クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

キベリハムシ・3-孵化

2018-04-08 00:19:35 | キベリハムシ

キベリハムシの孵化



*タイトルに№がある記事は
 「カテゴリー」から入ると飼育・観察過程等が繋がります。


先日、Kさん宅のキベリハムシが孵化したとの連絡がありました。

それは、昨年隣町で偶然発見された野外個体からの卵で

我家にも同じ由来の卵塊が沢山あり

翌日確認してみると

枝や容器の蓋、側壁に幼虫がうじゃうじゃいました。

孵化した幼虫は体長2~3ミリ程度で

よく見ないとただのゴミ、よく見ると幼虫です。


↓ 黄色い幼虫(中央枝先)


↓ 中央の黒いのが幼虫


↓ 容器蓋に付く幼虫





これらの幼虫は

恐らく3月下~4月始めにかけて孵化したものと思われますが

まだ孵化していないであろう卵塊も沢山あります。

卵塊の管理は自然温で

気が付いたときに水をかける程度のことしかしておらず

一時期はかなり乾燥させたこともありましたが

それでも孵化は始まりました。


↓ 孵化が近いと思われる卵塊 

↑↓ 卵が浮き出ている


↓ 孵化後と思われる卵塊




成虫の寿命

キベリハムシの寿命は長く

飼育下では5か月以上生きます。

2017年7月12日に採集された親虫は

秋になっても活動を続けます。

そして、気温の低下とともに動きは鈍くなり

最後を迎えます。

それでも自然温で年末まで生存する個体がいたため

温度管理をすればもっと活動を続けられたように思います。

また、餌となるビナンカズラは冬でもあります。


↓ 2017年9月


↓ 最短で死亡した個体:2017年11月1日


↓ 2017年12月末の姿






生涯同じ食べ物

孵化した幼虫は食べ物がなかったせいか

容器から出ている個体がいくつもいました。

キベリハムシは完全変態の昆虫ですが

生涯同じものを食べます。

既知されているのはマツブサと

「ビナンカズラ」というツル系の植物です。

幸い近所にビナンカズラの群生地があるため

早速に食料を確保しました。


↓ 近所のビナンカズラ群生地




↓ 庭に植えたビナンカズラ(昨年大胆な剪定)



食料も確保できたので飼育環境を作り直します。

卵塊の付いた枝を適当な長さにカットして土に刺し

羽化した幼虫の餌となるビナンカズラを近くに置きました。


↓ 卵塊の付いた枝を立てて孵化を待つ


↓ ビンに水を入れ切り花状にしたビナンカズラ




遺伝子交流のない世界

多くの生物は雌雄がおり、接合によって次の子どもが生まれます。

キベリハムシは、今から100年以上前に

貨物とともに神戸の港にやってきたといわれていますが

これはあくまでも推察で

本当のことは誰にもわかりません。





大陸原産のキベリハムシは本来雌雄がおり

有性生殖(接合)によって子孫を残しています。

ところが日本のキベリハムシはメスしか見つかっておらず

また、飼育でもメスだけで子孫を残すことがわかっています。





日本(兵庫県中心)に分布するキベリハムシの先祖となった個体の

その時の数や成長ステージを知ることは困難ですが

仮に1系統だけの先祖からはじまり

自分だけの遺伝子を100年以上も残してきたのなら

どの地域に分布する個体も

減数分裂をスキップして発生した「クローン」なのかもしれません。





そうなると、異なる地域の個体であっても

遺伝子的には何ら変わらないわけで

皆同じということもありえます。





遺伝子交流のない世界と、限られた食性と

低い飛翔能力で生きる日本のキベリハムシにとって

分布拡大はそう簡単なことではないように思えます。



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