映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

6/17(土) Hulu 独占配信 福士蒼汰 さん出演 ドラマ THE HEAD Season2! 考察ヒントイラスト

2023-06-23 | 映画イラスト
6/17(土) Hulu 独占配信
福士蒼汰 さん出演 ドラマ
THE HEAD Season2!








毎週土曜日新エピソード追加(全6話) 考察ヒントイラスト担当しました! チャーリーのペットのブレンダちゃんが教えてくれますよ。
世界を救う大発見!英雄に必ずなれるのに、〝あんなこと〟が起きるなんて…てゆう。


タイムループ映画『リバー、流れないでよ』 ネタバレなし 快なスタートダッシュ

2023-06-15 | 映画イラスト

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
上映日:2023年06月23日
監督 山口淳太
脚本 上田誠
主題歌/挿入歌 くるり
出演者 藤谷理子 鳥越裕貴 本上まなみ 近藤芳正 早織(小出早織)永野宗典 角田貴志 酒井善史 諏訪雅 石田剛太 中川晴樹 土佐和成 久保史緒里



四コマ映画『リバー、流れないでよ』そんなに難しい映画じゃない



イムループもの初(?)の爽快なスタートダッシュ

タイムループものの導入ってほぼだるいんですが、初じゃないかなこのスタートダッシュ!
観客はタイムループ映画だと分かってるのに、登場人物がタイムループに気づくまで同じシーンを何回も繰り返されると「いい加減気づけよ」と、だるい。
しかしこの『リバー、流れないでよ』の登場人物たちの理解の早いこと早いこと。

旅館の従業員たちなのでお客さんを安心させるためにも自分のことはさておき、とりあえず客のため全体のためにサクサク動くのが痛快。
そのおかげで大量の登場人物の紹介もサクサク完了するし、そうすればサッサと各々の人間ドラマをスタートできる。

***

2分は長回しで実際に2分間らしい

同じ1日をタイムループする映画は多いし、1週間を繰り返す映画もあるし、
映画じゃないけどスティーヴン・キングの小説『11/22/63』は"5年"を繰り返す。

しかしこの『リバー、流れないでよ』は、2分間。
しかもその2分は長回しで実際に2分間らしい。
2分の繰り返しだと閉じ込められている感が強まるんだけど、登場人物たちが本当に勝手なので物語が自由に展開していって楽しい。
コメディからラブ、スリル、ホラーまでジャンルを超えてどんどん多様に展開していく。

***

大雪

そもそもロケでタイムループものって難しいはずなんですよね、天気が同じじゃなきゃいけないので。
だから室内のシーンが多かったりしますね。

この『リバー、流れないでよ』のロケ地は冬の京都の貴船。
撮影期間中に10年に一度の大寒波で大雪が降ったとのこと。

天気が同じどころの騒ぎじゃない。
2分繰り返してるのに次の2分では突然の積雪になったりしちゃうわけ。。
さてそれをどうやって乗り越えたのでしょうかというミステリーです。。

「なるほど!その手があったね」と納得するし、どう考えてもこの大雪は300%大成功!

さすがにいくら物語や人物が自由に展開していっても、景色が同じだとちょっとした"飽き"が湧いてきたはずです。
でも、笑っちゃうくらい雪降ってたり、全然カラッカラだったりするので景色が豊かだし、コメディとしてもスリラーとしてもラブとしても「雪」ってのはエモいですよね。

ワイパーが退けられる雪の量の限界をはるかに越えていたあの車のシーン、笑いました。。



コ口ナ禍、コ口ナ開け(?)

ヨーロッパ企画の長編映画第1作目は『ドロステのはてで僕ら』( 2020)。大好き❤️。

撮影期間はコ口ナ寸前で、公開がちょうどコ口ナ禍。
公開時期もちょっと延期に。

「未来が見える」っていう設定なのに登場人物たちは全然コ口ナを予測できてなくて、"時の牢獄"に閉じ込められる話でした。

長編映画2作目の今作『リバー、流れないでよ』はちょうどコ口ナが開けた(?)時期での公開。

2020年から2023年はちょうどコ口ナ禍だったんですね。

ネタバレになっちゃうから言えないんですが、ほんとちょうどこのコ口ナ開け(?)にぴったりの映画なんですよ。

「そろそろさすがにコ口ナが開けて自由になるっぽいぞ」って空気が流れてきた時のあの感覚。。


コ口ナ禍という実際に我々が閉じ込められた経験を、映画では「時間に閉じ込められた」人物たちの奮闘や愛しい勝手さを観て感動してしまうのです。


でもくどくない

これも強調しとこ。

特に洋画のタイムループものに多いのかな、
クズ人間がタイムループしちゃってクズさを反省して真人間に戻ったらタイムループも解かれた、みたいな映画が多い。

なんか終盤が道徳の授業みたいになっちゃって、そこでシラける。

『リバー』や『ドロステ』にはそういう説教感がない。
けして道徳観がないわけじゃないんですけど、、「人とはこうあるべき!」みたいな押し付けがない。
ネチネチとした正しさの押し付けがない。

そういうとこが好き。



<PR> ドラマ「THE HEAD」Season2! キャラ紹介イラスト 【チャーリー】

2023-06-10 | 映画イラスト
  巨大貨物船で勃発した極限心理サバイバル
 6/17(土) Hulu 独占配信
の紹介イラストを担当させていただきます!


