クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

クロサワネブト

2023-03-19 13:20:43 | クロサワネブト(台湾)

はじめに

台湾のクワガタムシに関しては

書籍に加え、現地友人から頂いた資料と訪台時の経験を交えて記します。

 

台湾には以下の5種のネブトクワガタが分布しています。

タイワンネブト Aegus formosae Bates,1866

ナカネネブト(ヒメネブト)Aegus nakaneorum Ichikawa et Fujita,1986

クロサワネブト Aegus kurosawai Okajima et Ichikawa,1986

ジェンネブト Aegus jengi Huang et Chen,2016

チェリフェルネブト Aegus chelifer Macleay,1819 (移入とされる)

 (臺灣物種名録:TaiBNET

  Aegus philippinensis Dryrolle,1865 → Aegus chelifer Macleay,1819)

 

今回は台湾のネブトクワガタで最も高標高に分布するクロサワネブトの飼育を始めました。

↓ 台中県鞍馬山産野外個体1ペア

 

クロサワネブト Aegus kurosawai Okajima et Ichikawa,1986

分布:台湾全土の標高約1500〜2600mエリア 

体長:オス14.0〜23.0㎜ メス14.0〜21.0㎜

生態:クロサワネブトは、高い標高に分布する台湾特産種で

ほかに似たような種が見当たらない特徴的な種です。

成虫の出現は3~10月が最も多いとされますが、成虫の生態はよくわかっておらず

また、明かりにもほとんど飛来しないため

採集される個体のほぼ全てが材採集になります。

幼虫(成虫)は、大きな倒木の(殻斗科植物が多い)

空洞等に溜まった赤枯れや、黒っぽく土化したようなフレークから発見されます。

 

↓ 高い標高に棲息するクロサワネブト 体の周りと大アゴは茶色味がかる

 

今から22年前ほどの話になりますが

南投県松崗(sonkang)でクロサワネブトを実際に採集した時の状況はこうでした。

標高2000m付近は巨大な樹木に小雨と霧が立ち込めており、肌寒くも感じる天候でした。

日本のブナ帯のような、そうでないような独特の雰囲気を醸し出す森の中で

巨大な倒木の空洞に腕を突っ込み、溜まった赤枯れフレークをかき出すと

クロサワネブトの成虫(メス)と初齢~終齢幼虫がたくさん出てきました。

素手で洞に手を突っ込み、その中にあるものをかき出すことの気持ち悪さと

クロサワネブトとの交換です。

また、近くの苔むした巨大倒木赤枯れの硬いところからツノボソオオクワガタが

立ち枯れ(白枯れ)の上部からはモチズキとスジ、このほかセスジも採れました。

 

↓ 松崗にて(2001.5.27) 

↓ アナログ写真より(2001.5)

↓ これはナカネネブト(ヒメネブト)?ジェンネブト?(2001.5)

 

クロサワネブトは「コウザン(高山)ネブト」とか

「コガシラ(小頭)ネブト」などとも呼ばれ

生体・標本共に日本では流通が稀なせいか、珍品度は高く評価されることも多いですが

現地友人らの認識ではクロサワネブトは「普通種」の部類に入り

経験値による認識の違いが出ます。これはよくあることです。

 

↓ オスの内歯は一つ 

↓ オス腹面

↓ 特徴的で、間違う種がいない

↓ 上向きの大アゴ

↓ メス

↓ メス腹面 少し赤い

 

産卵セット

産卵セットには赤枯れフレークとマルバネのリサイクルマットを用意し

テスト的にセパレート気味にしてみました。

 

↓ マットは、赤枯れとマルバネ食べかす

↓ セパレートぎみでセット

 

野外個体と言うこともあって既に交尾済・産卵済の可能性はありますが

プリンカップ内で交尾確認後、産卵セットへ雌雄を投入しました。

また、クロサワネブトの寿命や後食の有無についても不明ですが、ゼリーも入れました。

 

↓ 2〜3分で交尾終了

↓ セット早々に潜っていく

 

あまり得意ではないネブトクワガタの飼育ですが

懐かしのクロサワネブト、産んでくれることを願います。

 

最後に

訪台時には多くの経験をさせていただき

また、頂いた台湾のクワガタムシに関する多量の資料と情報は今もなお通用するもので

朱氏・呉氏・林氏には感謝しております。 謝謝

参考文献:

久保道生,2002.「-私の見た-T.A.I.W.A.N」.LUCANUS WORLD.No.33.株式会社環境調査研究所.

李恵永著,2004.臺灣鍬形蟲(自然観察図鑑4). 新親文化事業有限公司.
 
張永仁著,2006.鍬形蟲54. 遠流出版事業股份有限公司.
 
藤田宏,2010.世界のクワガタムシ大図鑑6.むし社.
 
柴田尚樹,2023.世界のネブトクワガタ大図鑑.BE・KUWA.No.86.むし社.
 
URL : 臺灣物種名録:TaiBNET


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