君は行く先を知らない(2021年製作の映画)Jaddeh Khaki/Hit the Road
製作国:イラン 上映時間:93分
監督 パナー・パナヒ
脚本 パナー・パナヒ
出演者 モハマド・ハッサン・マージュニ パンテア・パナヒハ ヤラン・サルラク アミン・シミアル
製作国:イラン 上映時間:93分
監督 パナー・パナヒ
脚本 パナー・パナヒ
出演者 モハマド・ハッサン・マージュニ パンテア・パナヒハ ヤラン・サルラク アミン・シミアル
◼️映画『人生タクシー』のイランの名匠ジャファル・パナヒ監督の息子のパナー・パナヒのデビュー作。
検閲の厳しいイランにあって映画作りはとても難しく、
同じくイランの監督アスガー・ファルハディ監督はイランという国の特異性をうま〜く滲ませて傑作サスペンス映画をたくさん作っています。
父のジャファル・パナヒはイランの政治体制を批判する映画を作ったとして上映禁止からの逮捕、
そしてイラン国内では映画撮影が禁止され、
さらに2022年7月11日に再び逮捕。
てな感じで、
検閲との闘い自体を映画に包含させてきたとも言えそうなイラン映画。
1984年テヘラン生まれのパナー・パナヒ監督はちょっと違う。
***
隠喩的な表現や見えないところで描かれるイラン社会の特異性などは引き継がれているものの、
全体としてはとても軽やか。
中盤までは予告編の印象そのままにオフビートな笑いに満ちたロードムービーとしてただ楽しいだけで観れちゃうかもしれない。
◼️父、母、兄、弟、犬という隠喩家族
主人公はこの4人家族(プラス犬)。
まず彼らには役名がない。
Mom 、Dad、 Little Brother、Big Brotherでしかない。
特定の誰かではないということ。
父は、前世代の男性。
足を骨折してギブスをはめています。
母曰く「もう治ってるはず」とのこと。
社会の中で動きづらい男性。
でも偉そうにはできる。
母、女性。
女性はこの母だけということ自体メッセージがありそう。
泣いて笑って家族の面倒を見てこまごまと動き回り常に心配をしている。
兄は、現代の若者。
この兄は謎。
あまり喋らないし覇気もない。
ボ〜ッとしているし何も先のこと考えていないように見える。
けど「ここにいてはいけない」という本能なのか、現代的な価値観なのか、それに突き動かされている。
弟は、生命が原初的に持っている自由の象徴に思えました。
とにかく元気。エネルギーの塊。うるせーしウザいことも多い。
でもこれが人間がそもそも持っている自由さなんだと思いました。
しかし、すぐ上の世代の兄はボ〜ッとしてるし、父世代は動けない。この子もそうなってしまうのか。
犬は、病気で死にそうという設定なので、弱い立場の人間ということでしょうか。
老人を含めた社会的弱者。
そもそもこの車に乗せる予定ではなかったとか、終盤の展開などを思い返すと、社会的弱者に対してどういう社会構造なのかが描かれているように思います。
あと、父&母と弟が年齢差ありすぎ。
なんか理由があるのかと思ったら、ない。。
失礼ながら相っっっ当な高齢出産ってことになっちゃうと思うんだけど。。
なので、やっぱりこの家族は隠喩としての存在でしょうね。
****
コメディとしてずっと面白いですし、
ディテールもこだわっていて、霧のシーンがあるんですが霧もすごいいい演技をしてましたよ。
スタッフに霧を操る能力者がいたんでしょうか。
エンヤ婆がいたんですかね。
バイクのシーン。
シーンの佳境でほぼ霧で真っ白になってシーンも終わりでは霧がさ〜っと去っていく。
シーンも意味とも合いすぎていて、、誰かスタンド使いがいたか、映画の神様が微笑んだんでしょうね。扇風機でどうにかなる広大さではなかったし。。
***
あとは、毎度イラン映画を見ると思うんですが、俳優さんが演技素晴らしい。
詳しくは知らないんですが、国内でドラマとか演劇とか演技する場が豊かなんでしょうね。
ものすごく自然に、だけどちゃんと俳優としても重厚さもあって凄いんですよね。。
アスガー・ファルハディ監督作はもちろん、ジャファル・パナヒの『人生タクシー』でも全員うまいなぁと感動していました。
映画イラスト『君は行く先を知らない』→https://note.com/fukuihiroshi/n/n1e85ea995b87
ラストネタバレは以下に!