まずはキャラ紹介イラスト!
配信まで続々多様な イラスト がアップされます。


キャラ紹介イラスト その6
 「おれはバカじゃない…」
Character File. 006 チャーリー

#THEHEADあなたは誰を信じますか











<PR> ドラマ「THE HEAD」Season2! キャラ紹介イラスト 【オスカル】

2023-06-10 | 映画イラスト
  巨大貨物船で勃発した極限心理サバイバル
 6/17(土) Hulu 独占配信
の紹介イラストを担当させていただきます!


まずはキャラ紹介イラスト!
配信まで続々多様な イラスト がアップされます。


キャラ紹介イラスト その5 「お前は一体何をした!」
Character File. 005 オスカル

#THEHEADあなたは誰を信じますか












韓国映画『小説家の映画』新しいフェーズの女性映画誕生!

2023-05-25 | 映画イラスト
上映日:2023年06月30日製作国:韓国上映時間:92分
監督 ホン・サンス
脚本 ホン・サンス
出演者 イ・ヘヨン キム・ミニ ソ・ヨンファ パク・ミソ クォン・ヘヒョ チョ・ユニ ハ・ソングク キ・ジュボン


****

『小説家の映画』四コマ映画




ベルリン国際映画祭 2022年72回 銀熊賞 審査員グランプリ(審査員特別賞)


***


嘘や気遣いを含んだ会話が積み重なって、
しかも相手が変わってって
人数も変わってって。


音声言語ではない手話までもが登場して、
その都度主人公の小説家の人物像がくっきりと見えてくる。


スランプに陥って執筆から離れていた小説家が
「あ、この人だ」「あ、これだ」「今だ」と気づいた瞬間が愛おしい。


それまで小説家として触覚ビンビンで生きてきたはずだし
スランプだからって何もしていなかったわけではなく、
一応網は張っていたはずだけど
「何も来ない」「何も引っかからない」「何も起きない」とに感じる日々だったかもしれない。


そこにキム・ミニが現れて
「これを掴まなきゃ、私」「私にもまだ掴みたいものがあったんだ」と再確認できた喜びもあったでしょう。


***


キム・ミニ演じるギルスも人気だったけど今は出演作が途絶えている女優。


小説家も女優もどちらもちょっとした踊り場にいる状態で出会っている。


休んでいるのもいいし、次に何かするのでもいい、華々しいかどうかなんてどうでもいい。


妙齢に差し掛かった女性同士が
「この人とだったらもう一回私楽しいかも」と思って繋がれるのがとてもうらやましい。


**


これのおじさんver.も観てみたい。


金とか趣味とか
むしろ友情とかでもない連帯。


**


もうホン・サンス映画はお手上げ。
なんでこんなに良いのかわかんない。
なんでサッとこんな良い映画作れるのかわかんない。


「実はサッとじゃなくて十分な準備と話し合いと十分な期間で撮ってます」とかじゃなくて、本当にサッとだからね。。


そんでベルリンだカンヌだで映画賞獲っちゃうんでしょ。。
もう異次元映画なんよね。。



映画『フリークスアウト』だっちゃ!強烈な反戦エンタメヒーローイタリア映画

2023-04-14 | 映画イラスト
フリークスアウト(2021年製作の映画)Freaks Out
上映日:2023年05月12日
製作国:イタリア ベルギー
上映時間:141分
監督 ガブリエーレ・マイネッティ
脚本 二コラ・グアッリャノーネ ガブリエーレ・マイネッティ
出演者 フランツ・ロゴフスキ エリック・ゴドン クラウディオ・サンタマリア アンナ・テンタ エミリオ・デ・マルキ







****


■大人気イタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のガブリエーレ・マイネッティ監督の新作。


『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は2015年ですから満を持してた新作。そして怪作。名作。


前作同様こちらもスーパーヒーローもの。
超人パワーを持った主人公たちの苦悩と戦いの物語。


主役はサーカスの団長のイスラエルと団員たち。
●光と電気を操る少女マティルデ
●アルビノの虫使いチェンチオ
●多毛症の怪力男フルヴィオ
●磁石人間の道化師マリオ


そして敵はナチス!
何してもいい相手。なんの擁護もできない悪。


で、さらにナチスに対抗するレジスタンスたちも加わって話はややこしいことに。


****


■さらに複雑な敵の能力


あんまり書くとネタバレになっちゃんですけど、敵(フランツ)が「ジョジョの奇妙な冒険」っぽいと思いました。


危機的状況になるほどに、知られざる能力が開花してくるんですよ。


ジョジョのアイツなんですよ。スマホなんですよ。


****


■強力な反戦映画


まっすぐな反戦映画であることが嬉しい頼もしい大好き。


「反戦」って言うと「自分勝手」「いい人だと思われたい」みたいに言われる世の中になってきて、本当になんて最悪なんだろうといつまで最悪を更新し続けるんだろうと思っているところに、このエンタメヒーロー映画での力強い反戦メッセージはありがたい。


****


■エンドロールですよ


エンドロールがまた感動。
第二次大戦が終わった後の人間の歴史がイラストで紹介されていくんですが、あれも描いてくれてる、これも描いてくれてると感動してしまうのです。


