要素に分けると、音韻論に音素、形態論に形態素となる。音韻は音声科学と、形態は文法論とそれぞれに分ける。分節言語を見て、音素と記号素に分けるとらえ方がある。辞書に照らして記号素は語そのものとなるが、形態も同様に語となると、それぞれに、記号論統語論意味論、品詞論構文論という分野で議論される。文法立場を超えることは議論を不毛にすることになることではあるが、語彙論の語素、語彙素という捉え方は、意味論の意義素にも波及して、語の捉え方に議論を起こしている。
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hellog~英語史ブログ
#1357. lexeme (語彙素)とは何か?[lexeme][terminology][semantics][morphology][word][idiom][word][morpheme]
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lexeme に迫るにはいくつかのアプローチがある.
(1) morpheme (形態素)や word (語)と比較される形式の単位として.morpheme の定義は,「#886. 形態素にまつわる通時的な問題」 ([2011-09-30-1]) で触れたように,決定版はないが,Bloomfield の古典的な定義によれば "a linguistic form which bears no partial phonetic-semantic resemblance to any other form" (Section 10.2) である.word の定義は,##910,911,912,921,922 で取り上げたように,さらに難しい.だが,いずれも意味を有する形式的な単位であることには違いない.lexeme も同様に形式の単位である.その形式には意味も付随しているが,lexeme はあくまでその形式と意味の融合体である記号のうちの形式の部分を指す.では,morpheme, word, lexeme のあいだの違いはどこにあるのか.例えば,understand は1語だが,2つの形態素 under- と -stand から成るといえる.しかし,その語の意味は2つの形態素の意味の和にはなっておらず,意味上は全体として1つの塊と見なさざるを得ない.ここでは,形式の単位と意味の単位とがきれいに対応していないということになる.同様に,put up with というイディオムは,3形態素かつ3語から成っているが,意味の単位としてはやはり1つの塊である.ここでも,形式の単位と意味の単位とが食い違っている.そこで,understand も put up with も分解できない1つの意味をもつのだから,形式的にも対応する1つの単位を設定するのが妥当ではないかという考え方が生じる.これが lexeme である.今や UNDERSTAND や PUT UP WITH は,それぞれ1つの lexeme として参照することができるようになった(lexeme は大文字で表記するのが慣例).
(2) 1つの語類のみに属する基底形として.water には名詞と動詞がある.つまり,同じ語ではあるが,異なる2つの語類に属していることになる.名詞としての water と動詞としての water を別扱いすることができるように,word とは異なる lexeme という単位を立てると便利である.単数形 water や複数形 waters は 名詞 lexeme としての WATER の実現形であり,原形 water,三単現形 waters,過去形 watered,-ing 形 watering などは動詞 lexeme としての WATER の実現形である.
(3) 実現される異なる語形をまとめあげるための代表形として.go, goes, went, going, going はそれぞれ形態こそ異なるが,基底にある lexeme は GO である.この観点からの lexeme は,headword, citation form, lemma などと呼び替えることも可能である.
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語彙素
2014-09-30 08:56:58 | 語と語彙