検閲の厳しいイランにあって映画作りはとても難しく、
同じくイランの監督アスガー・ファルハディ監督はイランという国の特異性をうま〜く滲ませて傑作サスペンス映画をたくさん作っています。
父のジャファル・パナヒはイランの政治体制を批判する映画を作ったとして上映禁止からの逮捕、
そしてイラン国内では映画撮影が禁止され、
さらに2022年7月11日に再び逮捕。
てな感じで、
検閲との闘い自体を映画に包含させてきたとも言えそうなイラン映画。
1984年テヘラン生まれのパナー・パナヒ監督はちょっと違う。
***
隠喩的な表現や見えないところで描かれるイラン社会の特異性などは引き継がれているものの、
全体としてはとても軽やか。
中盤までは予告編の印象そのままにオフビートな笑いに満ちたロードムービーとしてただ楽しいだけで観れちゃうかもしれない。
◼️父、母、兄、弟、犬という隠喩家族
主人公はこの4人家族(プラス犬)。
まず彼らには役名がない。
Mom 、Dad、 Little Brother、Big Brotherでしかない。
特定の誰かではないということ。
父は、前世代の男性。
足を骨折してギブスをはめています。
母曰く「もう治ってるはず」とのこと。
社会の中で動きづらい男性。
でも偉そうにはできる。
母、女性。
女性はこの母だけということ自体メッセージがありそう。
泣いて笑って家族の面倒を見てこまごまと動き回り常に心配をしている。
兄は、現代の若者。
この兄は謎。
あまり喋らないし覇気もない。
ボ〜ッとしているし何も先のこと考えていないように見える。
けど「ここにいてはいけない」という本能なのか、現代的な価値観なのか、それに突き動かされている。
弟は、生命が原初的に持っている自由の象徴に思えました。
とにかく元気。エネルギーの塊。うるせーしウザいことも多い。
でもこれが人間がそもそも持っている自由さなんだと思いました。
しかし、すぐ上の世代の兄はボ〜ッとしてるし、父世代は動けない。この子もそうなってしまうのか。
犬は、病気で死にそうという設定なので、弱い立場の人間ということでしょうか。
老人を含めた社会的弱者。
そもそもこの車に乗せる予定ではなかったとか、終盤の展開などを思い返すと、社会的弱者に対してどういう社会構造なのかが描かれているように思います。
あと、父&母と弟が年齢差ありすぎ。
なんか理由があるのかと思ったら、ない。。
失礼ながら相っっっ当な高齢出産ってことになっちゃうと思うんだけど。。
なので、やっぱりこの家族は隠喩としての存在でしょうね。
****
コメディとしてずっと面白いですし、
ディテールもこだわっていて、霧のシーンがあるんですが霧もすごいいい演技をしてましたよ。
スタッフに霧を操る能力者がいたんでしょうか。
エンヤ婆がいたんですかね。
バイクのシーン。
シーンの佳境でほぼ霧で真っ白になってシーンも終わりでは霧がさ〜っと去っていく。
シーンも意味とも合いすぎていて、、誰かスタンド使いがいたか、映画の神様が微笑んだんでしょうね。扇風機でどうにかなる広大さではなかったし。。
***
あとは、毎度イラン映画を見ると思うんですが、俳優さんが演技素晴らしい。
詳しくは知らないんですが、国内でドラマとか演劇とか演技する場が豊かなんでしょうね。
ものすごく自然に、だけどちゃんと俳優としても重厚さもあって凄いんですよね。。
アスガー・ファルハディ監督作はもちろん、ジャファル・パナヒの『人生タクシー』でも全員うまいなぁと感動していました。
映画イラスト『君は行く先を知らない』→https://note.com/fukuihiroshi/n/n1e85ea995b87
ラストネタバレは以下に!
ネタバレっつってもこの映画全然ハッキリしたことは教えてくれてないのですが、、、
まぁ兄は亡命業者を使って近隣国に亡命したんでしょうね。
マスクの男と羊飼いの男が亡命業者。
かなりルールがしっかりしているようで同じような家族が8組くらいいましたね。
それぞれ車で見送りに来ていて、近くの野営地でキャンプしてました。
で、結局どこに行くか父と母には知らされずに兄はバイクに乗せられて去って行きました。
最後の挨拶もできぬまま。
最後の挨拶もできぬまま。
「あの子が行ってしまった!」と母が嘆きました。
悲しみを振り払うように懐メロを3人で歌いながら、昔は湖だった砂漠を車で走ります。
悲しみを振り払うように懐メロを3人で歌いながら、昔は湖だった砂漠を車で走ります。
途中、犬の容体が急激に悪化し、
(死んでないように見えたんですけど…)死んだ犬の死体を砂漠に埋めます。
(死んでないように見えたんですけど…)死んだ犬の死体を砂漠に埋めます。
犬が動いちゃっただけ?死んでないように見えたんですよね。。
だとしたら生き埋め?安楽死的な?
だとしたら生き埋め?安楽死的な?
そもそもこの旅の前に、病気だから安楽死をさせる予定だったし。。
前述の通り、犬が社会的弱者の隠喩だとしたら、なかなかキツイ描写です。。
そして車は走り出す。
映画は終わり。