あのヒーローも出てくるし。




四コマ映画『フリークスアウト』
https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2941




映画『EO イーオー』 第95回アカデミー賞国際長編映画賞候補作 ロバが主役

2023-04-14 | 映画イラスト

EO イーオー(2022年製作の映画)EO
上映日:2023年05月05日
製作国:ポーランド イタリア
上映時間:88分
監督 イエジー・スコリモフスキ
脚本 エヴァ・ピャスコフスカ イエジー・スコリモフスキ
出演者 サンドラ・ドルジマルスカ  イザベル・ユペール  ロレンツォ・ズルゾロ  マテウシュ・コシチュキェヴィチサヴェリオ・ファッブリ







第95回アカデミー賞国際長編映画賞候補作

『異端の鳥』っぽい作りだと思いました。
戦時下で少年が安住の地を求めて各地を転々としながら大人に保護されては逃げて保護されては逃げて、、という『異端の鳥』。


『EO イーオー』はロバのEOちゃん(オス?)が人間の都合でどっかへ連れて行かれたりEOちゃんの自由意志で逃げたりして各地を転々しながら、
天国のような地獄のような人間たちの様子を映し出していきます。
ロバ視点ではありますけど登場人物が割と多いし、
各地で行われるイベントがなかなかインパクトがあるのでグッと惹きつけられたまま最後まで観れます。


動物愛護だけではない

冒頭かサンドラとの蜜月を引き裂くのは動物愛護団体ですからね、動物愛護だけを言いたい映画ではないでしょう。
人間の性差別の描写も多いし、人間の残酷さや愚かさや冷酷さもあるし、逆に人間の温かさ優しさもある。
単に各地で嫌な目に遭うだけではないので、次の土地ではEOちゃんが何に遭遇するのかがホントにハラハラします。。


映像と劇伴が素晴らしい

主役はしゃべらないわけです、ロバだから。さすがに。
なので全体的にはセリフが少ない。
そうすると映像と音楽の責任が重くなるわけです。
てことで映像は素晴らしく刺激的。
劇伴は特に素晴らしいですね。EOちゃんの心情に寄り添っているような、突き放しているような、天空から客観視しているような、複雑で美しい音楽。
映画体験として素晴らしいものだと思います。

ユペール先生

イザベル・ユペール先生が突如どアップで登場します。
ちょうどコーラとか飲んでる時だったら吹き出すと思うので注意してくださいね。
顔力。存在感がすごいのよ。
EOちゃんに負けない存在感。命同士の対決(戦ってないけどね全然)でユペール先生の勝利なんですよ。
僕は自宅のPC画面で観ちゃったんですけど、これは映画館で大音量大スクリーンで観ることで価値が何倍にもなる映画だと思います。


恐竜に母性あるの?の巻 『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997) ネタバレありマンガ

2022-12-03 | 映画イラスト
ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク 上映日:1997年07月12日 / 製作国:アメリカ / 上映時間:129分
監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 デヴィッド・コープ
出演者 ジェフ・ゴールドブラム リチャード・アッテンボロー ジュリアン・ムーア ピート・ポスルスウェイト ヴィンス・ヴォーン




****


『映画大解剖 ベストシリーズ 映画大解剖シリーズ Vol.6 パニック映画大解剖』にて掲載されています。


恐竜に母性あるの?の巻 『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997) ネタバレありマンガ

2022-12-03 | 映画イラスト
ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク 上映日:1997年07月12日 / 製作国:アメリカ / 上映時間:129分
監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 デヴィッド・コープ
出演者 ジェフ・ゴールドブラム リチャード・アッテンボロー ジュリアン・ムーア ピート・ポスルスウェイト ヴィンス・ヴォーン




映画『ある男』 一筋縄でスラッと観れる映画なわけないよね

2022-11-19 | 映画イラスト


ある男(2022年製作の映画)上映日:2022年11月18日製作国:日本
監督 石川慶
脚本 向井康介 
原作 平野啓一郎
出演者 妻夫木聡 安藤サクラ 窪田正孝 清野菜名 眞島秀和 小籔千豊 仲野太賀(太賀) 真木よう子 柄本明 坂元愛登



四コマ映画『ある男』【安藤サクラ窪田正孝編】







四コマ映画『ある男』【妻夫木聡編】




****
「コメディ的な要素をあえて入れた」

監督曰く「コメディ的な要素をあえて入れた」とのことなので、
予告編でも流れている遺影の前での「ダイスケじゃないです」「ダイスケさんですって」「全然違う」「数年でそんなんに変わりました?」っていうやりとりは突然のショートコント。
笑っていいシーンだし実際笑いました。(前後が重いので、、笑いにくいですが。。)
「勝利勝利!になっちゃわね?」とかも地味にツボに入る笑いだし、
あと個人的には絵を見せてきた窪田正孝に安藤サクラが「絵お好きなんですね」っていうのも、、褒め言葉としてはギリっていうか、、むしろちょいディスってるんじゃねえかっていう。。
***

石川慶監督らしい画面。

「縦のラインを強調して閉じ込められてる感を出した」とのことで、木とか柱とかとにかく画面の中に強烈な縦線が何本も走っていて、人物が区切られている。
雨もそうですね。縦に襲ってくる。
縦って怖い!って思う。
**

誰も閉じ込められない

人間はその縦線に閉じ込められそうになるんだけど、心配無用。
なぜですか。
だって安藤サクラ窪田正孝妻夫木聡真木よう子仲野大賀たちですよ。誰も閉じ込められない。
自由にのびやかに映画の中で暴れ回ってくれるので見ていて痛快。
特に白眉は妻夫木聡。
この人はどこまで大俳優になるんでしょうか。とっっくに世界レベルなんですけどね。
今作では、まずは登場シーンですよね。マーベルヒーローなのかと。あの飛行機は妻夫木聡が飛ばしています。
中盤からの登場なのに「はい、俺が主役です」感。
しかも正体がわかってくると「なるほど!」という立ち姿!

