幼少期、夢中になって見ていたTV番組の1つに「新八犬伝」【音声】が在る。1973年4月2日から1975年3月28日迄、NHKで放送された連続TV人形劇で、自分が歴史大好き人間となった端緒は、此の番組だったと言っても良い。
江戸時代の読本作者・曲亭馬琴が著した「南総里見八犬伝」と「椿説弓張月」をベースにした作品で、おどろおどろしさや摩訶不思議さが溢れる勧善懲悪物のストーリーが、実に面白かった。
辻村寿三郎氏が作り上げた人形達が、とても個性的で在り、又、子供心に色気を感じさせる物で、其れも此の番組に惹き付けられた要因。
そして、歌手の坂本九氏が“語り”を担当していたのも、「新八犬伝」が人気番組(平均視聴率は約20%。)となった大きな要因だろう。黒子姿の“九ちゃん”が口にする七五調の語りは非常に心地好く、「閑話休題」とか「青天の霹靂」といった(子供にとっては)小難しい言葉も、彼の語りから多く学んだ物だ。
そんな九ちゃんが亡くなったのは、今から30年前の今日、即ち「1985年8月12日」の事。搭乗していた旅客機「日本航空123便」が御巣鷹の尾根に墜落し、乗員4名は助かったものの、残りの520人は帰らぬ人となってしまった。其の犠牲者の1人が九ちゃん。「新八犬伝」以降ファンだったので、訃報に触れた際は本当にショックだった。
コックピット・ヴォイス・レコーダー(CVR)に残された遣り取り【音声】からは、操縦不能となった機体を最後の最後迄、必死になって何とかし様とする機長達の姿が窺われる。其れだけに最後の絶叫は、何度聞いても堪らない思いになってしまう。