梵字は広くブラーフミー系文字に属する文字体系を指すが、俗に悉曇文字を指すこともある。
悉曇はサンスクリット siddhaṃ の漢字音写である。肆曇、悉談、悉檀、悉旦、七旦などの表記も行われる。この語は「成就する」という意味の動詞語幹 sidh の過去分詞 siddha が名詞化したもので、「完成したもの」「成就したもの」を意味する。法隆寺に残る貝葉サンスクリット写本の一葉には、“siddhaṃ” の表題で字母の一覧が記されており、 siddhaṃ の語がこの文字体系の字母表や、この文字体系そのものを指していたことが知られる。
インドではシッダマートリカー siddhamātṛkā(siddha 完成された mātṛkā 文字)の呼称が用いられた。言語のすべての音韻を表せる完備した文字体系であることを意味したのであろう。
「悉曇」が「吉祥を成就する」の意であるとか、「万徳の仏果を成就する」の意であるとか説かれることがある。
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