さらに彼は、相手によって顔を変えてくるんですよ。複雑な内面を持ちつつもさらに表面的にも多面的。
甘く爽やかなルックスに見惚れがちだけど、とんでもないことやってんのよブッキー。
***

人物のバランス

地獄構図の中に、コメディ入れてくる余裕もそうなんだけど、
人物のバランスもいいですね。
人間ドラマミステリーなので(?)人数が多い。
だけど割と強弱がハッキリしているので見やすい。
ある重要な人物も重要なのにセリフ一個もないですからね。。
この思い切りがすごい。
あの俳優に対する熱い信頼があるこそだと思うんです。
それは眞島秀和さんについてもそう。
眞島秀和の役は嫌な奴だけど嘘はつかなそうな人なんですよ。
あの人が嘘言ってるかもしれない、となると話が死ぬほど複雑になっちゃう。。
あの人は嘘ついてない、って思わせたのは眞島秀和の存在のおかげ。
***

ヨーロッパあたりのそんなに知らない国の映画だと思ったら

結構複雑な話だし、ミステリーとして「本当は誰なの?」ってのを重点的に追っちゃうと、「ん?ん?」ってなると思う。
僕も終盤「で、誰なの?」ってなりそうになった。。
ミステリーではなく人間ドラマ、夫婦の愛の物語、として見てほしいとのことですが、まぁ難しいわな。。
物語の推進力はあくまでもミステリーだし、宣伝もめちゃミステリーなので。
よくある「邦画感動ミステリー」と同じカテゴリーだと思っちゃう観客が多いのも致し方ないけど、
原作は平野啓一郎で監督は石川慶で主演は妻夫木聡、そして安藤サクラもいる、ってことを思うと、一筋縄でスラッと観れる映画なわけないよね、と覚悟できてた人が正解かな。
ヨーロッパあたりのそんなに知らない国の映画だと思ったらさらに良い味わいになるかも。

***

あ、でもこの話ってめちゃくちゃ日本的なんですよね。
ヨーロッパあたりのいろんな国と地続きで繋がってる国では、ここまで拗れた問題にはなってないのではないでしょうか。

***

さてラストネタバレは以下に。

 

(誰が誰だったとかは書きませんけど)



香織の不倫がバレますが、あれも「仕事も家庭も完璧な女性」として頑張っているいつもの自分とは違う「自由を謳歌する自分」というある意味別の人格を手に入れたことで逆に家庭でも夫ともうまくいく、ということかなと思いました。

ラストのバーのシーンは、城戸は別人格になってみたっていうことですよね?
知らないし2度と会わない男(矢柴俊博さん)と「谷口大祐」になりきって話をしてみた、だけかと。

大きなどんでん返し(実は城戸がダイスケだった!とか←めちゃくちゃだが。。)ってわけじゃない、、ですよね。。
見落とした箇所があるのかもとか思ったけど。。

妻の不倫のこともあるし、たまに自分じゃない人間になりながら真っ当な自分の人生を遂行していこうとしているのかなと僕は感じました。


素晴らしいアクション家族愛コメディ 映画『ステラ SEOUL MISSION』

2022-11-06 | 映画イラスト
ステラ SEOUL MISSION(2022年製作の映画)
스텔라/Stellar: A Magical Ride上映日:2022年11月11日製作国:韓国上映時間:98分
監督 クォン・スギョン
脚本 ペ・セヨン
出演者 ソン・ホジュン イ・ギュヒョン ホ・ソンテ


目次

  1. 四コマ映画『ステラ SEOUL MISSION』
  2. 『エクストリーム・ジョブ』とか『ノンストップ』とかもちろん『EXIT』とか


四コマ映画『ステラ SEOUL MISSION』






『エクストリーム・ジョブ』とか『ノンストップ』とかもちろん『EXIT』とか
10年くらい前までの韓国エンタメ映画は「全部入れないと気が済まない病」にかかっていて、感動サスペンス恋愛兄弟愛親子愛友情ホラーコメディを一本の映画に全部入れちゃって、結果だるく長い………ってことが多かったと思います。

2016年『LUCK-KEY/ラッキー』あたりから整理してバランス取れるようになってきて、コメディでこのレベルの映画作っちゃうの?韓国は!!っていうステージに上がってきちゃって、
その後は『エクストリーム・ジョブ』とか『ノンストップ』とかもちろん『EXIT』とか。
コメディ映画を安心して観れるって実際なかなかないですよね。滑ったら地獄だし。わざわざ映画館行ってつまんないコメディ見るほどアホくさいことないですもんね。。

***

という流れでの今作『ステラ SEOUL MISSION』。

作りもうまいしキャラもうまいしアクションもスカしもうまい。
で今回はステラという韓国では郷愁を誘う昔流行った大衆車であるポンコツ車が、ひとつのキャラクターとして映画の中で大きな存在感を出してきます。
可愛いし泣かせる。車がよ。

