**********************************「健康増進モデル事業」
或る日、30代前半で独身の木佐誠一(きさ せいいち)の下に、厚生労働省 医療健康室から封書が届く。同省の第3種特別企画・健康優良成人策定委員会が、「日本国民の中から無作為に3名を選び、半年間、健康を追求して貰う事で、健康の大切さや素晴らしさを理解して貰う。」というモデル事業が立案され、其の3人の内の1人に誠一が選ばれたのだとか。怪しさを感じ乍らも、参加する事にした誠一。“様々な手段”により、彼は健康になって行ったが・・・。
「緑剥樹の下で」
内戦が続くアフリカの「ノルガ共和国」で、流れ者の日本人医師“セイ”は、原因不明の熱病と立ち向かう事になるが、同地には或る迷信を信じて疑わない人が多く・・・。
「ガンコロリン」
「遂に、癌の予防薬が完成した!」と思ったら・・・。夢の新薬開発を巡る大騒動の顛末は?
「被災地の空へ」
東北地方で大地震が発生。極北救命救急センターの速水晃一(はやみ こういち)は、看護師の五條郁美(ごじょう いくみ)等と共に、DMAT(災害派遣医療チーム)として派遣される事に。
「支払得る金銭の額によって、受けられる“医療の質”が明確に異なる。」という近未来の世界。病院は最上級のランク「A」から最低の「C」迄に分けられているが、医療の質の違いとは何なのか?
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海堂尊氏の「ガンコロリン」は、上記5つの短編小説で構成されている。何れも「近未来の世界」を舞台としているが、「今の日本」でも起こり得そうな“気持ち悪さ”が在ったりもする。
海堂作品と言えば、「医療現場の現状や問題点」をシニカルな描写にて指摘するのが魅力の1つだが、此の短編集ではそういった色合いが薄い様に感じるし、登場人物達も余り魅力的では無いのが残念。
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「まんず、若い頃はわだば先生とよく似てたからわかるけんど、救急医として命を引き戻すのも、医者として死者を看取るのも、コインの裏表だべ。片方だけできるヤツなんていないべさ。」 (「被災地の空へ」より)
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「被災地の空へ」はストーリーの中に引き込まれたけれど、其の他の作品は面白さを感じ得なかった。総合評価は、星2.5個。