君は誰?46

2025-02-03 10:20:58 | 日記
「うっ…うっ…」

「松田…、大丈夫か?」

「来な…い…。来ない…で…。」

「え?」

「うしろ…。ぼくのうしろにいるんだ。」

「だ、誰が?」

「わからない…。…何か…何かが…ついて来てる。」

「まじかよ…。」

正人は恐る恐る振り返った。

直樹もそっと振り返る。

何も無い。

「何も無いよ!大丈夫だよ」

正人は笑って松田の背中をたたく。



君は誰?45

2025-01-31 08:15:50 | 日記
「松田!」

「松田!しっかりしろ!!」

「来るな!」と叫んでしりもちをついた松田は、周りを見回しながらゆっくりと立ち上がった。

直樹と正人は、両脇から松田を支えて自転車を置いた場所へ急ぐ。

「うっ…うっ…」

「どうした?!松田!」

松田は、ゆっくり歩きながら肩を震わせて泣いている。

「大丈夫か?自転車乗れるか?」

「誰か呼ぼうか?」

「大丈夫だよ。自転車乗れるよ…」

泣きながら力無く歩く松田を、二人は、尚一層強く支えた。

「うっ…。うっ…。来な…い…」

「え?なんて?」

「来ない……」

「何が?何が来ないの?」



君は誰?44

2025-01-27 11:58:07 | 日記
「もう、帰ろう!」

松田の後ろは壁なのに、自分の後ろに誰かいる!と叫ぶ。

「落ち着け!」

直樹たちは、混乱する松田を無理やり椅子から引き離した。

「帰るぞ!」

松田の両脇を抱えて入ってきた教室のベランダから出た。

混乱する松田を支えているため、懐中電灯が役に立たない。

やっと暗い夜道を辿る。

「来るな!」

「え?」

松田は、ぐいっ!と後ろを向いて、後ろに居るらしい"何か"を振り払おうと、両手をブンブンと振り回した。

「触るな!」

「松田!大丈夫だよ!誰もいないよ!」

「わあっ!」

松田は、まるで何かに引っ張られたかのように、ドスンとしりもちをついた。



君は誰?43

2025-01-23 09:34:29 | 日記
松田は、目を閉じ黙って鏡の前にある椅子に座ると、ゆっくりと目を開けた。

「映ってる」

さっきまで『自分が映らない!』と混乱していた松田だが、今度は落ち着き払って鏡を見つめている。

「な、大丈夫だろ、映ってるだろ!」

「もう、いいから帰ろう!」

「あっ…誰?……誰だ?」

「何?今度はどうした?!」

「オレの後ろに…誰か立ってる」

「え?」

鏡を覗き込んだまま、松田は自分の後ろに映るらしいモノを指差した。

「誰もいないよ。松田の後ろは壁だよ」

「ううん…。誰かいる」

「やめろよ!もう帰ろう!」

正人は無理やり松田を椅子から引き離した。



君は誰?42

2025-01-20 08:27:43 | 日記
「どうしょう!!どうしょう!!」

松田は混乱している。

「大丈夫だよ!映ってるよ!」

「いないよ!いないよ!」

「松田!松田!しっかりしろ!」

松田は、急に目を閉じると、操られるように、椅子に座った。

「だ、大丈夫か?松田。」

「もう、帰ろう!」

「うん。帰ろう!」

松田は、目を閉じたままだ。

「おい、松田…。おい。」

「…静かに…してくれ…」

松田は、急に冷静になって、椅子に座ったまま、目の前の鏡を見た。