都営浅草線は相互乗り入れ先が多く、行先も種別も多種多様で目が回ってしまう。
泉岳寺駅で京急線分岐すると、すっかり本来の地下鉄としての落ち着きを取り戻したような感じで落ち着いた雰囲気になる。
終着駅まで、五反田・戸越・中延と活気のある雑多な街の下を通るのはさすが都営地下鉄である。
国道1号線に沿って西へ進む浅草線は、他線の乗換駅でもない西馬込駅でなくぷつりと切れてしまう。
丸ノ内線の方南町駅や、都営三田線の西高島平駅のように終着駅らしからぬ単調な駅はわりと好きではある。
この西馬込駅も中心となる大きな改札のない構内や、ロータリーのない単なる地下鉄駅だ。
地上に出ると、目の前が第二京浜で、自動車がびゅんびゅん走っている。
出口から第二京浜を川崎方面に徒歩5分程度。
日蓮終焉の地としても知られる、池上本門寺に程近い場所に馬込車両検修場がある。
ここは都営地下鉄浅草線の検車や修車を行う大規模な車両基地である。
広大な基地を横断する歩行者用の跨線橋が架かっていて、西馬込駅から池上本門寺への最短ルートともなるので利用者もほどほどにいる。
100mほどの歩道橋の下はすべて線路。
学校帰りの子供は何の興味も示さずに橋を渡っていく。
線路があるだけ架線もあるため、全体を見渡しづらいが敷地は広大である。
西馬込方面に向かって広がる構造になっているため、跨線橋から川崎方面を見ても車両は少ない。
唯一停車しているのがE5000系。
日本の地下鉄では唯一の電気機関車であり、この馬込車両検修場に都営大江戸線の車両を回送するために2005年に導入された。
都営大江戸線はリニアモーター駆動なので、浅草線内を自走することができないためにこの電気機関車が牽引して運んでいるという。
ちなみに浅草線大門駅と大江戸線汐留駅間に業務用の連絡船が結ばれており、両線間を行き来している。
そんな裏方の電気機関車はさすがに地下鉄内で見ることはできないから、かなりのレアキャラである。
跨線橋から西馬込側を望めば留置線と車両工場がある。
いわば検修場の中枢部。
もっとも第二京浜に近い場所には西馬込駅と検修場を繋ぐ引き込み線がある。
西馬込駅から先の留置線から分岐してきたこの引き込み線は、一旦川崎側まで進んでから折り返して検修場内に入る。
薄暗い工場の扉は開いており、浅草線5300系が顔を出している。
浅草線は多くの鉄道会社相互直通運転を行っているが、自社車両はこの5300系のみである。
先述したように、電気機関車に連れられた都営大江戸線の車両もこの工場で検査を受ける。
外の留置線にも5300系。
留置線には相互乗り入れ先の車両が留置されることもあるらしいが、見る限り5300系のみである。
それにしても、この車両の前面は地下鉄らしからぬ重厚さだと思う。
同じ顔をしていても、スカートがあったりなかったりと若干の違いが見て取れる。
なんだか間違い探しのようでもある。
車両の種類は少ないが、検修場全体を俯瞰できるのは素敵だ。
地下鉄は狭い地下空間を走っていることもあり、ゆっくり眺めることはないからなおさらである。
久々の空気を吸って、のびのびとした車両たちに会うことができる。