★星空日記コリメート風goo★

星や旅などの話題を「ひらい」が札幌から発信。2010年開設。2022年7月にteacupからgooへ引越しました。

研磨に悩んで静岡へ

2014-06-21 07:00:00 | 反射鏡研磨
 反射望遠鏡用の鏡面研磨2作目として20cm鏡に挑戦したのは2013年7月のことでした。

 そのときの様子は、2013年7月のブログ記事【20cm鏡研磨その5】に書いているとおり、鏡面の波長誤差(注1)は1/4波長程度と満足できるものではありませんでした。
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 2013年7月の研磨終了直後にデジタル測定した値です。
 画面右上、P-V(wave) 0.2485 と書いてあるので、鏡面の波長誤差は約1/4波長ということを示しています。

 その1か月後に修正研磨を行ったときの様子は、2013年8月のブログ記事【20cm鏡の修正研磨2】に書いています。
 このときは満足できる結果を得られていないと判断し、思い悩むこと10ケ月。

 考えた挙句、研磨のプロで静岡県在住の夢作さんに修正研磨の助言をお願いすることにし、6月19日(木)に静岡へ向かいました。

 19日は夢作さん宅に宿泊させていただき、翌20日に工場で20cm鏡を測定してもらいました。
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 鏡面を90度回転させて2回測定した結果とロンキーテスト(注2)をしてもらった結果、夢作さんから、「アス (非点収差) は殆どなくて、鏡面誤差は約1/7波長。中心部が過修正で最周辺部がターンアップ気味だけど、中央部は周辺部に比べ面積が少なく斜鏡でかなり隠されるので、中倍率までだと良くみえるはずですよ」 というコメントをいただきました。

 鏡の中央部を掘りすぎたものの、私が思っているほど酷くはない鏡面とのことで、まずは一安心。
 画面右上に P-V(wave) 0.1507 と表示があり、鏡面の波長誤差は約1/7波長なので、昨年8月に修正研磨をした効果が確認できました。

 測定時に手を滑らせ鏡周を欠けさせてしまったこともあり、面トリ(注3)を多めにする (口径を少し絞る) ことで、多少精度のアップになることから、これ以上の修正研磨は見送ることにしました。

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 初心者に電動での面トリは難しいだろうということで、夢作さんに面トリをしてもらいました。
 面トリを多目にした結果、有効径は195mmとなりました。

 40年来の知人とはいえ、私のワガママを聞き入れてくれた夢作さん、本当にありがとうございました。

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 面トリ終了後、近くの居酒屋さんで夢作さんご夫妻と乾杯。伊豆の夜は更けていきました。


(注1) 鏡面の波長誤差
 理想的な鏡面から研磨面がどの程度誤差があるのか、光の波長を単位として測定した値。一般的には1/8波長以内が合格ラインとされる。

(注2) ロンキーテスト
 望遠鏡の対物レンズや反射主鏡の性質や傾向を知るための方法のひとつ。
 ガラス板状の表面に極めて細密な平行線が刻まれたスクリーン 「ロンキースクリーン」 を望遠鏡の接眼部に取り付け、拡大されて見える線の様子を観察する。収差がない光学系の場合、焦点内外像で見える線は直線となる。
 今回のテストに使ったロンキースクリーンは1インチ (=25.4mm) あたり200本の線が刻まれている。
 私の20cm鏡は焦点内像の線が樽型、焦点外像が糸巻き型に見えたことから、全体的に過修正鏡であることが判明。

(注3) 面トリ
 欠けやすい鏡の材料の角を斜めに削ることで、鏡周を欠けにくくすること。

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鏡面誤差の計算は?

2013-09-05 07:00:00 | 反射鏡研磨
 2013年8月31日の記事【20cm鏡の修正研磨2】からの続きです。
 なお、今回の記事もかなりマニアックな記事です。反射鏡研磨に興味がないかたは、どうぞ読み飛ばしてください。

 前の記事に、ゾーンテストの結果から鏡面誤差を算出する方法を知らないと書きました。
 その方法をどうしても知りたかったので、所有している本を読んでみると・・・
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 読んだ書籍です。
 上段の左から、反射望遠鏡の作り方(昭和25年:木辺成麿)、望遠鏡の作り方(昭和32年:星野次郎)、新版反射望遠鏡の作り方(昭和42年:木辺成麿)、新版反射望遠鏡の作り方(昭和49年:星野次郎)
 下段の左から、望遠鏡光学(昭和53年:吉田正太郎)、望遠鏡光学・反射編(昭和63年:吉田正太郎)、15cm反射望遠鏡の作り方(天文ガイド別冊:川村幹夫:昭和50年)

 算出方法が書いてあったのは、右下の本、天文ガイド別冊の15cm反射望遠鏡の作り方です。この本の32ページから37ページにその方法が書いてありました。
 著作権の関係で、その内容を全て示すことができませんが、各ゾーンのナイフエッジの移動量の階差をとり、球面とパラボラ面との実距離を基にナイフエッジの移動量から鏡面誤差を推定するもので、数値微分のような考え方で計算します。


