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「自分が死んだら遺体の口に石を入れ、火葬後に其れを回収し、或る人物に届けて欲しい。」。祖母の遺言を引き受けた高校生の木島耕平(きじま こうへい)は、届け先で風変わりな老人・林徳三郎(はやし とくさぶろう)に出会う。
奇異なる石のコレクターで在る彼は、耕平が作った“死人石(しびといし)”に喜ぶが、祖母の事は全く記憶に無いと言う。林に興味を抱いた耕平と生物教師の篠田奈緒美(しのだ なおみ)は、と或る石の捜索を依頼。同じ頃、三重県の山中で、人体の一部が埋め込まれた“童石(わらしいし)”が発掘されていた。
「祖母の遺言の意味は?」、「林が石を集める理由は?」等々、奇妙な石を巡る多くの謎。そして其れ等の謎が解けた時、時空を超えた物語が・・・。
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第11回(2012年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で優秀賞を受賞した小説「童石をめぐる奇妙な物語」(著者:深津十一氏)は、数々の奇異な石に纏わる話。上記した「死人石」や「童石」の他にも、「魚石」、「赤子石」、「仮名石」、「白夢石」、「香玉」等、奇妙きてれつな名称&存在の石が登場する。「石」をテーマにした作品と言えば、拾った石を売る男を描いた映画「無能の人」を思い浮かべてしまうのだが、実に不思議なストーリーだ。
「死んだ祖母の口を抉じ開け、含み綿を取り除いた上で、喉奥に石を落とし込むシーン。」や「骨壺を開け、部分的に骨を押し崩し乍ら、石を捜して回収するシーン。」なんぞは、想像するだけで不気味だが、暗さを感じさせないライトなタッチにより、「どういう展開になって行くんだろう?」と、読者を話の中に吸い込んで行く。
全体を通してコミカルさを感じる文章で、78歳という林の乗りは、其の代表例と言って良い。捉え処の無い惚けたキャラクターで、ボケっ振りや毒舌は「海堂尊氏が作り上げたキャラクター『白鳥圭輔』。」、又は「ねちっこい相手弄りの中に、強烈な悪意を感じる事が在る萩本欽一氏。」と重なってしまう。
「最初から一貫して競馬の話をしていたと思ったら、最後の方で唐突に野球の話がちょこっと挟み込まれ、再び競馬の話に戻る。」、そんな感じの違和感が正直在った。「同じスポーツの話なのだけれど、唐突過ぎるなあ。」という感じだが、読み終えてみると其の違和感が無くなっているのだから、まんまと著者の掌中で踊らされてしまった訳だ。
面白い作品では在るが、「其れだけしか無い。」という感じも。総合評価は、星3つとする。