流行は不易流行という。蕉風俳諧の理念で、俳諧芸術における流行の本質をとらえた。流行を、はやる とよめば、それは流行現象、はやり、すたりのことになる。流行語大賞という流行語の捉え方もある。漢語の流行を言葉の現象に、そのいずれを理解するか。漢語の語彙には漢文漢字の借用語にあるもので、それを日本語にしたものが多い。しかしその殆どにおいて漢籍の出典にある漢語語彙としての用法が日本における解釈になる。それは古代においてそうであったか、古代から中、近世に至るまでに、そうであったか。漢語の典籍を入れて、それは内典、外典ともに、学ぶ間に過程があるものである。ここに漢語の流行を考え合わせると、仏教経典の漢語訳に内典があり、漢語そのもは外典にあったことになる。仏教の愛と、儒教の愛と、不易なるものは、いずれであるか。日本語になった漢語の流行は経典によるものである。
忖度を仏教用語で説こうとする。それは後代の流行にあったが、現代の用法は、忖度社会、忖度政治となって流行した。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
不易流行
ふえきりゅうこう
俳諧の理念。松尾芭蕉が元禄2 (1689) 年冬頃から説き始めたという。一般には句の姿の問題として解され,趣向,表現に新奇な点がなく新古を超越した落ち着きのあるものが不易,そのときどきの風尚に従って斬新さを発揮したものが流行と説かれる。しかしまた,俳諧は新しみをもって生命とするから,常にその新しみを求めて変化を重ねていく流行性こそ俳諧の不易の本質であり,不易は俳諧の実現すべき価値の永遠性,流行はその実践における不断の変貌を意味するとも説かれる。
世界大百科事典 第2版の解説
ふえきりゅうこう【不易流行】
俳諧用語。蕉風俳諧の理論。不易と流行という相反する概念を結合することによって,つねに新しい俳諧美の創出を心がけつつ,なお和歌の一体としての風尚を保たなければならない,俳文学の内部矛盾を克服するために案出された俳理論と考えられるが,蕉門内部においても理解が一致していたとは言いがたい。向井去来(きよらい)は〈蕉門に千歳不易の句,一時流行の句と云ふ有り。是を二つに分けて教へ給へる。其の元は一つ也〉(《去来抄》)と説き,貞門・談林以来の風体に一貫した正風性を認める歴史的立場に立ち,服部土芳(とほう)は〈師の風雅に万代不易有り,一時の変化有り。
デジタル大辞泉の解説
ふえき‐りゅうこう〔‐リウカウ〕【不易流行】
蕉風俳諧の理念の一。新しみを求めて変化していく流行性が実は俳諧の不易の本質であり、不易と流行とは根元において結合すべきであるとするもの。
大辞林 第三版の解説
ふえきりゅうこう【不易流行】
蕉風俳諧の理念の一。俳諧の特質は新しみにあり、その新しみを求めて変化を重ねていく「流行」性こそ「不易」の本質であるということ。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
内典・外典
ないてんげてん
仏教の立場からみて、仏教の典籍、仏典を内典といい、仏教以外の典籍たる外典に対比せしめる。たとえば『大唐内典録』。仏教と非仏教を内・外で分ける考え方は一般的で、たとえば仏教の学問を内明(ないみょう)といい、仏教の凡夫(ぼんぶ)を内凡といって外凡(げぼん)と区別する。また、仏教以外の宗教・思想を外道(げどう)ともいう。ただし、中国では儒家が仏典を外典とよぶ例もある。[奈良康明]