 まず、修正研磨前の鏡面誤差を計算してみました。


 黄色が理想的なパラボラ面の収差量(ナイフエッジの移動量)で単位はmmです。
 橙色が実際の測定値で単位はmm。
 青色が求める鏡面誤差で単位はnm(ナノメートル=0.000001mm)
 緑色が積算された鏡面誤差で1946nm。
 積算を15回行ったので平均誤差は、1946nm÷15=130nm
 肉眼感度が一番高い波長の550nmを単位とし、550nm÷130nm=4.2
 即ち、修正研磨前の鏡面誤差は波長誤差で示すと約1/4波長の負修正鏡ということになります。

 次に、修正研磨後の鏡面誤差です。


 緑色の積算誤差は-957nmなので、平均誤差は -957÷15=-64nm
 波長誤差で表すと、550nm÷(-64nm)=-8.6
 即ち、約1/9波長の過修正鏡という結論になります。

 なお、積算して平均するという考え方は、書籍には具体的に示されていませんでしたが、恐らくこのようにするのだろうと私の憶測を入れて計算しています。

 上記計算法は考え方が根本的に間違っていて、青色の最大値と最小値の差で計算するのが合理的かもしれません。

 そうすると、修正研磨前は550nm÷472nm=1.2 つまり1/1.2波長の負修正鏡になります。
 修正研磨後は555nm÷(366nm+137nm)=1.1 つまり1/1.1波長の過修正鏡になります。ウーン、変です。

 どちらが正しいのでしょうか。それとも両方とも間違っているのでしょうか。どなたかご指摘いただければ幸いです。
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20cm鏡の修正研磨2

2013-08-31 07:00:00 | 反射鏡研磨
 2013年8月30日の記事【20cm鏡の修正研磨1】からの続きです。
 なお、かなりマニアックな記事になるので、反射鏡研磨に興味がないかたは、どうぞ読み飛ばしてください。(笑)

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 これは、鏡の直前にコウダースクリーンを置き、フーコーテスターを通してみた鏡面の様子です。

 修正研磨の前に、このスクリーンで何回もゾーンテストを練習しました。左右対になる窓同士の明るさが同じになるナイフエッジの前後位置を0.01mm単位で測定するのは慣れが必要で、特に中央部の測定が難しく測定値のバラつきが大きくなる傾向があります。

 修正研磨前にゾーンテストした結果、50%程度のパラボラ面に近い形状だということが確認できました。

 8月29日23時52分に修正研磨を開始。
 まず、手始めに15分間のオーバーハング研磨をしました。1回目のゾーンテストをしてみます。おっ、なかなかいい感じ。パラボラ率が60%ぐらいに進みました。

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 1回目の研磨を終え、フーコーチェックしたときの画像です。ピッチ盤の密着具合が良くなかった割には順調にパラボラ化が進んでいるようです。ただし、鏡周部分の焦点距離が長くなるターンダウンも進んでいるのは密着具合が悪いピッチ盤を使っているせいでしょう。

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 こんなに密着度が悪いピッチ盤でパラボラ化するのは無謀です。
 密着度が悪い部分の形状を見て、後からその原因がわかりました。ピッチ盤を包んでいた新聞紙の形状がそのまま出てしまったようです。
 画面右側のピッチ部分でオーバーハングを効かせました。

 2回目は0時31分から41分まで10分間の研磨作業。
 結果は、中央部のパラボラ化がやや進んでいるものの、周辺部が遅いというか進まない感じ。
 ゾーンテストは同じゾーンを3回測定し平均をとるので、慎重に測定すると40分~50分ぐらいかかります。短い研磨作業に対し長い測定時間となり、なかなか作業が進みません。

 3回目は1時27分から39分まで12分間の研磨作業。
 12分間オーバーハングした割には掘り込みが進みませんでした。逆に周辺部が浅くなってきたようです。理由は?

 4回目は2時17分から30分まで13分間の研磨作業。
 3回目の作業でパラボラ化が進まなかったことから、意識的にオーバーハングを少し強めにし、セロックス(酸化セリウム)を少し濃くしてみました。

 結果は、アチャ~! やってしまいました。中央部を20%ほど掘り過ぎてしまい、中央付近のパラボラ率は120%ほどになりました。一方、周辺部は50%ほどしかありません。
 今の私の技量ではこれ以上の修正は困難と判断し、修正研磨を終えることにしました。やはり、ピッチ盤の密着に時間をかけ少しずつパラボラ化をすればよかったと反省。


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 修正研磨を終えた時点の最終フーコー画像です。修正研磨前よりは多少パラボラ面に近づきましたが、中央部は掘り過ぎのうえ、周辺部は明らかなターンダウンです。

 修正研磨前の鏡面誤差は1/4波長ほどでしたが、修正後にはどれぐらいになったのでしょうか。(波長誤差の計算方法を知らないのです。)
 周辺部のターンダウンは星像にかなりの影響が出るはず。心配です。

