𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
さすらいの青春(324)
.——————————【324】————————————————
Deux barreaux de fer, comme on en voit derrière
les domaines aux volets toujours fermés des écuries,
avaient dû clore cette ouverture. Mais le temps les
avait descellés.
« Je vais entrer là, se dit l' écolier, je dormirai
dans le foin et je partirai au petit jour, sans avoir
fait peur à ces belles petites filles. »
————————————(訳)——————————————————
二つの鉄格子が、屋敷裏によくある鎧戸で閉められた
厩舎のように、入口を閉めているに違いなかった.しか
し、この時は鉄格子は外されていた.
「よし、あそこから入ってやろう」、この生徒はそう
言い聞かせた.「可愛い女の子たちに見つかることなく
ぼくはそこの秣の中で眠って、夜明けに出て行こう.」
.———————————《語句》——————————————————
barreau:(m) 格子、柵
domaine:[ドメーヌ](m) 所有地、領地、家屋敷
volet:(m) 鎧戸、シャッター
écurie:[エキュリ](f) 厩舎
avaient dû + 不定詞:(大過去3複)~はずだった
clore:(他)[文] 閉じる、閉ざす
ouverture:(f) 開くこと、開けること、入口
descellé:(p.passé) < desceller (他) 取り外す、
desceller un barreau / 窓格子を取り外す
dormirai:(未来1単) <dormir (自) 眠る
眠る=dormir ; 寝る=se coucher
眠っていなくても、横になれば「寝る」が成立.
フランス語ではちゃんと使い分けするので要注意.
foin:(m) 秣(まぐさ)、干し草;
「わら」と訳したかったが「わら」は
paille (f) なので無理があります.
partirai:(未来1単) < partir (自) 出発する、立ち去る
petit jour:(m) 夜明け、薄明かり
——————————— ≪確認≫ ————————————————
訳に100 % の自信がないときは、よく訳本で確認するの
ですが、今回も語順をいじって訳したのでチェックのた
め角川文庫「さすらいの青春」の訳文を見てみました.
すると、テキストにない訳文が増えていた.
それは:
「屋敷のうしろにあるような、厩舎のよろい戸で、
二本」の鉄柵が入口をふさいでいた.しかもそれは、
もはや古びて、こわれかかっているのであった.」
Le LIVRE de POCHE には 「しかもそれは、
もはや古びて、こわれかかっているのであった.」
という箇所はありません.
【結論】たくさんの版を重ねた本には、多少削られたり、
足されたりした箇所があるのでしょう.
——————————— ≪感想1≫ ————————————————
aux volets toujours fermés des écuries:
語順を変えないと訳せません
↓
des écuries aux volets toujours fermés
いつもは閉められている鎧戸のある厩舎
なぜdes écuries をうしろに回した?
おそらく正規の語順だと直前のderrière les domaines
にくっついてしまって、「厩舎などの建物群の裏に」
となって厩舎のさらに裏側になってしまうからでしょう.
きっと感覚的には
「いつもは閉められた鎧戸さ、厩舎のね」
——————————— ≪感想2≫ ————————————————
l'écolier:「生徒」ですがモーヌのことを言っているのは
確かです.日本人ならこんな紛らわしいことを言わず
はっきり「モーヌ」と書くところでしょう.しかし向
こうの小説は同じ名詞を繰り返したがらない.そうい
う闇のルールがあります.闇ルートじゃなく闇ルール.