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S中学1年B組の担任・森口悠子はシングル・マザーとして、一人娘の愛美を育てている。愛美の父親は「世直しやんちゃ先生」としてTV番組に出演したり、本を出版したりと活躍している教師・桜宮正義。若かりし頃は荒んだ日々を送るも、世界中を放浪した事で自らの過ちを知り、「自分と同じ過ちを繰り返して欲しくない。」と教員の道を歩む事にした彼。そんな彼を心から尊敬し、大事に思っていた悠子は彼との結婚を決意するが、その直前に“或る事実”が判明した事で結婚を断念。既に愛美を身籠っていた彼女は、シングル・マザーとして生きる道を決断したのだった。
大切な存在だった愛美。保育所に4歳の彼女を預け、シルバー人材派遣センターから紹介された女性・竹中さんに迎えに行って貰い、仕事が終わる迄預かって貰うという日々を送っていたが、竹中さんが体調を崩した為、仕事を早く切り上げて自ら迎えに行く事となった。唯、職員会議が在る水曜日だけは会議が長引くと保育所が閉まる時間に間に合わなくなる為、予め16時に迎えに行き、会議が終わる迄保健室で愛美を待たせて貰う事に。そして或る水曜日、愛美は保健室から居なくなり、学校のプールに浮かんで死んでいた。
愛美の死をきっかけに、辞職を決めた悠子。その最後の日、受け持ちの1年B組の生徒を前にして、別れの挨拶を行った彼女。最初は自身の過去を語っていた彼女だったが、辞職する本当の理由を述べた事で教室内は凍り付く。
「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです。」
その発言をきっかけにして、様々な人間の人生が変わって行くのだった・・・。
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書店にチョコチョコ足を運ばれる方ならば、昨年は目立つ場所に山積みされた本「告白」を何度も目にされた事だろう。湊かなえさんが著したこの小説は、昨年度のミステリー・ランキングで上位に選ばれ、「週刊文春ミステリーベスト10」では堂々の1位となった。彼女にとってデビュー作のこの小説を、遅ればせ乍ら読破。
「聖職者」、「殉教者」、「慈愛者」、「求道者」、「信奉者」、そして「伝道者」という全6章から構成されている。第1章に据えられた「聖職者」が第29回小説推理新人賞を受賞し、雑誌「小説推理」(2007年8月号)に掲載。その後、同誌に「殉教者」(第2章)及び「慈愛者」(第3章)が掲載され、単行本化されるに当たって「求道者」、「信奉者」、そして「伝道者」が書き下ろさて第4~6章に据えられた様だ。第1章から第5章迄は、それぞれ異なる人物が様々な告白をするというスタイルで話は進み、第6章は或る人物の電話による会話という形で終わっている。
非常に評判の高い小説だけに期待度大で読み始めたのだが、第1章は正直拍子抜けだった。物書きでも無い自分がこんな事を書くのは僭越なのだが、文体に少々拙さを感じたからだ。唯、「次がどういう展開になるのだろうか?」と頁を捲らせるストーリーでは在り、この新人作家が凡庸で無い事は認識。
不満を感じた第1章だが、第2章以降はあっと言う間に読み進んでしまった。一人の少女の死を軸に、様々な人間の“心の闇”や独善性が曝け出されて行く。「自分こそが正しい。」という思い、そしてそれを他者に押し付ける様な“告白者達”に辟易とした思いを持つが、自分を含めて多くの人間は似たり寄ったりなのも事実。
「世直しやんちゃ先生」の様に特定の人物を彷彿とさせられ、思わずニヤッとしてしまう部分も在れば、「神戸連続児童殺傷事件」や「女子高生による母親毒殺未遂事件」等の実在する少年犯罪を思わせる事件を告白に盛り込む等、なかなか練られたストーリー。考えさせられる文章も少なく無く、特に或る人物が言い放った次の言葉は印象に残った。
「馬鹿ですか?ラブレターの中には、散々、馬鹿という言葉が使われていました。あなたはいったい自分を何様だと思っているのでしょう。あなたがいったい何を生み出し、あなたが馬鹿と言いながら見下す人たちに、何の恩恵を与えているというのですか?」
個人的に言えば、意外な結末では無かった。読後は爽快感と真反対の、とても嫌な思いが澱の如く心に沈澱。評価の高さは頷けるストーリー構成力だが、唯、「あれ程迄の高評価が相応しいのだろうか?」という疑問も。やや御都合主義的にも思える設定が在ったし。
総合評価は星3.5個。
S中学1年B組の担任・森口悠子はシングル・マザーとして、一人娘の愛美を育てている。愛美の父親は「世直しやんちゃ先生」としてTV番組に出演したり、本を出版したりと活躍している教師・桜宮正義。若かりし頃は荒んだ日々を送るも、世界中を放浪した事で自らの過ちを知り、「自分と同じ過ちを繰り返して欲しくない。」と教員の道を歩む事にした彼。そんな彼を心から尊敬し、大事に思っていた悠子は彼との結婚を決意するが、その直前に“或る事実”が判明した事で結婚を断念。既に愛美を身籠っていた彼女は、シングル・マザーとして生きる道を決断したのだった。
