キベリハムシの孵化
*タイトルに№がある記事は
「カテゴリー」から入ると飼育・観察過程等が繋がります。
先日、Kさん宅のキベリハムシが孵化したとの連絡がありました。
それは、昨年隣町で偶然発見された野外個体からの卵で
我家にも同じ由来の卵塊が沢山あり
翌日確認してみると
枝や容器の蓋、側壁に幼虫がうじゃうじゃいました。
孵化した幼虫は体長2~3ミリ程度で
よく見ないとただのゴミ、よく見ると幼虫です。
↓ 黄色い幼虫(中央枝先)
↓ 中央の黒いのが幼虫
↓ 容器蓋に付く幼虫
これらの幼虫は
恐らく3月下~4月始めにかけて孵化したものと思われますが
まだ孵化していないであろう卵塊も沢山あります。
卵塊の管理は自然温で
気が付いたときに水をかける程度のことしかしておらず
一時期はかなり乾燥させたこともありましたが
それでも孵化は始まりました。
↓ 孵化が近いと思われる卵塊
↑↓ 卵が浮き出ている
↓ 孵化後と思われる卵塊
成虫の寿命
キベリハムシの寿命は長く
飼育下では5か月以上生きます。
2017年7月12日に採集された親虫は
秋になっても活動を続けます。
そして、気温の低下とともに動きは鈍くなり
最後を迎えます。
それでも自然温で年末まで生存する個体がいたため
温度管理をすればもっと活動を続けられたように思います。
また、餌となるビナンカズラは冬でもあります。
↓ 2017年9月
↓ 最短で死亡した個体:2017年11月1日
↓ 2017年12月末の姿
生涯同じ食べ物
孵化した幼虫は食べ物がなかったせいか
容器から出ている個体がいくつもいました。
キベリハムシは完全変態の昆虫ですが
生涯同じものを食べます。
既知されているのはマツブサと
「ビナンカズラ」というツル系の植物です。
幸い近所にビナンカズラの群生地があるため
早速に食料を確保しました。
↓ 近所のビナンカズラ群生地
↓ 庭に植えたビナンカズラ(昨年大胆な剪定)
食料も確保できたので飼育環境を作り直します。
卵塊の付いた枝を適当な長さにカットして土に刺し
羽化した幼虫の餌となるビナンカズラを近くに置きました。
↓ 卵塊の付いた枝を立てて孵化を待つ
↓ ビンに水を入れ切り花状にしたビナンカズラ
遺伝子交流のない世界
多くの生物は雌雄がおり、接合によって次の子どもが生まれます。
キベリハムシは、今から100年以上前に
貨物とともに神戸の港にやってきたといわれていますが
これはあくまでも推察で
本当のことは誰にもわかりません。
大陸原産のキベリハムシは本来雌雄がおり
有性生殖(接合)によって子孫を残しています。
ところが日本のキベリハムシはメスしか見つかっておらず
また、飼育でもメスだけで子孫を残すことがわかっています。
日本(兵庫県中心)に分布するキベリハムシの先祖となった個体の
その時の数や成長ステージを知ることは困難ですが
仮に1系統だけの先祖からはじまり
自分だけの遺伝子を100年以上も残してきたのなら
どの地域に分布する個体も
減数分裂をスキップして発生した「クローン」なのかもしれません。
そうなると、異なる地域の個体であっても
遺伝子的には何ら変わらないわけで
皆同じということもありえます。
遺伝子交流のない世界と、限られた食性と
低い飛翔能力で生きる日本のキベリハムシにとって
分布拡大はそう簡単なことではないように思えます。
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