兄二人に比べ成績も振るわず、ぱっとしない存在だった明生は、
大らかで優しい家族達とも、小さなころからなじめなかった。
親の縁故を断り、自分で選んだ小さな会社に入社し、
親の反対を押し切って、下町生まれの年下の女性と結婚するが
うまくいかない結婚生活。絶縁中の家族に相談することもできず、
明生が唯一深刻な相談を出来るのは、上司の東海さんだった。
本物のセレブ家庭に育った、男のトラウマから始まる
本当の愛にめぐり合うまでの純愛物語。
142回直木賞受賞作
“日本人はそこら辺にいるお金持ちをセレブと呼ぶけど、間違ってる!”と、
オーストラリア人に指摘されたことがありますが、
この物語の主人公は、正真正銘のセレブでした。
親の反対を押し切った結婚も、壊れてしまったその結婚も、
自分を見守ってくれた、上司との心の交流も、
すべては、自分の感覚、思いを大切にして体験したこと。
そんな、人からのお仕着せではないものから、
人は、いろんなことを学んでゆくのだろうと思いました。
傷ついても、死にたいほど嫌になっても、自分で選んだ事ならば、
なんとか踏ん張ることができて、その体験は時とともに
美しく輝いたり、懐かしく思えたりするものなんじゃないか?
そんなこと考えた本でした。