大切な存在だった愛美。保育所に4歳の彼女を預け、シルバー人材派遣センターから紹介された女性・竹中さんに迎えに行って貰い、仕事が終わる迄預かって貰うという日々を送っていたが、竹中さんが体調を崩した為、仕事を早く切り上げて自ら迎えに行く事となった。唯、職員会議が在る水曜日だけは会議が長引くと保育所が閉まる時間に間に合わなくなる為、予め16時に迎えに行き、会議が終わる迄保健室で愛美を待たせて貰う事に。そして或る水曜日、愛美は保健室から居なくなり、学校のプールに浮かんで死んでいた。
愛美の死をきっかけに、辞職を決めた悠子。その最後の日、受け持ちの1年B組の生徒を前にして、別れの挨拶を行った彼女。最初は自身の過去を語っていた彼女だったが、辞職する本当の理由を述べた事で教室内は凍り付く。
「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです。」
その発言をきっかけにして、様々な人間の人生が変わって行くのだった・・・。
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書店にチョコチョコ足を運ばれる方ならば、昨年は目立つ場所に山積みされた本「告白」を何度も目にされた事だろう。湊かなえさんが著したこの小説は、昨年度のミステリー・ランキングで上位に選ばれ、「週刊文春ミステリーベスト10」では堂々の1位となった。彼女にとってデビュー作のこの小説を、遅ればせ乍ら読破。
「聖職者」、「殉教者」、「慈愛者」、「求道者」、「信奉者」、そして「伝道者」という全6章から構成されている。第1章に据えられた「聖職者」が第29回小説推理新人賞を受賞し、雑誌「小説推理」(2007年8月号)に掲載。その後、同誌に「殉教者」(第2章)及び「慈愛者」(第3章)が掲載され、単行本化されるに当たって「求道者」、「信奉者」、そして「伝道者」が書き下ろさて第4~6章に据えられた様だ。第1章から第5章迄は、それぞれ異なる人物が様々な告白をするというスタイルで話は進み、第6章は或る人物の電話による会話という形で終わっている。
非常に評判の高い小説だけに期待度大で読み始めたのだが、第1章は正直拍子抜けだった。物書きでも無い自分がこんな事を書くのは僭越なのだが、文体に少々拙さを感じたからだ。唯、「次がどういう展開になるのだろうか?」と頁を捲らせるストーリーでは在り、この新人作家が凡庸で無い事は認識。
不満を感じた第1章だが、第2章以降はあっと言う間に読み進んでしまった。一人の少女の死を軸に、様々な人間の“心の闇”や独善性が曝け出されて行く。「自分こそが正しい。」という思い、そしてそれを他者に押し付ける様な“告白者達”に辟易とした思いを持つが、自分を含めて多くの人間は似たり寄ったりなのも事実。
「世直しやんちゃ先生」の様に特定の人物を彷彿とさせられ、思わずニヤッとしてしまう部分も在れば、「神戸連続児童殺傷事件」や「女子高生による母親毒殺未遂事件」等の実在する少年犯罪を思わせる事件を告白に盛り込む等、なかなか練られたストーリー。考えさせられる文章も少なく無く、特に或る人物が言い放った次の言葉は印象に残った。
「馬鹿ですか?ラブレターの中には、散々、馬鹿という言葉が使われていました。あなたはいったい自分を何様だと思っているのでしょう。あなたがいったい何を生み出し、あなたが馬鹿と言いながら見下す人たちに、何の恩恵を与えているというのですか?」
個人的に言えば、意外な結末では無かった。読後は爽快感と真反対の、とても嫌な思いが澱の如く心に沈澱。評価の高さは頷けるストーリー構成力だが、唯、「あれ程迄の高評価が相応しいのだろうか?」という疑問も。やや御都合主義的にも思える設定が在ったし。
総合評価は星3.5個。

古書店街を散策しつつ、ふらっと立ち寄った店で懐かしい本を見付けると、一瞬では在りますが“当時の自分が居た環境”に引き戻されますよね。「この本はどういう経路を辿って、この書棚に並んだのだろうか?」という思いを自分も抱く事が在ります。比較的新しい本が並ぶBOOKOFF等では得られない、何とも言えない感慨。
昨年のミステリー・ランキングで高評価を得ていた「山魔の如き嗤うもの」を図書館で借りて読み始めたのですが、何しろ名称(人名や地名等)が難読で、一寸読み進めては「あれ?これは何て読むんだっけなあ?」と巻頭の人物紹介に何度も戻る始末。3分の1程読んだものの疲れてしまい、結局読破する事無く返却するに到りました。
「ジョーカー・ゲーム」は内容的に惹かれる物が在り、読んでみたいと思っております。
自分も結構早読みな方ですが、マヌケ様も相当ですね。「ジョーカー・ゲーム」は表紙のデザインに、先ず目を惹かれました。マヌケ様も御薦めとの事で、是非読んで記事にしたいと思います。