はんなり、万華鏡

京都を中心とした旅行記や文化についてあれこれ。

花街ドラマ

2007-11-26 21:26:59 | 花街関連テレビ映画
元芸妓の岩崎究香さんの自伝本を原作にして、一部の内容を創作したドラマが放送されました。
私は一応自伝の本と、自伝を原作とした漫画も読みました。
漫画の方は「はいからさんが通る」や「あさきゆめみし」の大和和紀さんが描かれました。

ドラマは二時間枠ということでかなり展開が早く、作りは非常に荒かったですね。

まず、このドラマの主人公となった方について。
主人公の芸妓さんは、零落した旧家の血筋で末っ子として生まれました。
子沢山だった事から、年の離れた何人かの姉達は京都の花柳界、祇園甲部のとある置屋に舞妓や女衆さんとして奉公に出されていました。
その関係でまた幼児だった彼女は、置屋の女将に見込まれて跡継ぎとして祇園の置屋に引き取られます。
舞妓としての修行をし、祇園の有力者の後見のもと舞妓としてデビューするも、彼女の人気に嫉妬する芸妓や舞妓達から様々な嫌がらせを受け、彼女が養女になった事で跡継ぎの座を追われた実姉の芸妓からもひどい苛めを受けます。
(芸妓の実姉は親子ほどの年が離れていて、置屋の跡継ぎとされていたのに舞妓を引退して結婚し、離婚後出戻った)
苦難にめげずに舞妓としてトップになり、妻子持ちの人気俳優と激しい恋をし、芸妓として世界の様々なVIPを相手におもてなししたり、花街の古い慣習やフジヤマゲイシャ的なイメージを変えようと努力するも、29歳で芸妓を引退して、今は執筆や講演活動をしながらマスコミにも登場されているので、舞妓や花街好きの方にはお馴染みの方です。

自伝本とはいうものの、内容的は暴露本という見方もされていたり、祇園関係者からも色々と言われているようです(^_^;)
お付き合いをされていた俳優との話があるから余計にね…
その俳優さんについてはご存じの方が多いと思いますが、故勝○太郎さんです。

舞妓オタク(^_^)の私としてのドラマの感想と突っ込みを。

まず、結局何を言いたいのか分らないストーリー。
恋愛についても中途半端な描き方だし、筆者が本の中で何度も主張していた、芸舞妓の性的イメージや、芸舞妓や花街の裏方さんの待遇改善、引退した芸舞妓が自活していけるように花街の学校を出れば高卒資格が取得出来るようにするとか、舞や邦楽などの師範になれるようにするなど、筆者が祇園関係者に対して様々な改革を提案(祇園の体質を結局変える事は出来なかったようです)をしてきたエピソードは殆ど描かれていませんでした。

ドラマはとにかく主人公が受ける激しく理不尽な苛めと女の醜い争いばかり。
目上の人間に対しての口のきき方は態度もひどい。
花街では上の立場の人間に対しては逆らえません。いくら年が自分より下だろうと、売れっ子であっても。
年が違っていても早く出て方が姉さんなので、一日の差だけでも上下関係があります。
あれでは売れてればなんでも許される、みたいです。お金を金庫から掴んで持って行くシーンもひどい。
実際の花街がああだと誤解されないとも限らないです。
もちろんドラマでは時代設定が昭和40年代なので現代とも違うし、売れっ子にたいして強く言えないというのはあると思うんですが、目上の者だからこそ、逆らう事が出来なくて甘んじて嫌がらせを受けなければならなかったという筆者の苦労話はどこかへ行ってしまってますね。
いくら限られた時間内におさめなくてはならないにしても、原作の意図が全く理解出来ない構成でした。
そして、衣装と鬘がひどい。
衣装はいかにもテレビや映画の衣装部にある安っぽい舞妓風着物。
着付けもひどかったですね~。
舞妓の着付にしては襟の抜き方が浅過ぎる上、だらりの帯の位置が低過ぎてみっともない。
一般的には舞妓さんは、大きく襟を抜いて着物を着て、帯は背中のかなり上の方で結ぶので、着物の背中の身頃は殆ど見えません。
だらりの帯のボリュームもなく長さも短かったし、あそこまで帯の位置が低いということは、多分作り帯なのでしょう。
舞妓の刺繍襟や衣装と簪の組み合わせも適当に合わせた感じでした。

