母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

まぼろしの村

2014年03月26日 | ふるさと
高嶺に残雪
季節風強く吹くと校庭に埃舞いあがる
幼い草の芽
蕗の芽見える枯草の土手

少女らの声時折響く午後
小川の雪解け水は凍み陽の光は明るくまぶしく射し
真昼の校庭には陽炎がゆれる
蹴球の網の縁のむこうの雑木林はしずまりかえり
早春の通い道が白く長く延びていた

見上げると吸いこまれるような青い空を
野の鳥は泣き騒ぎ
綿雲はのんびりと流れてゆく
家々の石垣に小さなすみれ黄色いタンポポ

銀色の峰は四方に耀いて 
地上にはやさしき浅き春
山をわたる風の音のみ聞こえ人影少なくも
確かに時は刻まれ
はるかに遠ざかった思い出の
まぼろしの村は山間に今も眠っている
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