「TOHO映画祭」 今週はいわゆるベトナムもの「ディアハンター」
ベトナム戦争を題材とした映画って約80本位あるんですが、秀作ないし傑作と言うと10本あるでしょうか。
有名なところでいえば
「地獄の黙示録」(1979)
「ランボー」(1982)
「バーディ」(1984)
「プラトーン」(1986)
「グットモーニング,ベトナム」(1987)
「フルメタルジャケット」(1987)小生コレ結構好きです。
などなどありますが、主に二つのカテゴリーに分けられると思います。
まず①戦場そのものを真正面から描く、F・コッポラの「地獄の黙示録」や、O・ストーンの「プラトーン」などの作品対して、②戦争から帰ってきた若者たちの悲劇性を描く作品群も結構ありますよね。
上記に紹介したS・スタローンの「ランボー」やA・パーカーの「バーディ」などがそのカテゴリーに入るでしょう。
んで、今日紹介するマイケル・チミノ監督の代表作「ディアハンター」(1978)は、②後者のカテゴリーに入る、まさに最高傑作と言えるでしょう。
3時間を超える大作で、第51回アカデミー作品賞など様々な賞を受賞しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/79/79da7799a97c7fc4671cb723ef1400dc.jpg)
あらゆる名作に出演している、華々しいキャリアを持つロバート・デ・ニーロや、クリストファー・ウォーケンにとっても代表作といえると思います。
その他、メリル・ストリープやジョン・カザール、ジョン・サべージなどそうそうたるキャストなんですが、みんな雷にうたれたかのごとくの名演技。
しかし「ゴッドファーザー」シリーズでもそうなんですが、小心者のダメ男を演じさせたらジョン・カザールの右に出る者はいないですね。
ま、元々名役者たちなんですけどね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/95/f2e0ff4bf723e2daba66ccaf6d4a92c2.jpg)
(戦争へ行く前のニック(C・ウォーケン)右:は明るい青年)
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さて、舞台はペンシルバニア州のロシア系移民が多く住む小都市クレアトン。メイン産業の製鉄所で働く、マイケル(R・デ・ニーロ)、ニック(C・ウォーケン)、スティーブン(J・サべージ)、スタン(J・カザール)、アクセル、ジョンは仕事帰りにバーでビールを飲みながらビリヤードに興じたり、鹿狩りに一緒に行く仲の良い若者たち。
バーへ行く若者たち
映画前半では、製鉄所からバーでビールを飲むシーン、ステーブンの結婚披露宴、鹿狩りのシーンなどかなりの長回しの撮影タッチで1時間半近く時間を使い、彼らの日常生活をじっくりと描いていきます。
特に結婚披露宴のシーンはマイケル、ニック、スティーブンのベトナム出征祝いをも兼ねるという設定で、特に長時間のシーンとなっていますが、明るいダンスシーン、若者たちの恋や友情の語らいを丁寧に描くことによって、後半の悲劇性がより強調される仕掛けになってるわけ。長すぎるという批判もありましたが、小生は個人的にはそうは思いません。
バーや披露宴でのヒット曲「君の瞳に恋してる」や鹿狩りでの「ロシア正教会ミサ曲」などが効果的に使われ印象的です。
明るい未来を疑わない若者たち
さて、後半一気に煙とヘリコプター音ひびくベトナムへ。
マイケル、ニック、スティーブンは偶然戦場で一緒になるんですがすぐにベトコンの捕虜に
(戦場で活躍するマイケル)
でここの捕虜収容所で、彼らは「賭博」の対象として「ロシアンルーレット」をやらされるわけ。
それでも、マイケルは強靭な精神力は発揮。
ニックやスティーブンを励まし続けます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/2b/92be40a0d97b1340764bf850600154d2.jpg)
ニックも心が壊れかけていきます。スティーブンは廃人状態に。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/82/ee738b1b08d1c0bcecb2a1207bf8aa00.jpg)
そして、マイケルに気転により3人は何とか脱出するものの、離ればなれになってしまいます。
ここで、ちょっとだけベトナムでの様子が描かれるんですが、彼らの心のよりどころは故郷のこと。
ニック、マイケル共に恋心を抱く故郷のリンダ(M・ストリープ)の白黒写真を財布に忍ばせているんです。
このころのM・ストリープはきれいですね。
ちなみにR・デ・ニーロとは再び「恋におちて」で共演します。
メリル・ストリープ
スティーブンは下半身不自由者となり、ニックは精神病院から行方不明。
単身、マイケルだけ帰郷するんですが強靭な精神力を持つ明るいマイケルも、人を避ける内向きな性格へ。