鬘も、舞妓の時のも芸妓の時のも、形が変だし顔に合わせて結ってないからバランス悪かったです。
舞妓は七分鬘を使って地毛で結っているように見せてますが、京都の変身舞妓店で良く使ってるのと同じようなタイプのものですね。
シャープな感じの江戸鬢でもなく、丸みのある京鬢でもない。
凄く中途半端な鬢の形でした。しかもかなり左右不対称(‐o-;)
芸妓の鬘は、顔に合ってないからとにかく小さくて不格好でしたね。
カツラ師さんが顔に合わせて結ってあげれば見られるのに。

黒髪という舞らしきものを舞っているシーンがありましたが、女優さんの目が逝っちゃってましたね~(-.-;)
舞のシーンは多分筆者の方が指導されたとは思うのですが…

あと、私が一番ひどいと思ったのは、褄の持ち方。
一応左手で褄を持ってはいましたが、皆全て持ち方間違っているので褄が右側を向いています。
所作指導担当の人がちゃんと指導しなかったのか、左褄をとる意味が分かっていないのと思われます…
裾を引くお着物を着る場合、お嫁さんと娼妓は右褄をとりますが、芸しか売らない芸妓は男の人が着物に手を入れられないよう左褄をとると言われています。
あのドラマでは、ただ単に左手で褄を持っただけで、右側を向いていては手が入ってしまう持ち方ですね。意味ありません。
籠の持ち方も芸妓さんの持ち方ではないですね。

花街を描いたドラマって、大体この手のパターンが多いのですよね。
いつも鬘も着物も所作も変。
元芸妓さんの自伝を原作にしているのなら、そういう所はちゃんとしてると思ったのですけどね~。
衣装や鬘、所作とか、岩崎さんは監修されなかったのか、制作サイドへは口出し出来なかったのでしょうか。


岩崎究香さんの本に関しては、様々な評価がある訳で、私自身複雑な感想を持っていますが、祇園や舞妓さんの事がどう描かれるのか楽しみにしていたのですが、凄く残念なドラマでした。

同じ自伝本を原作にした、大和和紀さんが描いた漫画は、多少の突っ込みがあるものの、とても楽しく読んでいました。
日本髪や衣装、簪についても柄やデザインも、やはり突っ込みどころはありますが、しっかり描かれていましたしね。
日本髪をちゃんと描けない漫画家さんて多いですし…
こちらは登場人物の個人名などは全て創作で、実際の岩崎さんとは違う展開の結末を迎えましたが、漫画としての出来は非常に良い作品です。
こちらはお勧めですね~。舞妓さんが可愛いし華やかです。


自伝本は引っ越しの時にどこかにし舞い込んで見つかりません。
後で探して久しぶりに読み直そうと思います。

はんなり Geisha Modern を見て

2007-11-26 00:47:21 | 花街関連テレビ映画
先日、ドキュメンタリー映画「はんなり Geisha Modern」を見てきました。
六本木ヒルズでの特別上映会で、映画に協力した企業や団体関係者や外国人の方が沢山来ていらした他、若い人も多かったです。

ロサンゼルスに拠点をおく曽原三友紀監督は元アナウンサーで、現在ハリウッドなどで日本文化のアドバイスや映画舞台のプロデュースなどをされていて、日本の芸者役などでハリウッド映画に出演するなど女優としても活動されています。
ハリウッド映画や小説などで描かれる「ゲイシャ」に対して、日本人としてとても残念に思っていたそうです。
役作りの為に東京の芸者さんや京都の芸舞妓さんと接して、彼女らの芸への精進やおもてなしの精神を映像にして表現するのに今回の映画を作られたとか。
確かに、ハリウッド映画や外国でのゲイシャの描かれ方はひどいものだし、ハリウッド映画「SAYURI」は原作はちゃんとしてるのに、映画は…姿でさえ本物の芸舞妓とはまったく違うモノでした。
私は花柳界とは無関係の人間ではありますが、常々残念に思っていました。
数年前に映画制作の話を聞いてずっと公開を楽しみにしていました。

