「僕自身余り幸せといえる環境で育って来なかったので、昔から家族に対する憧れが在ったんです。でも今の世の中、何だか『他人の様な家族』が多い。だから今回、敢えて『家族の様な他人』を書いてみようかと。」
作家の道尾秀介氏が、自身の近刊本「カラスの親指 ~by rule of CROW’s thumb~」*1に付いて語った言葉。「片目の猿」(申)に「ソロモンの犬」(戌)、そして「ラットマン」(子)と、彼には「十二支」に関連するタイトルの作品が過去に在る。今回の作品は「カラス」、即ち「酉」の名前がタイトルに織り込まれており、「十二支シリーズ」の第四弾という訳だ。
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共に哀しい過去を持ち、共に詐欺を生業とする“タケ”と“テツ”の中年男2人。共同生活を送る彼等の下に、或る日、1人の少女“まひろ”が舞い込む。戸惑う2人だったが、同居人は更に増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くした物を取り戻す為、過去と決別する為、彼等が企てた大計画とは!?
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「カラスの親指」というタイトル、「一体何を意味しているのか?」と思われる方も少なくないだろう。プロの詐欺師を「カラス」と喩える そうだが、“哀しい話”を持つカラスと詐欺師の姿を重ね合わせてもいる様だ。
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「ねえタケさん・・・カラスの死骸って見たことあります?」
「いえ、ねえけど。」
「どうしてだと思います?」
何が言いたいのかわからない。武沢は黙って首を横に振った。
「カラスが、そのへんで死んでるとね、目障りで不衛生だから、すぐに片づけられちゃうんですよ。もしちゃんと、ねぐらに帰って、そこで死んだとしても、仲間のカラスに食べられちゃうんです。だから、死骸を見ないんです。」
細々と咽喉を鳴らし、テツさんは息を吸い込んだ。
「物みたいに、片づけられて忘れられちゃうか、同じカラスに食われて忘れられちゃうか・・・どっちかなんですよ。」
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そして「親指」にも、なかなか深い意味が隠されている。「親指だけが、正面からほかの指を見ることができるんです。ぜんぶの指の中で、親指だけが、ほかの指たちの顔を知ってるんですよ。」という台詞が文中で使われているが、この作品を読み終えると「なるほど!」と感じる事請け合いだ。
全体の3分の2位迄はストーリー展開がかったるく、「面白くない作品だなあ」と。しかし其処から終盤に掛けて予想外な展開が繰り広げられ、先が気になってドンドン読み進んでしまった。「絶妙な伏線の張り方」というのは道尾作品の特徴だが、今回もそれは充分発揮されている。(ややくど過ぎる感も在ったが。)
総合評価は星3つ。
*1 「by rule of thumb = 理論等では無く、経験に基づく方法。」の意味。crowは「カラス」。
作家の道尾秀介氏が、自身の近刊本「カラスの親指 ~by rule of CROW’s thumb~」*1に付いて語った言葉。「片目の猿」(申)に「ソロモンの犬」(戌)、そして「ラットマン」(子)と、彼には「十二支」に関連するタイトルの作品が過去に在る。今回の作品は「カラス」、即ち「酉」の名前がタイトルに織り込まれており、「十二支シリーズ」の第四弾という訳だ。
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共に哀しい過去を持ち、共に詐欺を生業とする“タケ”と“テツ”の中年男2人。共同生活を送る彼等の下に、或る日、1人の少女“まひろ”が舞い込む。戸惑う2人だったが、同居人は更に増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くした物を取り戻す為、過去と決別する為、彼等が企てた大計画とは!?
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「カラスの親指」というタイトル、「一体何を意味しているのか?」と思われる方も少なくないだろう。プロの詐欺師を「カラス」と喩える そうだが、“哀しい話”を持つカラスと詐欺師の姿を重ね合わせてもいる様だ。
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「ねえタケさん・・・カラスの死骸って見たことあります?」
「いえ、ねえけど。」
「どうしてだと思います?」
何が言いたいのかわからない。武沢は黙って首を横に振った。
「カラスが、そのへんで死んでるとね、目障りで不衛生だから、すぐに片づけられちゃうんですよ。もしちゃんと、ねぐらに帰って、そこで死んだとしても、仲間のカラスに食べられちゃうんです。だから、死骸を見ないんです。」
細々と咽喉を鳴らし、テツさんは息を吸い込んだ。
「物みたいに、片づけられて忘れられちゃうか、同じカラスに食われて忘れられちゃうか・・・どっちかなんですよ。」
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そして「親指」にも、なかなか深い意味が隠されている。「親指だけが、正面からほかの指を見ることができるんです。ぜんぶの指の中で、親指だけが、ほかの指たちの顔を知ってるんですよ。」という台詞が文中で使われているが、この作品を読み終えると「なるほど!」と感じる事請け合いだ。
全体の3分の2位迄はストーリー展開がかったるく、「面白くない作品だなあ」と。しかし其処から終盤に掛けて予想外な展開が繰り広げられ、先が気になってドンドン読み進んでしまった。「絶妙な伏線の張り方」というのは道尾作品の特徴だが、今回もそれは充分発揮されている。(ややくど過ぎる感も在ったが。)
総合評価は星3つ。

*1 「by rule of thumb = 理論等では無く、経験に基づく方法。」の意味。crowは「カラス」。

理由は反物質と対消滅反応を起こしてしまう。
著者は矢追純一です(笑)
シドニィ・シェルダン氏の作品を多く出版している事で有名なアカデミー出版。此処は従来の「直訳」では無く、「作者が何を言おうとしているのかに主眼を置いて、読者が読み易い様に自然な訳を心掛ける。」というスタイル、同社曰く「超訳」を取り入れていますが、数年前に「余りに飛躍し過ぎた、作者の意図を無視した誤訳。」との批判が出ましたね。単語に固執する余り、ストーリーを追うのがしんどくなってしまうのも問題なれど、恣意的に訳者がストーリーを変えてしまうのも問題で、この辺の“匙加減”は難しいでしょうね。
因みに自分は小説を読む際、後書きを一番最初に読む事が多いです。