ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「連続殺人鬼カエル男」

2011年09月22日 | 書籍関連

**************************************口にフックを掛けられ、マンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体。街を恐怖と混乱の陥れる、「カエル男」と呼ばれる事になった殺人鬼の、最初の犯行だった。傍らに貼られていたのは子供が書いた様な稚拙な、しかし犯行を準えた思われる文章。

「きょう、かえるをつかまえたよ。はこのなかにいれていろいろあそんだけど、だんだんあきてきた。おもいついた。みのむしのかっこうにしてみよう。くちからはりをつけてたかいたかいところにつるしてみよう。」
警察の捜査が進展しない中、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックになる。無秩序猟奇的な殺人を続けるカエル男の目的と、そして正体とは?警察は犯人を突き止められるのか?
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魔女は甦る」が第6回(2007年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の最終候補作に残り、其の2年後、第8回(2009年)の同賞では「さよならドビュッシー」にて見事大賞を受賞した中山七里氏。第8回の最終候補作は7作品なのだけれど、其の内の2作品が中山氏の著作で、今回読んだ「連続殺人鬼カエル男」がもう1つに当たる。*1
 
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刑法39条】
1. 心神薄弱者の行為は此れを罰せず。
2. 心神耗弱者の行為は其の刑を減刑す。
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残虐な犯行が起こった際、加害者の精神鑑定が行われる事が在る。「刑法39条」、即ち責任能力を問えるか否か?」が問題になるケースだが、「連続殺人鬼カエル男」は刑法39条をテーマにしている。個人的には「心神耗弱を装って、罪を逃れようとしているが結構居るのではないか?」とという懸念をずっと抱いている。そういう懸念を抱いてしまう理由は幾つか在るのだけれど、其の1つが此の作品の中で記されていた。
 
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だが古手川は刑法三十九条の見直しよりは心神喪失という定義厳格にすべきではないかと思う。心神喪失、或いは心神耗弱したにしてはそういう人間が手に掛けるのは決まって女子供だけで、間違っても暴力団の事務所や相撲部屋に乱入しないのは十分に判断力が備わっているからではないか。
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真に責任能力を問えないケースは未だしも、心神耗弱等を装って罪を逃れようとする輩が居るとしたら・・・絶対に許せない。
 
猟奇的な連続殺人事件というだけでも一般人に脅威を与えると言うのに、一見「無秩序」に思われた連続殺人が実は「或る法則」に基づいて行われているのが判った事で、当該地域はパニック状態に陥る。「善良」とは言わないも、普段は「平凡」な一般人と捉えられている人達もが、恐怖によって凶暴さを見せて行く過程の記述は、「然もありなん。」という感じだ。
 
スプラッター・ムーヴィーを思わせる残忍な記述」は正直好きじゃないけれど、幾つも仕掛けられたどんでん返しは読み応えが在る。“結果的に”真犯人を当てはしたけれど、“彼の人物”も関わっているとは思わなかったし、“其の素性”にもすっかり騙されてしまった。
 
総合評価は星4つ
 
*1 「『このミステリーがすごい!』大賞」には「災厄の季節」というタイトルで応募するも、刊行に際して「連続殺人鬼カエル男」にタイトルが変えられたとか。確かに「災厄の季節」よりは「連続殺人鬼カエル男」の方がインパクトは在るけれど、「カエル男」という言葉を用いる事で、恐らくは著者が意図していない「コミカルさ」や「軽さ」を、読もうか読むまいか迷っている人に与えてしまうデメリットも在りそう。


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2 コメント

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Unknown (3518)
2011-09-22 12:56:17
表紙のイラストとタイトルから奥田英朗の伊良部シリーズみたいなものかと想像しました。 他にも、乙一さんの「暗いところで待ち合わせ」など、ミステリーですが、とても心温まる物語で、表紙のイメージからはとてもかけ離れていました。 キャッチーな部分というのは大事なのではないかと思うのですが、ギャップが
大きくて、損しているように感じることがあります。
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>3518様 (giants-55)
2011-09-22 23:42:26
書き込み有り難う御座いました。


自分の年代からすると「連続殺人鬼カエル男」の蛙は、「ケロヨン」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%AD%E3%83%A8%E3%83%B3)を思い出させる物でした。タイトルと併せてコミカルな内容と思いきや、可成りシリアスな内容だったので、良い意味で驚きでした。
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