映画は京都と六つある花街のお茶屋の女将や芸妓さんなどが、花街や芸舞妓に関する様々な思いや想い出話を語ったり、芸舞妓が着用する着物を染める職人さんなどのインタビュー、お茶屋での芸舞妓のおもてなし、舞妓のお店出しと襟替え、衣装の着付けや日本髪の髪結いのシーン、などが中心です。

上七軒の北野をどりの映像や舞台裏、稽古を付ける花柳流のお師匠さんのインタビューはわりと長く時間を使われていて、歌舞伎の舞台裏はテレビでも紹介される事はありますが、花街のをどりの舞台裏なんてなかなか紹介される事はないですね。
祇園甲部の都をどりの映像も出ていまして、甲部の舞妓さんのお店出しの様子、美容室で髪を結う舞妓さん、化粧をする舞妓さんがそれぞれ支度をして、巽橋近くのお茶屋さんでお客様をおもてなしし、祇園小唄を舞うシーンなどがありました。
歌が好きだった芸妓さんが、舞妓になって芸妓になった後も歌う事を捨てきれずに芸妓を続けながら歌手になったエピソードも紹介されていました。

宮川町では花街の事を紹介するホームページを立ち上げた元芸妓のお茶屋の女将さんが、自分の育てた舞妓さんの中で初めて襟替えして芸妓さんになる時の思い入れや襟替えの様子などの紹介がありました。

先斗町では芸妓さんが汗まみれになりながら踊りの稽古をする様子などがあったり、嶋原では太夫さんがかむろを従えて道中する姿や、客の品定めをする「かしの式」などの紹介がありました。
他に京都五花街合同公演の映像もありました。

上七軒で仕込みさんになったばかりの少女が、初めての踊りのお稽古で上手く出来なくて一人廊下の隅で肩を落として泣いていて、同期の仕込みさんや芸妓のお姉さんに慰められ励まされるシーン、祇園甲部の仕込みさんが修学旅行生に舞妓さんと誤解されたので自分はまだ舞妓さんじゃない、と答えているシーンなどが心に残りました。
この上七軒の仕込みさん、彼女が舞妓さんになってから一度だけお会いした事あるんですよね。実は。今はもう芸妓さんになられました。
祇園甲部の仕込みさんも、やはり舞妓さんになってから多分お会いした事あるかも?

残念ながら祇園東に関しては殆ど紹介がなかったです。

映像も美しく、お茶屋の女将さんや芸妓さん達の花街で生きる姿勢や芸の精神が良く表現されていたと思います。
限られた会場でしか公開しないので、もっと沢山の人に見ていただけると嬉しいのですけどね。
実はこの日、コンタクトレンズが乾いたりして調子悪くて、あまりはっきり映像を見られなかったのです。なんか視界がぼやけちゃって。
機会があればまた見に行きたいです。


映像の上映の後、映画の中でも紹介されていた、アメリカの富豪と結婚した祇園の芸妓「モルガンお雪」の姉の孫にあたるお茶屋の女将さんと、祇園甲部の芸妓さんと舞妓さんがゲストとして挨拶に出られました。
芸妓さんは黒地に赤い楓の柄の入った着物をきりりと着られ、舞妓さんは黄色の紅葉の花簪と黄色い花櫛に、簪の色が映える濃い青のお着物で、お二人とも素敵な装いでした。

今頃の季節に相応しい、紅葉の枝を手にして舞を一曲舞い、別室で芸妓さんのお茶屋のお点前と記念撮影がありました。
来場者の皆さんは大喜びでした。

この日はマスコミ向けの上映が一回、一般向けの上映が二回あって、私が見た回の後にもう一回上映がありました。
私は夕方から仕事があったのでエレベーターを降りて会場を出ようとしたら、映画のチラシを持った人と何人も擦れ違いました。
次の回を見る為に上に上がって行ったようです。
なんか人だかりが出来てるな、と思ったらビル入り口の所で芸妓さんと舞妓さんがスタッフと一緒に呼込みをされてました。
寒いのにお疲れ様です。次の回の上映も盛況だったみたいですね。
芸妓さんと舞妓さんを後にして、遅刻しそうな私は駅まで走って行くのでした。

はんなり Geisha Modern に関する以前の記事はこちら