せっかく、故郷の仲間が「ベトナムの英雄帰還パーティ」を企画するのを知っていながら、隠れるようにこそこそと戻ってきます。
再び、仲間たちと鹿狩りやバーでの談笑をしてしばらく生活しているのですが昔とは違いどこか影があります。
リンダとマイケル
そして、車椅子生活をしているスティーブンのもとへ、ベトナムのニックからお金が送金されていることを知り、マイケルは単身サイゴンへ。
陥落寸前のサイゴンで「ロシアンルーレット」の選手になっているニックを発見。
しかし、ニックは全く廃人となり、記憶喪失状態に。
マイケルはニックと話をするため、自らロシアンルーレットの選手を買って出て、何とか説得を試みるのですが・・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/3e/9e9d910bf8a0fc6a4260cea98de351bc.jpg)
もうね、ここからラストシーンまで涙なくしては見られません。
ラストシーン
さて、この映画では「ロシアンルーレット」をやるシーンがたびたび出てくるんですが、もう何回見てみてもおっかなくてハラハラします。
で、この「ロシアンルーレット」をベトコン兵は捕虜に強要した事実はなく、ベトナム人への差別だという批判があります。
しかし、ここでは戦場での極限の体験がどれだけ人間の精神を破壊するかの象徴として「ロシアンルーレット」という手法が使われているのであり、従ってそういう意味では厳密にいえば「ベトナム戦争」映画ですらありません。
映画では一度も、「祖国やベトナム戦争自体へのへの批判、懐疑」は語られません。
それどころか、ラストシーンでは全員が「God Bless America(アメリカに主の祝福あれ)」を唄います。普通のハリウッド映画ならこの歌が出たら「アメリカ万歳!」で盛り上がるでしょう。
しかし この歌がなんとも空しくひびくんですよねぇ。
それが、他のハリウッドの「アメリカ万歳映画!」と一線を画した味わい深い所以となっているわけです。
ベトナム戦争を題材とした映画って約80本位あるんですが、秀作ないし傑作と言うと10本あるでしょうか。
有名なところでいえば
「地獄の黙示録」(1979)
「ランボー」(1982)
「バーディ」(1984)
「プラトーン」(1986)
「グットモーニング,ベトナム」(1987)
「フルメタルジャケット」(1987)小生コレ結構好きです。
などなどありますが、主に二つのカテゴリーに分けられると思います。
まず①戦場そのものを真正面から描く、F・コッポラの「地獄の黙示録」や、O・ストーンの「プラトーン」などの作品対して、②戦争から帰ってきた若者たちの悲劇性を描く作品群も結構ありますよね。
上記に紹介したS・スタローンの「ランボー」やA・パーカーの「バーディ」などがそのカテゴリーに入るでしょう。
んで、今日紹介するマイケル・チミノ監督の代表作「ディアハンター」(1978)は、②後者のカテゴリーに入る、まさに最高傑作と言えるでしょう。
3時間を超える大作で、第51回アカデミー作品賞など様々な賞を受賞しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/79/79da7799a97c7fc4671cb723ef1400dc.jpg)
あらゆる名作に出演している、華々しいキャリアを持つロバート・デ・ニーロや、クリストファー・ウォーケンにとっても代表作といえると思います。
その他、メリル・ストリープやジョン・カザール、ジョン・サべージなどそうそうたるキャストなんですが、みんな雷にうたれたかのごとくの名演技。
しかし「ゴッドファーザー」シリーズでもそうなんですが、小心者のダメ男を演じさせたらジョン・カザールの右に出る者はいないですね。
ま、元々名役者たちなんですけどね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/95/f2e0ff4bf723e2daba66ccaf6d4a92c2.jpg)
(戦争へ行く前のニック(C・ウォーケン)右:は明るい青年)
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さて、舞台はペンシルバニア州のロシア系移民が多く住む小都市クレアトン。メイン産業の製鉄所で働く、マイケル(R・デ・ニーロ)、ニック(C・ウォーケン)、スティーブン(J・サべージ)、スタン(J・カザール)、アクセル、ジョンは仕事帰りにバーでビールを飲みながらビリヤードに興じたり、鹿狩りに一緒に行く仲の良い若者たち。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/94/8bc91a8dff640adff4c493faaa4d5812.jpg)
映画前半では、製鉄所からバーでビールを飲むシーン、ステーブンの結婚披露宴、鹿狩りのシーンなどかなりの長回しの撮影タッチで1時間半近く時間を使い、彼らの日常生活をじっくりと描いていきます。
