駄楽器駄日記(ドラム、パーカッション)

ロッキンローラーの打楽器日記

ザ・ビートルズのレコードからドラムの進歩とリンゴさんの変化を考える(その4)

2019年06月27日 | ビートルズネタ
1964年
ザ・ビートルズという天才4人組は、ライブツアーを行いつつ、映画撮影やメディアの取材・出演など超過密スケジュールをこなした上で、曲を書いて録音するというバケモノぶりを発揮しました。
年に2枚のアルバムを発表するという契約を守りつつ、更にシングル盤やEP盤を次々と発表するという、溢れる才能の泉も枯れるんじゃないかというような過酷な状況でした。
64年の暮れに『Beatles For Sale』を発表しましたが、さすがに枯渇するのかと思いきや、65年に入るとまた新たな映画のためにレコーディングを開始します。



それが『HELP!』でした。海外ロケもあり、戻っては録音という過密スケジュールでありながら、8月にアルバムを発売すると、なんとこの出来が素晴らしいものとなりました。
タイトル曲の「Help」をはじめ、秀逸な作品群。なかでも「Yesterday」はビートルズの代表曲と言われる名曲でありながら、外部ミュージシャンのストリングスを採用してポール以外のメンバーが誰一人参加していない完全ソロという、ビートルズ史初の試みでありました。
このストリングスをはじめ、エレクトリックピアノなども随所に使用して、さらにサウンド的に充実して曲との完成度も高く素晴らしい。
ドラムセットは、この時期からサイズが一回り大きくなったようです。スネアはそのままで、BD20→22、FT14→16、TT12→13とそれぞれインチアップして、その後もホワイトアルバムぐらいまでは同じセットで録音しています。



ここでやっぱり個人的に思うことは、これなんですよね。
「アルバム全般的にリンゴのドラムトラックは早回し(ゆっくり回して録音し)てるんじゃないか説」であります。
もちろんこれは個人的意見なんですが、その結果としてドラムの音がいく分高くなっていて、更にサウンドが引き締まるわけです。「Help」しかり「The Night Before」しかり、キレキッキレですごいスピード感、カンカンキンキンと鳴るメタルのようなスネアの音、澄み切ったシンバルの音色。
リンゴさんが天才ドラマーゆえのスーパープレイと言いたいけど、でも言い切れないような違和感を持ってしまうんですね。
自分が持っている本やネット記事などいろいろ調べると、「この頃のスネアはカンカンに張っていた」というご意見が大多数ですが、だからといってテープスピード操作を一切やってないという証拠でもなく、これって単にアルバムを聴いた感想なんじゃないのと思ってしまう。
ご本人あるいはその当時を熟知した人にウラ取っているのかなあと訝ってしまう。できるならばその根拠を知りたいのであります。これが単にオレの妄想だったなら、すぐさま訂正して、へへへ。。。となるんだけど。
モチロン、自分でもチューニングしてみました。
実際に、この音になるまでスネアを張ろうとすると、現行のプラスチックヘッドで破れんばかりのパキパキ状態になります。でも悔しいかな同じスネアではないので全く同じ音はしません。
また、当時のヘッド事情はどうでしょうか。ネットで調べるとプラスチックヘッドが発明されたのが57年ぐらいとのことなので、リンゴさんもプラスチックヘッドを使っていたかと想像はしますが、動物スキンヘッドを使った時代があるとも読みました。スキンヘッドにしろ開発されたばかりのプラスチックヘッドにしろ、カンカンに張ったヘッドの耐久性はどうかという単純な疑問があります。
それとやはりあの減衰が速くキレの良すぎる音が美しすぎる。
そこでその当時、64年8月と65年8月に録音したというライブ音源、「ライブ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」でのスネアの音はどうだろう。聞いてみましょう。
2016年に出たデジタルリマスターCDで確認すると、タイトに張ってあるように聞こえますが、音自体は普通で違和感のないスネアです。レコードで聞くあの金属的なキンキンした高音ではありません。
まあ信じるか信じないかは、あなた次第ってところで。



閑話休題。
62年のレコードデビューから3年にして、5枚のアルバムを送り出し、英国から勲章まで授与されたビートルズは、既に世界の人気トップバンドとなった。
しかし一向に休むことなく次のアルバムを作成します。それが『Rubber Soul』です。なんと2か月足らずで完成させてしまったというアルバム。年に2枚という契約のためだったとのことですが、それをできてしまうことがすごい。



ここでビートルズは次の段階へ変わっていきます。ジョンはモータウン系のリズム&ブルースに傾倒し、ジョージはシタールに惚れ込み、「ノルウェイの森」で使用します。そしてインド音楽へ傾いていきます。
リズムの要としてドラムのリンゴは、そういったメンバーの難しい注文に忠実に応えていきます。リンゴさんのここが素晴らしいところで、臨機応変に自分自身を変化させて成長できる器がリンゴさんの天才と言われるゆえんナシバラハウンドッグ。
「Drive My Car」では、まるで黒人のドラムみたいな餅をつくような粘りのある重たい8ビートを聴かせます。
「Nowhere Man」でのフィルインではリンゴさん大好きなスネアのクローズドロールが心地いい。
「In My Life」ではミディアムテンポのバラードならではの絶対邪魔しない音量のオープンリムショットが最高だし、シンバルのベルとスネアの小気味いい両手打ちがたまらない。
熟練度と言いますか、完成度の高さでビートルマニアには、『Rubber Soul』が一番好きだという人も多いようです。

まだ続くぞ。
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2 コメント

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Unknown (タケシ)
2022-10-06 21:28:43
スネアが聞き取りやすいライヴで比較しよう。65年6月20日のパリ公演を聞くと、「I Wanna Be Your Man」が分かりやすいかもしれない。まるで小太鼓のような軽い音で叩いている。一方64年6月14日のメルボルン公演ではどうだろうか。「You Can't Do That」が分かりやすいだろう。先程よりやや低めのチューニングになっている。いずれにしろリンゴ・スターさんは初期にはハイ・チューニングだったようで革をアイロンで伸ばして周りの部分を切り落として使っていたなんて噂もあるくらいだ。
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Unknown (hey3)
2022-10-19 09:27:20
タケシさん
丁寧なコメントありがとうございました。
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