***

あと笑ったのが、「スーパーカーを取り戻せ!」というミッションなんですけど、もうねマクガフィン度がすごいんですよ。。開き直っている。
見せたいのは息子と父(父の車ステラ)の物語であって、ゴールなので、スーパーカーなんてホントはどうでもいいってことを全部理解して開き直ってマクガフィン臭たっぷりに扱ってる。

「実はこのスーパーカーには意味があって…」などをネチネチやったりしない。。
このバランスがほんとすごいと思う。



映画『ボクらのホームパーティー』 新しいゲイ映画の女性キャラ 

2022-11-06 | 映画イラスト
ボクらのホームパーティー(2022年製作の映画)
上映日:2022年11月19日製作国:日本上映時間:80分
監督 川野邉修一
脚本 川野邉修一
出演者 橋詰高志 景山慶一 松本亮 横路博 卯ノ原圭吾 窪田翔 井之浦亮介


目次

  1. 四コマ映画『ボクらのホームパーティー』 
  2. 古典ゲイ映画『真夜中のパーティー』(1970)と。
  3. 密室コメディではない
  4. 敵でも味方でもない〝女性〟
  5. 23歳〜38歳のゲイ
  6. 『愛はなんだ』の片岡礼子のセリフ
  7. 真剣になるほど可笑しい
  8. ラストも良い

四コマ映画『ボクらのホームパーティー』 





古典ゲイ映画『真夜中のパーティー』(1970)と。
ゲイ映画で『ボクらのホームパーティー』という題名だと、1970年の『真夜中のパーティー』を連想させます。

1970年の『真夜中のパーティー』は寂しい終わり方だったのが、2020年のリメイク版では(大筋は変わらないけど)ちょっと開かれたエンディングでした。
今作『ボクらのホームパーティー』は、日本に住むリアルなゲイを描いているし、もちろんアップデートされているし、狭い部屋に閉じ込められた映画ではなくちゃんと外の世界が描かれている映画だと感じました。


密室コメディではない

観る前は「部屋の中だけのワンチシュエーションブラックコメディ」なのかなと思って、それだと正直キツイな……とフアンに思ってました。。
『真夜中のパーティー』はあんまり事前のシーンがないのでいきなり知らない人たちがパーティーし始めて、しかもいきなりキャッキャキャッキャ騒ぐから結構前半は辛いのです。。
今作では、ホームパーティーが始まるまでにそれぞれのキャラが外の世界で生きている様子が描かれる時間がちゃんとあったので観やすかったです。
敵でも味方でもない〝女性〟
しかも、女性キャラが印象的でした。女性キャラは3人いてそれぞれ時間は短いのですが、演技の素晴らしさもあって、ちゃんとこの映画の外の世界で「きっちりと独立して生きている女性」に見えました。
ゲイ映画に出てくる女性キャラは、妙にLGBTQに理解があったり異常に毛嫌いしたり、その両方を担わされたりと、物語の起伏や推進に便利に使われる場合が多いです。
この映画の女性キャラはいい意味で「関係ない」。。
爽やかリーマンゲイをゲイだと知らずに好きになっちゃう同僚の女性とか、
逆に「気持ち悪い!穢らわしい!」とかわざわざ言ってくる女性とか、出てきそうだけど出てこない。
女性一人一人が自立した人生を送る中で、同じ社会に生きる人間同士としてチラッと関わってくるだけであり、ゲイを描くために消費されない女性キャラというのが、すごく珍しいし新しいと思いました。
これを監督に問いましたら「敵でも味方でもない女性として描いた」とお答えいただきまして、なるほど意識的な描き方だったのだと納得しました。
やろうと思っても実現難しいと思うんですよね。薄っぺらいキャラになっちゃいそう。3人の女優さんがほんと素晴らしいんですよ。
闖入者の藤松祥子さんなんかめっちゃ面白いし、あの一生懸命さに泣けてくるんですよね。。


23歳〜38歳のゲイ

年齢差も描かれてますね。これはセクシャリティ関係ないかも。
23歳はちょっと潔癖なくらいに理想だけを抱いている感じ。そのこだわりで他人を傷つけてしまう。

28歳とか33歳くらいになるとちょっと現実受け入れるゆるさが出てくるけど、まだ個人差がある。
38歳にもなると「そんなもんだよ」とゆるくなってきて、自分のこだわりとかで他人を傷つける場面も少なくなってくる。
僕は44歳なので、、、全体的に「そんなに騒がことか………」「元気だなぁ…」とは思いました。。ごめんねー。


『愛はなんだ』の片岡礼子のセリフ

『愛はなんだ』で恋に悩み苦しく岸井ゆきのに対して、片岡礼子が言うセリフを思い出しました。
「大丈夫よ〜、何悩んでんのか知らないけど」
↑ホントこのセリフ好き。


真剣になるほど可笑しい

やってる側が真剣なほどハタから見ると可笑しい、というのがコメディの基本でして。
申し訳ないですけど、真剣に入り込んでパニックになればなるほど面白くて、何度も笑いました。。
隠したい裏の顔などが暴かれていくんですけど、いつか彼らもこの夜のことを思い出して「あの夜、地獄だったよね〜」「熱かったね〜」と笑える鉄板ネタになると思うんですよね。
青春の1ページというか。命の祭りというか。
それもこれも生きてこそなので。生きてるからできることですので。


