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・と或る強盗殺人事件の不可解な証言を集める内に、戦慄の真相に辿り着いて・・・。 「ありふれた事件」より
・幼馴染みのバレエ・ダンサーとの再会を通じて才能の美しさ、酷薄さを流麗な筆致で描く。 「春の祭典」より
・密かに都市伝説となった歩道橋を訪れた「私」が記憶と、現実と、世界の裂け目を目撃する。 「歩道橋シネマ」より
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恩田陸さんの短編小説18作品で構成された「歩道橋シネマ」。恩田さんと言えば押しも押されもせぬ“売れっ子小説家”の1人だが、彼女の作品を自分がきちんと読んだのは、3年前の「蜜蜂と遠雷」が最初だった。心に残る作品だった(総合評価は星4.5個。)ので、“続編”で在る「祝祭と予感」を今年初めに読み(総合評価は星3つ。)、今回の「歩道橋シネマ」が3作品目となる。
「今回の作品群、全体としてホラー色が強い。」とは聞いていた。ホラー作品が苦手なので「どうかなあ・・・。」と思って読み始めたのだが、思っていた程ホラー色は感じなかった。そういう意味ではほっとしたのだけれど、肝心の内容がぱっとしない。「中身に“芯”が無い。」と言ったら良いのだろうか、「何を書きたいのか?」が伝わって来ないし、全体として申し訳無いけれど“遣っ付け仕事”の様な感じがしてしまう。「蜜蜂と遠雷」の出来が余りにも良かっただけに、落差が激しい。
「小説家って普段から観察力が鋭く、一般人が見過ごしてしまう様な出来事からも、小説の題材を拾い取っているんだなあ。」というのを、恩田さん自身が各作品に付いて書いた後書きから感じた。自身が目撃した事から着想を得た「楽譜を売る男」もそんな1つで、個人的には面白い作品だった。
総合評価は、星2つとする。