もう25年ほど昔のことである。
25年といえば四半世紀とも言う。なんちゅうかどえらい大昔のことだ。
当時、豊橋市または豊川市の高校を卒業した同級生を中心に、“バーバラ・アン”というバンドを組んでいた10代の若者たちがいた。
彼らはバンド・ネームのとおり、ビーチ・ボーイズやザ・ビートルズ、或いは数々のオールディーズの名曲に影響を受け、そして自分たちなりに消化してオリジナル・ソングを作っていた。
楽曲はハードなロックン・ロールやしっとりしたバラードもあるが、中身はキャッチーなメロディーにポップな歌詞と、重厚なコーラス・ワークを得意としていた。特に6声にわたるコーラスパートは、ビーチ・ボーイズを凌駕するこみいりようであり、そのパートは練習でやっと覚えたと思っても、晴れのステージでは物忘れと緊張とでまともに完成品を聞かせられないという、何ともトホホなものでもあった。
それでも当時はライブという形態で人前で演奏することも度々あった。
当時、豊川市には「かごや」という駄菓子屋があり、その隣に「かごやはうす」という小さな喫茶店兼ライブハウスがあり、その小さなハコが演奏のメインスタジアム?ちゅうかホームグランドだった。
そのハコ以外にも、豊川市のお祭りだったり、結婚式場のパーティなどで演奏していたような記憶もある。
メンバーは、後に「かごやはうす」の店長になった“ワッツ”と、後にTV「イカ天」にビートルズバンドで出演してベストヴォーカル賞を取った“アッサー”が揃ってリーダーシップを取り、曲を提供していた。
ほかのメンバーは多少出入りがあったが、仲良しの同級生で固められていたと思う。例外として、少し年上のドラマーが暫くの間ヘルプのような形で在籍していたが、そのドラマーがオレなのである。
何でも当時、「まともな8ビートが叩ける子が周りにいなかったから」という理由でオレに白羽の矢が当たったようだ。
それにしても、当時はスタジオに集まってバンド練習をした記憶があまりなく、誰それの家でのコーラス練習ばかりしていたような思い出がある。楽器演奏については、アイデアばかり先行して、みんなあまり上手ではなかった。若かったし当たり前なんだけど、自分としては必死で曲を覚えて、よりカッコ良く演奏したいと欲張っていた。
モチロン、コーラスも一生懸命覚えたが、先述のとおりパートが難しくて苦労したことを覚えている。今となってはありがたいことだが、オレはドラマーであってもコーラス要員だったのだ。
オレは暫くの間バンドメンバーとして在籍し、いくつかのライブをこなしたのだけど、ヘルプという立場だっただけに、いつだったか忘れたがバンドを抜けた。多分、後任のドラマーが見つかったのだったと思うが、それから間もなくバンドは活動を停止してしまったようだ。
それから、“バーバラ・アン”というバンドのことをろくに思い出すこともないまま、25年が経った。
今年の年頭に、アッサーから「バーバラ・アン時代のオリジナル曲を録音したい」という夢を聞かされて、「できれば夏までに実現したいね」なんて話しをしたことがあった。
そしてお盆休みの日、ワッツと一緒にアッサー宅にお邪魔して、酒を飲みつつ昔話をする機会があった。
その際、当時の“バーバラ・アン”のライブ・テープを聴かされて驚いたのが、楽曲の完成度の凄さと、当時の若い荒削りで勢いのいい演奏だった。特にオレ自身のドラムは、ヘタクソなんだけど、あれもこれもチャレンジしていて、手数の多さと攻撃的なオカズに「ひえ~、ここでこのオカズありかよ?」と、恥ずかしさと共に新鮮さと演奏に対する情熱と必死さを感じたのである。
そして、あの演奏を再現しようという計画が具体的に再び持ち上がり、昨日の金曜日、スタジオに集合して実際に動き出したのである。
写真は、スタジオのドラムセットにシンバルを入れ替えたり追加して、当時のサウンドに、現在の遊び心を追加しようといじくったもの。
左手側には小さなタムやスプラッシュシンバルをちょこっとずつ並べてみたら、何だか今までにない巨大なドラムセットになりつつある。
オレ自身は、25年前のあの攻撃的な自分のプレイをフルコピーしようと思ったのだが、試してみて無理だと知った。
自分自身のコピーなどできないのである。何故なら、幼い頃の自分に戻れないということと一緒なのだ。
できるのは、昔のリズムパターンを踏襲して演奏するということなのだが、それもムリヤリ押し込めたオカズやら当時流行ったサンバのリズムパターンをムリヤリ当て嵌めたへんてこなグルーブは、余りにも今ではダサくて演奏できない。
録音曲のリズムを固めるのには、もう少し時間がかかりそうだが、ベースが当時と同じワッツなので、さほど苦労はしないという気がしている。
今回、メンバーに当時の面子を揃えるのは難しいので、言いだしっぺの3人と、身近な現役ミュージシャンにヘルプを頼んで録音しようということになった。
となれば、どうしても手伝って貰いたくなるのが、当時にはメンバーとしては想像もできなかった楽器、サックスである。そして、サックスと言えばPOWDERの名物男“いっちゃん”である。
昨日の時点では、いっちゃんは曲を全く知らないのでいきなり録音は無理であり、とりあえず、楽曲を知ってもらうことと、ドンカマに合わせる仮歌の録音をしたのみだったが、それなりにいい練習だった。
歌入れをするアッサー氏
まだまだ先の話になるのだろうが、いずれ形が整ったら人前でのライブ演奏もしたいと思う。とても楽しみである。