ラストも良い

ラストも良い。
パッと外の世界と繋がる。
懸命に生きてる人がブチギレてくるわけですが、それに即座にブチギレ返す。
良いじゃないですか。
基本的には関係ないけど関係してるんですよね、みんな。

映画『さかなのこ』ハイ、傑作映画!下の世代を照らす光

2022-10-11 | 映画イラスト
さかなのこ(2022年製作の映画)
上映日:2022年09月01日製作国:日本上映時間:139分
監督 沖田修一
脚本 沖田修一 前田司郎
原作 さかなクン
主題歌/挿入歌 CHAI
出演者 のん(能年玲奈) 柳楽優弥 夏帆 磯村勇斗 岡山天音 三宅弘城 井川遥 宇野祥平 前原滉 島崎遥香


目次

  1. 四コマ映画『さかなのこ』
  2. 良かった。。手震えるくらい良かった。。
  3. 原作本『さかなクンの一魚一会』
  4. 原作よりも抑えめに
  5. 映画らしいトリッキーさ
  6. さかなクンはイラストレーターでもあったんよね。
  7. ネタバレ ギョギョおじさん


四コマ映画『さかなのこ』





良かった。。手震えるくらい良かった。。

終盤ずっと泣いてた。。
そういえば、さかなクンの「お魚さん大好き!食べても美味しい!」っていう好きなものへの距離感ももともと好きでした。
この映画はずっと変なんだけど、、変な方向には行かないところがすごく良かったです。
母親の「あの子はお魚が好きで、お魚の絵を描いて、それでいいんです」っていうセリフも、「いい訳ないじゃん…」って思っちゃうんだけど井川遥の説得力がすごいから心に響くし、実際のさかなクンの人生も「それでいい」どころがめちゃくちゃいい感じなっていくわけですし。


原作本『さかなクンの一魚一会』

原作本、映画見終わって本屋巡ったけどどこも売り切れ。仕方なくKindleで買って映画見たその日に全部読みました。
(全ての漢字にフリガナ振ってあるので読みやすいですよ)
映画よりもさらに数奇な半生ですし、いかに周囲から愛された存在なのか原作読んでなおさら感動。
翻ってこの原作を豊かなトリッキー映画にしたことにまた驚嘆。


原作よりも抑えめに

映画を観て「このすごい半生はどこまでホントなの?」と思って原作を読んだんですけど、、実際のさかなクンの人生の方がよっぽど数奇でした。。
そのまま映画でやったらあまりに嘘くさくなっちゃうくらいの数奇さ。
だから映画ではむしろその数奇さを抑えめにしてるってとこが、本当にクレバー。上品。


映画らしいトリッキーさ

事実の数奇さを抑えた分、映画版に加えられたのが「ギョギョおじさん」。
ギョギョおじさんは、さかなクン自身が演じた幼いミー坊を導く役。
この役は意味がわからない。。
この自由さが映画としては嬉しいし、
この役についてよく考えてみると素晴らしくて、本当泣けちゃうのさ。
それはネタバレなので下の方に。


さかなクンはイラストレーターでもあったんよね。

ただただ魚が好きだから魚の絵を描き続けてたら魚の絵の仕事が来るようになって…っていう流れにボロボロ泣けた。。
昨今の僕には刺さりまくりでした。。
すみません、原作読んだら違いました。。私が浅はかでした。。。
「好きだからただただ描き続けた」んじゃなくて
小学校の頃からどう描いたら見る人に喜んでもらえるか」「どう描いたら見る人に喜んでもらえるか」「どう描いたら魚の魅力を伝えられるか」を考えながら描いて描いて描きまくっていた方でした。。

僕なんかより早いダントツに早い年齢で「どう描いたら見る人に喜んでもらえるか」を意識していたなんて、、、ホント尊敬。。。




ネタバレ ギョギョおじさん



ギョギョおじさんは幼いミー坊に魚の楽しさ、素晴らしさを教える人。
つまり、ミー坊の将来像となる先人(ギョギョおじさん)がすでにいて、ミー坊は先人に導かれることで自分の人生を豊かに生きることができたわけですね。

ギョギョおじさん視点で見ると、
ギョギョおじさんってのはちょっとかわいそうな人ではあって、、周囲からは変な人扱いを受けてるし、逮捕もされる。
ラストではどこかの漁港で働いている姿も映される。

一方、ミー坊はイラストレーターとしても順調だし、お魚博士としてお茶の間の人気者になった。
どちらの人生が良い人生かを単純に比較したくないけど、単っっっ純に見るとミー坊の方がより成功した人生を得られた。

でもそれはギョギョおじさんが周囲の無理解に負けずに自分を貫いて、ミー坊(下の世代)につなげていったからこそ。下の世代がよりのびのびと自分の人生を謳歌できるのは、先人がいたからってのもあるんだよ、と。

あのハコフグの帽子(あ、ごめんなさいアレは皮膚なんですよね)はそれの象徴かと。

***

で、大事なポイントはこれが映画の中のフィクションだけにとどまっていないという点。

実際のさかなクンには「ギョギョおじさん」的なわかりやすいメンターはいなかったかと思います(いたら危ないよね…)。
でも、いわゆる世間から「変な人」と言われながらも自分がやりたいことを貫いて生きている人はいたわけで、
その変な先人たちが周囲に与える影響が水紋のようにポンポンと広がっていた。

そして無意識下で「いろんな生き方があって良いよね」という社会の雰囲気がじわじわ充満していたからこそ、ミー坊はのびのび自分らしさを発揮できた。
ギョギョおじさんは世間から変な人扱いを受けても自分の人生の楽しさを選んでいるすべての人の象徴だし
その存在は下の世代にも良い影響を与えているし、
ミー坊(さかなクン)も当然下の世代に「自分の好きを貫く」大事さをつなげていってくれている。

泣いちゃう。

いい映画っっっっっっっっ!




