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精南大学の男子寮「獅子辰寮」の代表となった長瀬秀次(ながせ ひでつぐ)は、4月から2回目の3年生。成績は不味いが、寮での人望は厚い。寮で同室となるのは、アメリカ・ロサンゼルス出身のケビン・マクリーガル。本来なら、1年生からの付き合いで、気心の知れた平塚優作(ひらつか ゆうさく)がルームメイトになる筈が、所属するゼミの雄島総一郎(おじま そういちろう)教授の一存で決まった。ギリギリの成績で、教授に弱みを握られている秀次に、拒否権は無かった。
桜満開の3月の終わり、大学の旧学生会館で死体が発見された。第一発見者の寮の後輩が、警察に連行され事情聴取を受けたと言う。後輩の無実を晴らす事は出来るのか?
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「日本の昔話を基にしたミステリー。」の「むかしむかしあるところに、死体がありました。」(総合評価:星3つ)と「むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。」(総合評価:星3つ)、そして「西洋の童話を基にしたミステリー。」の「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」(総合評価:星3つ)という、変わった切り口のミステリーを著して来た青柳碧人氏。3作品とも自分の総合評価は「星3つ」と、「可も無く不可も無し。」という感じだった。
今回読んだ「ナゾトキ・ジパング」も彼の作品だが、主人公は長瀬秀次とケビン・マクリーガルという2人の大学生。学業はからっきしだが、代表を務める男子寮内での人望が厚い秀次と、日本人よりも日本の事に詳しいケビンが、校内外で発生した“事件”を解決するというストーリー。
ミステリーと言えば「2人組で謎を解く。」というのが一般的で、「片方が探偵のシャーロック・ホームズ役ならば、もう片方は助手のジョン・H・ワトスン役。」というのも、又一般的。だが、今回の作品では「ケビンがシャーロック・ホームズ役で、秀次がジョン・H・ワトスン役とも言えなく無いのだが、秀次がケビンの推理が及ばなかった部分を補ったりしてもいるので、彼はシャーロック・ホームズ役“も”兼ねている。」と言えるだろう。
自分が幼かった頃、国内で外国人を見掛ける事は非常に珍しかった。だから、「今よりもずっと外国人タレントは珍しい存在だったし、其の位置付けも『日本に関する事に結構詳しく、妙な日本語を喋ったりもする“変な外人”。」という感じだった。此の作品に登場するケビンは、そんな“変な外人”という位置付けで在り、だからこそ“昔の状況”を知っている身としては、「何か古臭い設定だなあ。」という感じがしてしまう。
5つの短編小説とエピローグで構成されているが、全体としてぱっとしない。上記した古臭い設定に加え、肝心な謎解きの部分に“驚き”が無かったので。今回の作品も、「可も無く不可も無し。」という感じだ。
総合評価は、星3つとする。