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仕事にしがみ付く女刑事・高城理那(たかじょう りな)と警察を離れた男・西條輝司(さいじょう こうじ)の因縁。
幼い日に、警察沙汰で離れ離れになった渕上誠也(ふちがみ せいや)とレイ。大人になって再会した2人は、警察への復讐を誓い、其の計画を着実に遂行する。
一方、事故か他殺か判然としない警察官の連続死に、捜査本部は緊迫する。事件を追う所轄刑事の理那は、嘗て“名探偵"を呼ばれた西條の存在を気にしていた。スキャンダルで警察を去り、人生を暗転させた男。「彼だったら、どう推理するのか?」と。
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「社会の暗部を抉り出す事で、様々な問題提起をする作風。」の貫井徳郎氏。嘗ては“年間ミステリー・ランキング”で上位に入るのが常だった彼だが、此処数年は燻っている感が在る。そんな彼が5月に上梓したのが「宿命と真実の炎」で、8年前に上梓された作品「後悔と真実の色」の続編。
「久々に、貫井氏らしい作品。」というのが、読み終えての感想。「偶然性に頼り過ぎた設定。」という思いが無いでも無いけれど、魅力的なストーリー展開が、そんなマイナスな思いを消し去る。
「警察官の連続死は、偶然の事なのか?」、「偶然では無く、連続殺人事件ならば、犯人の動機は何なのか?」等、様々な疑問を元に自分形の推理をし、「此の人物が犯人だろう?」と予想したら、其の人物は既に死んでいた。頭の中が、どんどん混乱して行く。
全体の6分の5程を読み進めた時点で、意外な展開が待っている。或る人物の正体が明らかになるのだ。「そう来たか!」という驚きと、伏線の張り方の上手さに、貫井氏の“復活”を感じた。
登場人物達が、見事にキャラ立ちしている。初期の貫井作品と同じく、後味の悪さが残るけれど、読み応えは非常に在る。
総合評価は、星4.5個とする。