映画『燃ゆる女の肖像』ラストネタバレあり 「描くのです!」って言われたもう1人の画家

2022-09-13 | 映画イラスト
燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
Portrait de la jeune fille en feu上映日:2020年12月04日製作国:フランス上映時間:120分


【ネタバレあり】四コマ映画『燃ゆる女の肖像』 → https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2859
 



【ネタバレあり】四コマ映画『燃ゆる女の肖像』 → https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2859

現代よりも情報量もなく正しい知識もなかったであろう1700年代で、同性愛者、ましてや女性が生きるのは、ほとんど暗闇を手探りで進むようなことだったんだろうなと思いました。

****

■異常に精細な音と映像


衣装の生地のそれぞれ風合いまでが克明に映されてました。
ドレスってこんなにもいろんな種類の生地で作られていたのかと初めて知りました。

それらの全てを精細に映す撮影が素晴らしかった。海も、砂も、岩も、ほつれた髪の一本も、腕毛さえも、全部鮮明に映す。

あと、音も。
黒炭が紙を滑る音。筆で絵の具を混ぜる音、掬う音。ドレスが擦れ合う音。鼻息。唇が触れあう音。離れる音。
ASMRか!ってくらいの微細な音でした。

****

■不在の男性による抑圧

ここまで全ての音を録って、物を映しているのに、男だけはほとんど映していません。
(序盤と終盤に出てきますが話には関わってこない)

男は映らないけど男に支配された世界。

この映画に悪人は出てこない。
娘たちを閉じ込めていたあのお母さんも悪役としては描かれていなかった。

女性の集団に対してすぐに「本当は仲悪いんでしょ?」と揶揄したり
「女同士のプライドを賭けた戦い!」を男が高みの見物をするような映画も多いですけど
この映画の女性たちは皆同じく苦しみながら連帯していました。


****

■地
面スレスレのスカート

あの時代の女性のスカートって見るたびに異様に思うんですが、ほんとに地面スレスレ。
あれで泥道も草原も砂浜も歩く。どう考えても汚いし、不便だったはず。
でも女性はスカートを脱ぐことは許されなかった。あのスカートは抑圧の象徴に見えます。

そのスカートが燃えました。

ちょうど裾から火がついて、このままスカートが燃えてしまえば「自由」になるけど、それは命を危険に晒すもの。
自由か死か。
その数秒後、女性たちによって火は消されます。
スカートは燃えなかったけど、エロイーズとマリアンヌの心にはむしろ火がついてしまいました。


で、初キスからの、どうみても女性器の形を模したような岩の割れ目に2人は吸い込まれてのキス。

キスもなんか、あんまりいやらしく見えなかったです。
あんまりみたことのない雰囲気でした。
男目線で撮られないからでしょうか。



ラストネタバレ


純白のドレスを着たエロイーズはほとんど幽霊みたいな雰囲気で結婚へと進みます。
マリアンヌは絵の先生として生計を立てつつ、画商のオークション(?)に出品。
女性画家の絵は売れないってことで父の名前で。
マリアンヌの知人っぽい初老の男性のみ話しかけてきましたが、他は誰もマリアンヌの絵を見ません。
その会場にエロイーズの肖像画があることを知るマリアンヌ。走り寄ります。
そこにはエロイーズとおそらく彼女の娘であろう可愛らしい少女。目力は彼女譲りに見えます。
エロイーズの手には本が。マリアンヌが拘っていた手です。人差し指が28ページを開いています。
28ページにはマリアンヌの自画像が描いてあるのです。もしかしたらいつかマリアンヌが見るかもしれない。伝われ、マリアンヌへ!とメッセージをこめた28ページ。
画家「あの、奥さん、、その本、、めくれてますけど…」
エロイーズ「いいのです。全て描いてください」
画家「はぁ…」
エロイーズ「何ページが開かれていますか?」
画家「え、あ、28ページです…」
エロイーズ「描いてください」
画家「はぁ…(怖い人だなぁ)」
っていうやりとりがあったかも。
ラスト。オーケストラ。
マリアンヌに勧められたオーケストラ演奏会にエロイーズが来ます。
初めてなのか、何度目なのかはわかりません。
それをマリアンヌが遠い席から発見します。
エロイーズはマリアンヌに気付きません。
でも、オーケストラの演奏が始まるとエロイーズは記憶の中のマリアンヌを呼び出します。
鮮明に撮影された皮膚、髪、唇が離れた時の唾液。
ソファと服が擦れる音、呼吸音、彼女と一緒に聞いたさざなみ。
これらがこのシーンで効いてきます。
マリアンヌは双眼鏡でその状態のエロイーズを観察します。
でも、もう画家とモデルという観察ではありません。
「明らかに私のことを思い出してるっ!私のこと思い出してああなってるっ!」という喜びがマリアンヌはあったことでしょう。

