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百合ヶ原高校には、「ユリコ様伝説」が在る。ユリコという名を持つ生徒は超常的な力で守られ、逆らう者には不幸が訪れる。但し、ユリコ様になれるのは1人だけ。ユリコが2人以上居た場合、彼女達も不幸な目に遭って、転校や退学をし、1人だけが残る。新入生の百合子(ゆりこ)は伝説を聞いて怯えるが、親友の嶋倉美月(しまくら みづき)に単なるオカルトだと宥められる。然し、ユリコという名の生徒が屋上から転落し・・・。
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第18回(2019年)「『このミステリーがすごい!』大賞」のU-NEXT・カンテレ賞に選ばれた小説「そして、ユリコは一人になった」(著者:貴戸湊太氏)は、「古くから『ユリコ様伝説』という物が伝わっている高校で、次々と生徒が怪我&死亡する。」という打っ飛んだ設定。伝わっている「ユリコ伝説」では、「ユリコ様に選ばれた者に逆らう人間には不幸が訪れるとされていたが、少なくとも死者が出る事は無かった。」のだけれど、何故か今回は死者が出る。「誰が、何の為に、どういうトリックを用いて殺人事件を起こしたのか?」に加え、「今回は何故、死者が出たのか?」という謎解きも必要なのだ。
結論を言えば、此の作品には“犯人”、“真犯人”、そして“真・真犯人”の3人が存在する。自分が「犯人ではないか?」と予想していた人物が3人存在したのだが、内2人は“犯人”と“真犯人”だった。共に“或る共通点”が在り、其の点には考えが及ばなかったけれど、「『“犯人”が確定したと思わせておいて、どんでん返しで“真犯人”が明らかになる。』という展開だな。」というのはずばり的中していた。でも、「まさか更なる大どんでん返しが設けられていて、其れも“真・真犯人”が彼の人物で、“そういう理由”が在ったとは全く思ってもいなかった。」ので、其の点では驚きが。(実は、自分が犯人を予想していた3人の内の残り1人、其の“関係者”だった。「何でこういう記述をするのかなあ?」と不思議でならず、其の人物に目を付けていたのだが・・・。)
偶然性に頼った部分が在り、其の不自然さは減点ポイントかも。でも、謎解きとしては面白い方だと思う。
総合評価は、星3.5個とする。