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未解決事件を取り上げる為、「継続捜査ゼミ」と呼ばれる小早川一郎(こばやかわ いちろう)ゼミの5人の女子大生は、冤罪をテーマにし様とする。
小早川は、授業で学内ミスコン反対の片を配る女子学生・高樹晶(たかぎ あきら)に会うが、高樹は小早川と話をした直後、何者かに襲われ救急車で運ばれた。其の後、高樹に対する傷害容疑で小早川が任意同行される事に。
警察に疑われ続ける教授に代わり、ゼミ生達が協力して事件の真相を明らかにして行く。
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今野敏氏の小説「エムエス 継続捜査ゼミ2」は、 「継続捜査ゼミ・シリーズ」の第2弾。「警察学校の校長を務めた経歴の在る警察OB・小早川一郎は、定年を迎えるに当たり、三宿女子大学長・原田郁子(はらだ いくこ)から『自分の大学で、学生に教えてみないか?』と誘われる。同年齢で幼馴染みでも在る彼女からの誘いに、小早川は准教授として同女子大で教鞭を執る事を決め、4年目には教授となった。警察OBという事で、今年から別名「継続捜査ゼミ」と呼ばれるゼミを受け持ち始め、ゼミ生は5人。彼女達と共に、事件の真相を明らかにして行く。」というのが、「継続捜査ゼミ・シリーズ」で在る。
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「たしかに戸田さんが言ったとおりの印象があります。それには、逮捕されたらほとんどが有罪、という事情が影響していると思います。」。その発言は正確ではないと、小早川は思った。だが、自分がそれを正すよりも、ゼミ生に指摘させるべきだと思った。(中略)
「逮捕された人の有罪率が高いのではありません。起訴された人の有罪率が高いのです。」。「西野(にしの)さんの言うとおりです。」。小早川は言った。「起訴された被疑者の有罪率は99.9%だと言われていたことがあります。実際にはそこまでではないという説もありますが、高率であることは間違いありません。しかし、日本の場合、アメリカなどに比べると、逮捕者の起訴率がそれほど高くはないのです。アメリカではあくまで裁判で白黒を付ける、という主義ですが、日本では起訴の段階でさまざまな判断がなされます。」。(中略)
「大雑把に言うと、逮捕者の起訴率は半分くらいでしょうか。犯罪の種類によっても違ってきます。起訴率が高いのは、覚せい剤取締法違反で、約8割が起訴されます。逆に起訴率が低いのは殺人で、約3割ほどでしかありません。傷害や窃盗が4割程度、詐欺が5割といったところでしょう。」。
麻由美(まゆみ)が目を見開いたまま言う。「捕まっても、半分が起訴されないってことですか?」。「そういうことになります。ですから、逮捕されたらほとんどが有罪というのは間違っていることになります。」。
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犯罪や裁判に関する興味深い記述が幾つか記されているが、自分も「日本では逮捕されてしまうと、殆どが有罪となってしまう。」という思い込みが在ったので、「逮捕者の起訴率は半分位。」というのは意外だったし、「殺害の起訴率は犯罪の中でも低く、約3割程しかない。」というのは驚きだった。
又、“思い込みの怖さ”を思い知らされる記述が他にも在り、反省させられもしたが、「犯人が誰なのか、早い段階で判る。」等、ミステリーとしては今一つな感じが。
総合評価は、星3つとする。