母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

紫紬の細帯の

2017年10月09日 | 歴史
紫紬の細い帯
ばあさまの形見の糸

大きな玉繭を煮て糸にとり
染め上げつむいでとんからり
七人の子を育てながらとんからり
逢ったことのないばあさまを
一本の細帯に偲ぶとき
秋は昔を語り出す

長火鉢の熾
長いキセルで吸う煙草
頭のてっぺんそり上げて
二百三高地の髪型に
たすきを掛けて山の家
蔵の二階でとんからり
機織りしていたその時代

時はしずかに流れ沢山の人が
長い歳月かけて育った家にもう誰も居ない
棲む人の居なくなった思い出の家に
秋は今年もやって来る
秋海棠がこぼれ咲き 
柿の実が枝に残り紅く光る秋

単衣の着物が終わると
温い紬の季節が来る
もう誰も居ない家静かな蔵
ちいさな歴史は星になる



コメント (6)
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