傘忘れ

それを、どんなに気に入っていたかは
失った途端に気づく。

実家にスーツケースを取りに行った帰りの電車はそこそこ混んでいた。
ドア付近の手すりに傘をかけて立っていた。

荷物が傘だけなら良かったのだが、
スーツケースの世話もしながらだったので、降りるときにはまんまと傘を忘れた。

ああ！
やってしまいました。

あの傘。
伊豆の旅行で悩んで買った。
まだ使い初めて半年。
杖の部分が木材で、明るいオレンジがかった茶色。
色は落ち着いた緑。
全体にミュシャのキレイなイラストがプリントされている。
その上、軽い。
お値段は3000円。

その全ての要素が、後悔を引き寄せている。

雨の日でも、光がイラストを透かせて見せて、心地よい。

あ～～。(涙)

直ぐに駅の事務室に問い合わせた。
とりあえず、終点で忘れ物が回収されて、翌日の夜8:00まで預かっているそうだ。

電話をすると、該当する傘があるとのこと。

その日の内に取りに行きました。
駅の事務室のロッカーから数時間ぶりに手に戻ってきた。

良かった～！

傘を取り出したロッカーには、張り紙が貼ってあった。

「虫かごにカタツムリがいます。
そっと空けてね。」

こんなお忘れ物もあるんだな。
駅の人の優しさを感じました。