今年もあと2日を残すだけとなりました。
今年も沢山の方にご訪問いただき、ありがとうございました。
先日、九州からヒメオオクワガタが届きました。
届いた箱の中には凍らせたペットボトルが横たわっており、その近くに小さなタッパーが二つ。
普通、この時期の生体発送はカイロが入っているのですが
冷えたペットボトルの理由は、冬季休眠中の個体に刺激を与えないための処置で
ひんやりした空気とともに無事届きました。
オス=34mm・メス=32mmのかわいらしいサイズですが
キュウシュウヒメオオを見るのは初めてです。
このペアは 熊本県で今年12月に朽ち木から採集されたもので
恐らく同腹ペアではないかと想像します。
また、越冬中の新成虫であるため本来の活動は来年春以降になると思われます。
もちろん未交尾であることは言うまでもなく、ブリードするにはもってこいのペアです。
基亜種との違い
ヒメオオクワガタは現在2つの亜種に整理されています。
ヒメオオクワガタ(基亜種)
Dorcus montivagus montivagus
分布:本州・四国・北海道
キュウシュウヒメオオクワガタ(九州亜種)
Dorcus montivagus adachii
分布:九州
ヒメオオクワガタ(基亜種)
↑↓ 左:兵庫県産54mm 右:北海道利尻島産38mm
↑↓ 左:兵庫県産33mm 右:北海道利尻島産38mm
利尻島の個体採集者のお話では分布数は多くなく、1日歩き回って10ペア見つかればよいほうで
オスメス共形状に利尻っぽいものを感じておられるそうです。
キュウシュウヒメオオクワガタ(九州亜種)
キュウシュウヒメオオクワガタは、基亜種に比べオスメス共に体と大あごが太短く
オスの体は艶消し状のようになり、メスもやや艶が少ない傾向にあります。
↑↓ 頭部・前胸背板に艶は殆どない
画像と実際はさほど違いがなく
光の角度を変えてもオスの違い(艶)は明瞭でなるほどと思えるものでした。
そうなると広島県で採集された個体の中にキュウシュウ亜種に似たオスが1頭含まれていたという
過去の事例が気になります(漆山誠一,1994)
↓ 左:兵庫県産45mm 右:熊本県産34mm
↑↓ 左は艶が強い(基亜種)
↑↓ キュウシュウヒメオオクワガタのメス、結構艶がある
↑↓ 右:兵庫県産35mm 右:熊本県産32mm
↑ 兵庫県産は野外活動個体のためスレており
艶も消失個所が多いため、個体差等も考慮すると見慣れない私にはメスの区別は難しいです。
かなり前に九州在住の方から聞いたお話では
「キュウシュウヒメオオのルッキングではツタの絡まる木で発見することが珍しくなく
また、比較的木の高いところで見つかることがある」との事でした。
私のよく行く山でもそういうことはありましたがその頻度は少し違うように感じました。
ヒメオオクワガタは関西地方では標高850mあたりから
1000m位のブナ帯で発見されることが多いのですが
緯度の高いところではもう少し低いところでも発見できると聞きます。
仮に山が繋がっていても限られた環境でのみ生息するヒメオオクワガタにとっては
それぞれの棲息地が隔離された状態にあることも多く
その垂直分布を見ると海に囲まれない島みたいなものかと思います。
↑ ブルーライン内が分布域
また、成虫のホスト樹や発生木の影響により自然下でも血縁での交配は珍しくないものと私は考えます。
撮影を終えたキュウシュウヒメオオクワガタは
自然温で暫く冬を感じてもらい覚醒後に繁殖を試みたいと思います。
↓ 右 キュウシュウヒメオオクワガタ
参考文献:
漆山誠一,1994,月刊むし283号,18-19.
吉田賢治,1996,日本産クワガタムシ大図鑑.
藤田宏,2010,世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.
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