イオウマメクワガタは、限られた関係者しか入ることのできない島
東京都の硫黄島に分布するマメクワガタです。
↓ イオウマメ(2019.12 羽化確認 雌雄不明)
このマメクワガタは、 Figulus yujii Fujita,1994 として記載されましたが
2010年12月発刊の「世界のクワガタムシ大図鑑」で
台湾〜トンガ諸島〜フィリピン等に広く分布するフィッシコリスマメクワガタ
Figulus fissicollis Fairmaire,1849 と同じ種として整理されました(シノニム)
しかしながら、正解はわからないのでここでは通り名をそのままに
イオウマメクワガタとしました(以下イオウマメ)。
イオウマメが最初に市場に出たときは驚きとともに
「タカネルリ」以来の高額取引をただただ傍観するばかりでした。
そして、今年に入ってようやく予想していた底値に近づいてきたので
先週、それを入手しました。
マメクワガタとの比較
*イオウマメ=硫黄島産飼育個体6頭
*マメクワガタ=兵庫県産野外幼虫羽化個体4頭(以下マメ)
↓ 左:マメ 右:イオウマメ
↑ マメのほうが大きい
↓ 左:マメ 右:イオウマメ
↓ 左からチビクワガタ・マメ・イオウマメ
↓ 上:チビクワガタ 左:マメ 右:イオウマメ
↓ 中央の大きいのはマメ その他はイオウマメ
複眼縁取り
↓ 左:マメ 右:イオウマメ
↕ 左:マメ 右:イオウマメ ゆるやかな曲線
頭循の形は、マメは中央にかけてへこみ傾向でイオウマメは膨らみ傾向に見えました。
これが系統的なものなのか種としての特徴なのかはわかりません。
↓ 左:マメ 右:イオウマメ
体色やツヤに関しては羽化時期や活動期間の影響もありそうなので
見たままそのままとしておきます。
習性か?
マメとイオウマメを並べて撮影した時、イオウマメが動き
思うように写真が撮れませんでした。
それはどの個体も同じでした。
イオウマメは触る・振動を与えるなどすると
足・触覚を縮め固まりますが長くは続かず、しばらくすると動き出します。
一方、マメはすぐには動き出さずじっとしています。
記事中の画像でもイオウマメの足や触覚には動きが見て取れます。
このような違いは受け継がれた習性なのかもしれません。
↓ 左:マメ 右:イオウマメ
↓ イオウマメ
産卵セット
管理温度:おおよそ20〜23度
投入数 :6頭(雌雄不明)
産卵木 :広葉樹天然朽ち木
県内で採集したマメの飼育では思いのほか採卵にてこずり
産卵木の好みが結構激しいことがわかったので
イオウマメには最初から良く腐食した天然木を使いました。
↓ セットの様子(小ケース)
使用した朽ち木はもともとは白枯れで
それが更に進み発酵マットみたいな色になりかけた状態のものです。
例えるなら「産卵一番」というマットの色に近く
水分は多め、手で崩せそうな柔らかさです。
↓ マットと朽ち木の色比較 ↓部がマット「産卵一番」
↓ コルリクワガタが産みそうな腐食度合い
↓ 早々に潜っていった
↓ ふやけて腐敗気味の煮干しを食らう
↓ 撮影時の刺激で、肉を挟んだまま後ずさりする
最後に
一昨年あたりから出回り始めたイオウマメですが
未だに飼育個体の流通網は狭く
繁殖がスムーズにいかないことを推察させる状況です。
今回の産卵セットで本当に産むかどうかはわかりませんが
飼育島で、この希少な種の存続を計ります。
参考文献:
藤田宏,2010,世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.
岡島秀二・荒谷邦雄 監修,2012.
日本産コガネムシ上科標準図鑑.
株式会社学研教育出版.
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