Ministry of Natural Resources Canada(カナダ天然資源省)
「耐寒性があると言ってもねえ」なんて題なのに、なんで色つきの地図が出てくるのか?? と疑問の方、申し訳ございません、しばらくこの地図とお付き合いください。
上の地図は、カナダの「植物耐寒域区分」です。(著作権はカナダ天然資源省に属するのですが、あまりにも多くの人や団体が無断転載をしているので、わたしもそれに倣うことにします。ただし、わたしは、出典を明記します。)
アメリカやカナダやメキシコでは、「植物耐寒域区分(Plant Hardiness Zone)」の番号を、植物生育条件の目安としてよく使います。
植物屋さんで植物を買えば、ラベルに「耐寒区分」の番号が大抵ついています。この番号がついていなければ、一年草であるか、「一年草」として扱えと言うことか、あるいは、そんなことも気にかけない生産者の安物植物(こういうのは、うまく生育しない)です。
今までわたしが書いてきたブログ記事では、説明の簡略化のために、「植物耐寒域区分(Plant Hardiness Zone)」はアメリカ合衆国農務省(USDA)が出したものだ、としてきました。
しかし、カナダでは、現在、アメリカ合衆国農務省(USDA)の区分を「卒業」した区分が使われます。
アメリカの区分は大変単純で、「平均的な冬の最低気温」に基づいて、華氏10°ずつ数字で、また、「a」「b」でその華氏10°を半分の華氏5°に、地域を区切っています。
一方、カナダの区分は、
・年で一番寒い月の、日毎の最低気温を平均したもの
・年で一番暖かい月の、日毎の最高気温を平均したもの
・霜の降りていない(=気温が摂氏0°以上にとどまる)日数の平均
・6月から11月までの降雨量
・「冬因子」と呼ばれる、1月の気温と降雨・降雪量から計算したもの
・最も深い積雪深度
・過去30年間の間の最速の風速
の7つの変項を計算に入れて割り出されます。
The Differences Between US and Canadian
Plant Hardiness Zones(英文+地図)
上の地図は、このカナダ独自の区分に基づいたカナダの「植物耐寒域区分」。地図の右端に色分けして、上から「0a」「0b」「1a」・・・「8a」「8b」「9a」と区分が並んでいます。小さい数字が寒いところ、「a」と「b」では、「a」の方が寒いところです。
次の地図は、上の地図からブリティッシュ・コロンビア州を取り出したものです。(これも多くのみなさまに倣い、無断転載します。ただし、わたしは、出典は記します。)
Ministry of Natural Resources Canada(カナダ天然資源省)
カナダで一番暖かいのは、バンクーバーを含む、赤く色分けされている南部西海岸です(北部の方で、突如として破線で陸地が切れているところは、海岸線ではなく、アメリカ領のアラスカとの国境です)。内陸部にも、部分的に暖かいところがあります。
ここ数年で、バンクーバーの耐寒域区分は、「7b」から「8b」に変わりました。これが何を意味するか、というと、耐寒温度が、華氏10°上がって、今まで寒すぎて育てられなかった植物が育てられるはずだ、ということです。
例えば、キンモクセイ(Osmanthus fragrans var. aurantiacus)なんかが育てられるんじゃないか・・・というようなこと。
キンモクセイ
では、具体的に、「7b」「8b」だと、耐寒気温は、何度(摂氏)なのか。
「7b」-15.0°〜 -12.2°
「8a」-12.2°〜 9.4°
「8b」-9.4°〜 -6.7°
なんで、こんなヘンテコリンな気温の区切り方? それは、元々がアメリカの華氏に基づいているからです。カナダは摂氏。カナダが独自のことをするには、アメリカ発祥のものには「長い物には巻かれろ」式でやらないとできない・・・。それと、「植物耐寒域区分」には、アメリカとカナダである程度の相互互換性を持たせておかなくては、意味が分からなくなる。
でもねえ、この耐寒域区分、スパッと行くものでもない。
なんと言っても、
・年で一番寒い月の、日毎の最低気温を平均したもの
が重要項目なので、
・数日極寒に襲われる
という場合が計算に入っていない。
2021.12.08撮影
うちにはサザンカ(Camellia sasanqua)があります。サザンカの耐寒域区分は、「7」「8」「9」。ですから、うちの庭では、サザンカはちゃんと咲くはず。
Camellia sasanqua(英文+画像)
去年の12月初めには、うちのサザンカは、上の画像のようにツボミをふくらませていました。
ところが、それから3週間ほど後に、記録的な寒波(-16°)が襲い、積雪が何日も続き、このサザンカも含めて植物は雪に埋もれたまま。
わたしは考えたんですね。雪を払うべきか、払わざるべきか。雪を払えば、植物が気温にさらされて「体温」が下がるのではないか、払わなければ、植物の「体温」は0°にとどまるのではないか、、、それなら、払わないほうがマシ、と払わない方を選びました。
上の画像のツボミは、雪に埋もれる前に咲いたんです。でも、まだふくらんでいなかったサザンカのツボミは、みんな凍って、そして、気温が上がってきてから、「解凍」して、ぐじゃぐじゃ、、、泣、泣、泣〜〜
つまり、耐寒性があると言ってもねえ、ということになるのです。
以下の記事に、バンクーバーの記録的最低気温の表があります。よろしければ、ご覧になってください。
Vancouver – Lowest Temperature for Each Year(英文+表)
1990年以降の年毎の、-11°以下の最低気温を拾っておきます。
1990.12.29 (-14)
1992.12.31 (-11)
1996.12.26 (-13)
2004.01.04 (-12)
2006.11.28 (-12)
2008.12.20 (-15)
2021.12.27 (-16)
こんなに低い気温が数日続くことがあるんです、雪がちらほらし出したら、さっさと職場放棄して家に帰ってしまう人々の住むバンクーバーで。
バンクーバーは、暖かいと言えば暖かい、寒いと言えば寒い、というようなところであります。わたしは、寒波の中、水道管が凍って水が出ない、というのも経験したことがあります。涙
日本の寒い地方にお住まいのみなさま、取るに足らない愚痴を聞かせて、申し訳ございませんでした。
バンクーバーは、実は、冬の雪よりも、冬の長雨の方が有名です。以下は、長雨で花びらが傷んでしまったサザンカの花(特に、右側2枚)。このバンクーバーの長雨については、いずれの時にか書きます。
2020.12.24撮影
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