画面には恍惚とするエロイーズの顔しか映っていませんが、観客にもエロイーズとマリアンヌとの逢瀬が鮮明に蘇ります。
ほとんどオルガズムのような表情で映画はおわり。

***

その後の2人をこの映画は決めていません。
会場の出口で張っていればマリアンヌはエロイーズと再会することは容易いでしょう。
でも、再会したところで結ばれるのは難しいですよね。時代的にも、経済的にも。

再会も、再び結ばれることもないけど、確かにお互いを思い合う愛があることを確認できたラストですね。

***

差別、抑圧の苦しみを描きつつ、心の自由さを描いた
差別と抑圧の苦しみが描かれた映画ですが、自虐的な人物はいませんでした。
「私たちみたいな人間は一人で生きていくしかないのよ!」などという呪いの言葉を誰も言いません。
呪いの言葉で苦しみの中に閉じ込めようとする人物はいません。
本来誰もが自由であり心の自由は誰にも奪われないのだと伝えてくれる、傑作映画でございました!!


映画『みんなのヴァカンス』 こんな映画が撮れちゃうってことがわかったら他の映画作家は落ち込んじゃうんじゃないの? 

2022-09-03 | 映画イラスト
みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)
A l’abordage
上映日:2022年08月20日
監督 ギヨーム・ブラック
脚本 ギヨーム・ブラック カトリーヌ・パイエ
出演者 エリック・ナンチュアング サリフ・シセ エドゥアール・シュルピス アスマ・メサウデンヌ アナ・ブラゴジェヴィッチ リュシー・ガロ マルタン・メニエ セシル・フイエ ジョルダン・レズギ イリナ・ブラック・ラペルーザ








目次

  1. こんな映画が撮れちゃうってことがわかったら他の映画作家は落ち込んじゃうんじゃないの?
  2. 人物がとにかく自由
  3. 以下は加瀬亮さんの言葉
  4. 人種差別

こんな映画が撮れちゃうってことがわかったら他の映画作家は落ち込んじゃうんじゃないの?

っていうくらいにずっと奇跡でした。
アドリブも多いとのことなんですがそれが全然わざとらしくない。アドリブと台本通りのシーンに全く差を感じない。
画面の奥に映るモブ一人一人も自然。
モブにありがちな固さがない。ヴァカンスに来た観光客の一人一人にしか見えない。
画角があるのがもったいなかったです。この画面の外で行われていることにもきっと物語があっただろうと思える映画。
全然閉ざされていない。

人物がとにかく自由

物語の流れ上必要なセリフを言うためだけの人物、みたいなのが1人もいない。人物が物語に消費されていない。
観客に好かれようなんて思っていない言動をしていく。
(だけど嫌いにはなんなよね、この人たちを)
一番好印象であろうシェリフもよく考えてみたら人妻に近づくヤバいやつだし、フェリックスの話では「いつも彼氏持ちや旦那持ち」を相手にしているやつみたいだし、ストレートに心優しいとは言い切れない人物。
以下は加瀬亮さんの言葉
「簡単に言っちゃえば不倫なんだけど、エレナにしても結婚して子供を産んで夫の無理解に苦しむという経験を経なければシェリフの魅力には気づかなかったのでは。」
とユーロスペースでのトークショーにいらした加瀬亮さんが言っておられました。
この映画を見て「え、これ不倫じゃーん!不倫を擁護する映画だ!」と怒る人はいないのではないでしょうか。
人物と物語を丁寧に描いてくれていることで、その先の人間らしさを観客は受け取ることができる。


人種差別

主役の黒人俳優2人は「黒人であることを強調したくない」と映画作りの前に主張していたそう。
監督としては、あたかも人種差別がないような世界を描くのはまた不自然である的なことでこの映画では差別描写を幾つが盛り込んでいます。
が、どれもうっかりしていると気づかない程度。
差別を描くことがテーマではないけど、差別を描かないこともまた映画としておかしい、的なこともパンフに書かれてました。

(詳しくはパンフを参照)

例えば、嘘をつかないと休みを取れない状況であるとか、相乗りアプリに普通に黒人男としてアカウントを作っていたら誰も乗せてくれないから女性のふりして偽垢作る必要があったとか、そもそも車を持ってないとか電車賃が出せないとか、フランスであっても黒人として生活するのが大変であることが実はじわじわと描かれている。
ただ上記の全てがコメディシーンとして活かされているとことがこの映画の豊かなところ。
また、主役の黒人青年2人にも白人に対する差別意識がある。そもそも店長は正直に言えば休みをくれるタイプの人だったし、シェリフが高学歴エスカレーターを降りたのは「白人ばかりの学校はいけ好かない」という思い込みがあったから。

実は誰しもに思い込み(ものによっては差別と言えるレベルの)があって、この映画の中でそれらが少し緩和されていく。
群像劇とも言えるくらいにそれぞれの物語が勝手に動いているけど、大きな枠としてそれぞれが囚われていたものから少し自由になるという点で共通している。
だからこそ見終わった時に爽やかな気持ちになったんだと思う。
割とクズ人間ばかり出てきていたのに彼・彼女らを好きになってまた会いたくなっちゃうのは、この映画を包む力強い明るさがあるからだと思います。