**************************************口にフックを掛けられ、マンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体。街を恐怖と混乱の渦に陥れる、「カエル男」と呼ばれる事になった殺人鬼の、最初の犯行だった。傍らに貼られていたのは子供が書いた様な稚拙な、しかし犯行を準えた思われる文章。
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「魔女は甦る」が第6回(2007年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の最終候補作に残り、其の2年後、第8回(2009年)の同賞では「さよならドビュッシー」にて見事大賞を受賞した中山七里氏。第8回の最終候補作は7作品なのだけれど、其の内の2作品が中山氏の著作で、今回読んだ「連続殺人鬼カエル男」がもう1つに当たる。*1
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残虐な犯行が起こった際、加害者の精神鑑定が行われる事が在る。「刑法39条」、即ち「責任能力を問えるか否か?」が問題になるケースだが、「連続殺人鬼カエル男」は刑法39条をテーマにしている。個人的には「心神耗弱を装って、罪を逃れようとしている輩が結構居るのではないか?」とという懸念をずっと抱いている。そういう懸念を抱いてしまう理由は幾つか在るのだけれど、其の1つが此の作品の中で記されていた。
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だが古手川は刑法三十九条の見直しよりは心神喪失という定義を厳格にすべきではないかと思う。心神喪失、或いは心神耗弱したにしてはそういう人間が手に掛けるのは決まって女子供だけで、間違っても暴力団の事務所や相撲部屋に乱入しないのは十分に判断力が備わっているからではないか。
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猟奇的な連続殺人事件というだけでも一般人に脅威を与えると言うのに、一見「無秩序」に思われた連続殺人が実は「或る法則」に基づいて行われているのが判った事で、当該地域はパニック状態に陥る。「善良」とは言わない迄も、普段は「平凡」な一般人と捉えられている人達もが、恐怖によって凶暴さを見せて行く過程の記述は、「然もありなん。」という感じだ。
「スプラッター・ムーヴィーを思わせる残忍な記述」は正直好きじゃないけれど、幾つも仕掛けられたどんでん返しは読み応えが在る。“結果的に”真犯人を当てはしたけれど、“彼の人物”も関わっているとは思わなかったし、“其の素性”にもすっかり騙されてしまった。
総合評価は星4つ。
大きくて、損しているように感じることがあります。
自分の年代からすると「連続殺人鬼カエル男」の蛙は、「ケロヨン」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%AD%E3%83%A8%E3%83%B3)を思い出させる物でした。タイトルと併せてコミカルな内容と思いきや、可成りシリアスな内容だったので、良い意味で驚きでした。