特に結婚披露宴のシーンはマイケル、ニック、スティーブンのベトナム出征祝いをも兼ねるという設定で、特に長時間のシーンとなっていますが、明るいダンスシーン、若者たちの恋や友情の語らいを丁寧に描くことによって、後半の悲劇性がより強調される仕掛けになってるわけ。長すぎるという批判もありましたが、小生は個人的にはそうは思いません。
バーや披露宴でのヒット曲「君の瞳に恋してる」や鹿狩りでの「ロシア正教会ミサ曲」などが効果的に使われ印象的です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/5a/76f79c74484ec265baf78f791b2731ef.jpg)
さて、後半一気に煙とヘリコプター音ひびくベトナムへ。
マイケル、ニック、スティーブンは偶然戦場で一緒になるんですがすぐにベトコンの捕虜に
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/3c/d77a770b35202dab238633d3ea35225b.jpg)
でここの捕虜収容所で、彼らは「賭博」の対象として「ロシアンルーレット」をやらされるわけ。
それでも、マイケルは強靭な精神力は発揮。
ニックやスティーブンを励まし続けます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/2b/92be40a0d97b1340764bf850600154d2.jpg)
ニックも心が壊れかけていきます。スティーブンは廃人状態に。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/82/ee738b1b08d1c0bcecb2a1207bf8aa00.jpg)
そして、マイケルに気転により3人は何とか脱出するものの、離ればなれになってしまいます。
ここで、ちょっとだけベトナムでの様子が描かれるんですが、彼らの心のよりどころは故郷のこと。
ニック、マイケル共に恋心を抱く故郷のリンダ(M・ストリープ)の白黒写真を財布に忍ばせているんです。
このころのM・ストリープはきれいですね。
ちなみにR・デ・ニーロとは再び「恋におちて」で共演します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/87/1386fc04002116a33d7ed414f11c6924.jpg)
スティーブンは下半身不自由者となり、ニックは精神病院から行方不明。
単身、マイケルだけ帰郷するんですが強靭な精神力を持つ明るいマイケルも、人を避ける内向きな性格へ。
せっかく、故郷の仲間が「ベトナムの英雄帰還パーティ」を企画するのを知っていながら、隠れるようにこそこそと戻ってきます。
再び、仲間たちと鹿狩りやバーでの談笑をしてしばらく生活しているのですが昔とは違いどこか影があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/83/8a3447a947c16261049e2e9ab8f09871.jpg)
そして、車椅子生活をしているスティーブンのもとへ、ベトナムのニックからお金が送金されていることを知り、マイケルは単身サイゴンへ。
陥落寸前のサイゴンで「ロシアンルーレット」の選手になっているニックを発見。
しかし、ニックは全く廃人となり、記憶喪失状態に。
マイケルはニックと話をするため、自らロシアンルーレットの選手を買って出て、何とか説得を試みるのですが・・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/3e/9e9d910bf8a0fc6a4260cea98de351bc.jpg)
もうね、ここからラストシーンまで涙なくしては見られません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/25/73018b337418b12f973048d71acdee31.jpg)
さて、この映画では「ロシアンルーレット」をやるシーンがたびたび出てくるんですが、もう何回見てみてもおっかなくてハラハラします。
で、この「ロシアンルーレット」をベトコン兵は捕虜に強要した事実はなく、ベトナム人への差別だという批判があります。
しかし、ここでは戦場での極限の体験がどれだけ人間の精神を破壊するかの象徴として「ロシアンルーレット」という手法が使われているのであり、従ってそういう意味では厳密にいえば「ベトナム戦争」映画ですらありません。
映画では一度も、「祖国やベトナム戦争自体へのへの批判、懐疑」は語られません。
それどころか、ラストシーンでは全員が「God Bless America(アメリカに主の祝福あれ)」を唄います。普通のハリウッド映画ならこの歌が出たら「アメリカ万歳!」で盛り上がるでしょう。
しかし この歌がなんとも空しくひびくんですよねぇ。
それが、他のハリウッドの「アメリカ万歳映画!」と一線を画した味わい深い所以となっているわけです。