
或るフリー・ペーパーに、子供文化評論家の野上暁氏が「子供雑誌と付録の魅力」という記事を書いておられた。彼は小学館に勤務していた際、1980年から総合雑誌「小学一年生」の編集長を務める等、子供向け雑誌に付いて詳しい人物。
「最近の子供向け雑誌の付録は、本当に凄い!」というのは、メディアの報道で知ってはいたけれど、特に小学館発行の「幼稚園」は話題になっている様だ。今年の4月号の付録「ワニワニパニック」は、“ゲーセン”で御馴染みのゲームを再現した者だけれど、「其の完成度が半端無い。」と言う。作り方が簡単な上、「次々と出たり引っ込んだりする鰐をハンマーで叩くと、得点が“デジタル表示”される。」等、本物そっくりのゲームに子供達は夢中になったと。他にも・・・。
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・「ぎゅうどんづくりゲーム」(「幼稚園」[2020年1月号]の付録)
牛丼の吉野家と提携した、本物サイズの丼と、御玉を使ったゲーム。
・「やきにくリバーシ」(「幼稚園」[2019年6月号]の付録)
牛角とのコラボ。
・「セブンティーンアイスじはんき」(「幼稚園」[2019年7月号]の付録)
江崎グリコとのコラボ。
・「セブン銀行ATM」(「幼稚園」[2019年9月号]の付録)
セブン‐イレブンに置かれているATMが、紙でそっくりに再現。
・「ピノガチャ」(「幼稚園」[2019年12月号]の付録)
森永乳業のアイス・クリーム「pino」そっくりの物が、“ガチャガチャ”から出て来る。
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「コラボによるコスト削減で、従来では実現出来なかったIC等も使った豪華な付録が可能となり、TVのCMでも御馴染みの商品を再現出来るのだから反響は大きい。」と、野上氏は書いている。「子供の頃、子供向け雑誌の付録だった“紙で作るちゃちなレコード・プレーヤー”で、(矢張り付録だった)ソノシートを聞いて大興奮していた自分。」からすると、隔世の感が在る豪華さだ。
日本の子供向け雑誌の誕生は、文明開化と共に始まる。最初期の子供向け雑誌は、1877年に創刊された「穎才新誌」で、当初は僅か4~8頁の読者投稿が中心の週刊誌だった。表紙は投稿された書画が飾り、本文は二段組みで小さな文字がびっしり詰まっていて、尾崎紅葉、山田美妙、大町桂月、田山花袋等が、少年時代に投稿して文才を競っていたそうだ。以降、小学校の就学率上昇に呼応し、学校教育を補完&強化する目的で、子供向け雑誌は次々と創刊されて行く。
1888年に創刊された「少年園」には、巻末に“第1号付録”として読者投稿文を載せた「芳園」が収められており、子供向け雑誌初の付録とされる。(今日的な“付録”とは異なり、「本文に付属した記録」という意味合いで使われた“付録”だが。)又、1931年の「少年倶楽部」(4月号)の付録「大飛行艇ドックス号模型」は、子供向け雑誌初の組み立て付録という事だ。
昭和30年代の子供向け雑誌は“量的に”豪華で、「“本体”で連載されていた漫画数本の続きが、付録の小雑誌に載っている。」等、分厚さを競っていた。自分が子供の頃にもそういう“余韻”は残っていたけれど、殆どの付録は紙製。そんな中、学研の「学習」と「科学」に関しては、プラスチック製の付録が付く等、“質的に”豪華だったのが印象的。今回の記事で初めて判ったのだが、「当時の雑誌は国鉄(今のJR)を使って特別格安料金で配送されていて、其の為に重量や付録の材質に様々な制限が在ったのだけれど、『学習』と『科学』は鉄道輸送では無かった事から材質規制が無く、プラスチック製等の完成品付録が付ける事が出来た。」のだとか。