はじめに
現在、ヤエヤママルバネやオキナワマルバネ等の
国産大型マルバネの飼育方法はほぼ確立されており、愛好家に広く知れ渡っています。
一方で小型種であるチャイロマルバネの飼育方法については知れ渡りが狭く
SNS等で得られる漠然とした情報を基に適合するマットを作り出すことは難しく
高額な生体と努力の結果、自分が攻略されるのは悲しいものです。
↓ 飼育方法が確立されている国産大型マルバネ(オキナワマルバネ)
↓ 国産小型マルバネ(チャイロマルバネ)
今回の記事は、チャイロマルバネ・ブルークツヤ・コツヤ・インビタビリス等の
所謂「難関種」と呼ばれるクワガタに私が使っているマット
「妄想マット(便宜上の名前)」の作り方を説明させていただきます。
↓ 妄想のマット関連記事
このマットで産卵〜羽化までを保証するものではありませんが
私のところではチャイロマルバネはもとより
インビタビリス・コツヤ・ブルークツヤなども飼育できました(汎用性)。
注)光の加減によりマットの色合いが実物とは異なって見える画像もあります
↓ 妄想マットで羽化したブルークツヤクワガタ(メス)
↓ マットが合えば飼育は楽なブルークツヤ
材料と作り方
材料:山土(基マット)・赤枯れ・水
比率:山土(基マット)約50〜70%・赤枯れ約50〜30%・水適宜
作り方:材料を混ぜる
以上、いたってシンプルです。
材料がすべて自己調達できる場合は趣味を前提に0円マット。
皮肉なことに他種飼育のほうがお金はかかります。
コバエが湧いたり、雑虫が喜ぶマットは当該種にとって分解(腐食)が浅すぎ
特定の共生酵母に頼らない系(?)の種には消化が困難・栄養価が高すぎるように思われ
「産卵しない・幼虫が育たない」というのはこの辺りが原因の一つかもしれません。
例えば「完熟マット・Nマット・カブトマット」などがそれにあたります。
これらのような分解の浅いマットをメイン(基マット)に使うのはリスクが高いように思います。
仮に、きめの細かいふるいにかけ、パウダー状にしてもにわかに腐食度合いは変わりません。
また、赤枯れのみで飼育するのも難易度は高いかもしれません。
↓ 「妄想マット」の完成! ブルークツヤ・インビタビリス・コツヤ等にも適合
↑ 温度合わせをして即日使用することもある(醗酵しない・雑虫はほぼ湧かない)
↓ pHは6.5〜7.0=弱酸性〜中性(今回はたまたま機器があったので計測)
↓ 左:山土(基マット) 右:赤枯れ追加で妄想マット
↑ 土壌系のため比重が重く、乾燥しやすいのが欠点
↓ 妄想マットで育ったインビタビリス 2021.8撮影
↓ 妄想マットで育ったコツヤクワガタ
補足:山土について(基マット)
☆採土は所有者の許可が必要です。
場所は広葉樹の群生する自然林が好ましく
松やスギなどの針葉樹林下はできるだけ避けたほうが良いと思います。
区域によっては害虫駆除のために薬剤を空中散布しているところがあり
薬品が残留している可能性もあるので注意が必要です。
私はこれまでに3か所の土(100%で)をチャイロマルバネに試し、すべて採卵可能でしたが
場所によって地質は異なるため、どこのどれが適合範囲の中央なのかは試してなんぼになります。
チャイロマルバネに適合する山土であれば
ブルークや、インビタビリスなどの他種にも適合すると実感しています。
因みに私はシイの群生する林床土(黄土色系)を主に使用しています。
↓ 海に近いシイの森
山土使用のきっかけは、数年前にマルバネ用の赤枯れを採取しているとき
ふとこんなことを思いました。
「石垣島ならこういうところを掘ったらチャマルが出てくるのかな?」
まさかその辺の山土で・・・と思いながら実際にチャイロマルバネに使ってみると
翌日には容器底部に卵らしきものが・・・
その後は産むわ産むわでびっくり仰天でした!
