ミステリー関連の年間ブック・ランキングで、自分が注目しているのは「本格ミステリ・ベスト10」(発行元:原書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(発行元:文藝春秋)、そして「このミステリーがすごい!」(発行元:宝島社)の3つだが、「2020本格ミステリ・ベスト10【国内編】」で9位、「2019週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」では7位に選ばれたのが、今回読んだ「むかしむかしあるところに死体がありました」(著者:青柳碧人氏)。日本の昔話を基にしたミステリーで在る。
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・「一寸法師の不在証明」
一寸法師Xアリバイ・トリック。
・「花咲か死者伝言」
花咲か爺さんXダイイング・メッセージ。
・「つるの倒叙がえし」
鶴の恩返しX倒叙トリック。
・「密室竜宮城」
浦島太郎X密室トリック。
・「絶海の鬼ヶ島」
桃太郎Xクローズド・サークル。
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日本人なら誰でも知ってるで在ろう5つの昔話が基になっているので、すっとストーリーの中に入って行ける。“昔話を題材にしたミステリー”というのは結構在るけれど、“昔話の世界で起こるミステリー”というのは珍しいだろう。(こういう形式のミステリーを読むの、自分は初めて。)
一番面白かったのは「密室竜宮城」で、思いも寄らないトリックに「そう来たか!」という思いが。物語に登場する或るグッズの使用法が実に意外で、「良くもまあ、こんな事思い付いたなあ。」と感心してしまう。「一寸法師の不在証明」も、まあまあ面白い作品。
「花咲か死者伝言」と「つるの倒叙がえし」は個人的に“驚き”が無く、凡庸なイメージ。又、「絶海の鬼ヶ島」はトリックは悪くないものの、如何せん“似た様な名前の鬼”が多く登場するので、「誰だっけ?」とか「どういう関係だっけ?」と頭の中が混乱して、読み進めるのに苦労した。読者の事を考え、名前付けはもう少し工夫して欲しい。
総合評価は、星3つとする。(「密室竜宮城」だけで言えば、星4つは与えられるのだが。)