古くからミヤマクワガタの飼育に黒土を用いることや
チャイロマルバネの幼虫は現地林床土から発見されることは知られていましたが
経験がないため実感はなく
私にとってクワガタムシの幼虫飼育=植物由来に、鉱物が入り込む出来事でした。
この山土は太古の火山由来の赤土で、火山列島日本には普遍的に存在するわけで
目視で「赤枯れ(植物)が少し混ざる程度の鉱物」と呼んでしまいそうなものです。
使用している土の質は、沿岸部のせいか砂色交じりの色をしており
粘度は通常の赤土に比べ遥かに低く、どちらかというとサラッとした印象です。
これをふるいにかけ異物を取り除き(ふるいを通る砂粒・石はそのまま使用)
赤枯れを混ぜてインビタ・コツヤ・ブルーク等の採卵や幼虫飼育に使用しているのです。
↓ 鉱物由来(?)の層では目に見える雑虫はほぼ出てこない
↓ さらさらした砂交じりの赤土系 表層部は赤枯れ交じり
↓ 採取した土は必ずふるいにかけて異物を取り除く
ふるいを通らないものは主に葉・根・樹皮・枝・石等ですが
極まれにオサムシの成体、ムカデなどが出てきますが土を餌としている生物ではありません。
通常はその土を食べて成長していると思える昆虫類はほぼ出てきません。
つまり、多くの昆虫にとって餌として魅力がないのでしょう。
↓ マットに粒状や白くに見える異物は山土の小石(ブルークツヤ羽化)
↓ 水は汲み置き、加水はアバウト 軽く握って団子が崩れそうな程度
種によってはふるいがけを終えた基マット(山土)を加水するだけで採卵にも使います。
これまでに基マット(山土)だけでチャイロマルバネ12メスの採卵を試したところ
全ての個体で産卵が認められました(1メスの最多産卵数は126卵)
また、私の使用する基マット(山土)は粘度が低いため扱いやすく
掘出しがとても楽ですし、何より鉱物由来?なため
発酵(腐敗)することがないので毎年使いまわしが可能です。
ただし、孵化~羽化までは赤枯れを入れた「妄想マット」を使います。
理由は基マット(山土)だけの場合、若齢期の死亡率が非常に高いため
採取した場所の基マット(山土)だけでは生育に必要な栄養分が足りないのか
或いは使用している基マット(山土)自体が幼虫の餌としてはあっていないのかもしれません。
↓ チャマルは基マットだけで採卵
↓ 幼虫は、妄想マットで飼育 チャイロマルバネ
補足:山土の代替え
山土の代替えとして赤土のみでチャイロマルバネの採卵したこともあります。
実はこの時、一日あたりの産卵指数がこれまでで一番多かったのですが
粘度が高すぎて卵が取り出せず、結果として大大大失敗に終わり、最悪でした。
この他にも山土の代替えとしてホームセンターにある「赤玉土」や「黒土」なども
基マットとして試してみるのもよいかもしれません。
おそらく「難関種用」とされるマットで重量が重く感じるときは
赤玉土・黒土の含まれるものが多々あると勝手に想像しています。
赤玉土については粉砕した(レンコン栽培用)商品もあるようで
自家で粉砕する手間は省けそうです。
↓ 左:山土 右:園芸用赤玉土
↓ 乾燥に注意! 湿らすとその分深い色になる
今回記事にした妄想マットの適合性(羽化までの生存率)は
種によって多少差があること、大型は出にくいなどといったことがあり
山土の質や管理方法含め、不安定で完成度は高くないのですが
基本的な部分では外してはいないと考えており
飼育が難しいとされているサラシンツヤや、カズヒサツヤ(入手困難)などにも
通じるマットレシピではないかと思っています。
現在は、少しでも大きな個体を羽化させるべく
栄養添加という意味で、市販のマットを少量混ぜたりして様子を見ています。
↓ マットと融合しにくいペレット状の糞が妄想マットの原点
↓ 妄想マットで死亡する個体もある(チャイロマルバネ)
↓ 過去に何度も失敗したカズヒサも、妄想マットで飼育できそうな気がする
最後に
実は、この記事は長らく眠っていた下書きを起こしたものになります。
マットの素材や作り方、飼育方法についての考え方は人によって異なると思いますので
参考の一つとしてお考え下さい。
野生生物の保護に関して何らかの規制が検討されるとき
「飼育方法の確立」というのが規制の強弱に影響を与えることもあります。
全国に普遍的に存在するであろう基マット(山土)や、園芸用品の利用で
より身近で完成度の高いマットが作り出され、難関種の飼育方法が確立されることを願います。
またまた勉強させていただきましたm(_ _)m
大型を出すのにほんと難儀してます。
いつまで経っても答えにたどり着きませんが、それを楽しんでおります(笑)
ご無沙汰しています。
大型は難しいですね!
うちではチャマルの死亡率の問題がまだ残っており、その答えも出ていませんが確かにその分おもしろいです。
4月に入り、末には春のクワガタシーズン突入です。
機会があれがコルリや高山種等も一度ご一緒したいですね!
こんばんは
山土や園芸用品を利用して難関種の飼育がより身近になり、難関種と呼ばれなくなるとよいですね!
生態のよくわからない種を飼育するのは、おもしろいです!
多分、カステルナウとか大型のブルーク近縁種もこの方法で飼育可能ですね!
似たよな土マットで飼育できると思います。
腐葉成分のしみ込んだ林床土で多くは育っていると思います。