 細いスジが3本見えているのは鏡面についたセロックス(酸化セリウム)の拭きムラです。撮影時のピントも甘くなってしまい、注意力が散漫になってきたことを実感。

 セロックスの残量が僅かになったこともあり研磨作業を4時で終了としました。外が既に明るくなっていることに気付きびっくり。暖房を切り清掃をして研磨作業完了。室温29℃もあって汗がダラダラ状態でした。


 研磨作業中に行ったゾーンテスト結果をまとめてみました。
 表の中で薄黄の部分が理想的パラボラ面の収差数値、薄橙の部分が最終研磨結果です。

 今回、修正研磨をするにあたり、様々な助言をいただいた古くからの知人で研磨の第一人者、夢作さんに感謝申し上げます。
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20cm鏡の修正研磨1

2013-08-30 05:30:00 | 反射鏡研磨
 フーコーテスターが完成したので、20cmF5鏡の修正研磨をすることにしました。【2013年8月29日の記事】の続きです。

 修正研磨するためには、その修正量を知る必要があります。その修正量を知るために厚紙でコウダースクリーンというものを作成しました。
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 このコウダースクリーンは、星野次郎さんの著書 「反射望遠鏡の作り方(新版)」 のP103に掲載されていたもので、ゾーンテストするために用います。

 修正研磨の前に何度かゾーンテストの練習をしました。ある程度の感触を得たので、2013年8月29日(木)22時から修正研磨の準備を開始。

 7月下旬の暑い東京でピッチ盤を作ったことから、暑い気温に適したピッチ盤のはず。8月下旬の札幌は既に秋の装い。止むを得ず22時に窓を締め切り暖房を入れました。23時の室温は28.2℃。外気温は17℃ほどです。

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 23時03分、ピッチ盤を約50℃のお湯で10分ほど温めます。画面には写っていませんが、鏡のほうも温めました。

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 ピッチ盤に水溶きしたセロックス(酸化セリウム)を塗り、鏡を重ねて5kgの重しをかけ約30分ほど放置。

 修正研磨する直前に鏡の裏面に研磨用ハンドルを強力両面テープで貼り付けました。このハンドルは研磨講習会でお世話になったNさんからのプレゼントです。

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 23時52分、研磨作業開始。ピッチ盤の密着状況が良くありませんが見切り発車です。多分、あまりいい結果にはならないでしょう。室内の温度は28.8℃まで上昇しました。

 翌朝5時までかかった修正研磨の結末は、次回の記事 「20cm鏡の修正研磨2」 に書く予定です。
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フーコーテスター完成

2013-08-29 23:40:00 | 反射鏡研磨
 精密凹面鏡の鏡面状態を検査する機器、フーコーテスターをようやく完成させました。【2013年8月16日の記事】の続きです。

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 自作フーコーテスターです。
 光路途中にミラーを入れ、鏡面を直接覗く水平方向と真上から覗く垂直方向の切り替えが可能です。画像は真上から見るようにセットしたもの。

 ナイフエッジ用の刃は、5mm厚の真鍮版を削り、エッジを磨き粉で研磨しました。照明用スリットは安全カミソリの歯を2枚使い、隙間は0.1mm~0.2mmにしました。

 製作にあたり新たに購入したのは、LEDライト(105円)とジャンク品の顕微鏡用メカニカルステージ(800円)だけです。残りは手持ちの部材で済ませました。
 移動量を0.01mm単位で測定できるダイヤルゲージは、金属加工用に使っているものを流用しています。

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 2枚目の画像は、水平方向で鏡を直接見る場合の様子です。

 直視と90度俯視の切り替えは、10cm屈折望遠鏡を購入した際に付いてきたフリップミラーを利用しました。切り替えはミラーボックス左側にあるツマミを回し、ナイフエッジ固定リングを付け替えるだけなので10秒ほどの短時間で切り替え可能です。

 このフリップミラー、平面精度があまりよくありません。望遠鏡に装着し接眼鏡で拡大して星を見ると非点収差が目立ちます。フーコーテストでは、拡大して見ないので恐らく使用には問題ないと思いますが、精密を期す場合は、この画像のように直視で見ることにします。

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 さっそく、7月末に研磨した2作目の口径20cmF5鏡をフーコーテストしてみました。
 なお、球面を0%、放物面を100%と表示した場合、この20cm鏡は40%程度という測定結果を事前に得ています。これは、研磨講習会終了直前に指導員役の渡部さんが持参されたデジタル自動測定器(RFT)で測定してもらった結果です。詳細は【2013年7月29日の記事】を参照してください。
 3枚目の画像は約40%の負修正鏡のフーコー画像ということになります。不規則な研磨痕が少しあるのが判ります。

 目標とする放物面までは残り60%ほどを掘り込む修正研磨が必要です。これにはゾーンテストというテスト法を習得しなければなりません。練習してみましたが、これが難しい!

 ゾーンテストに少し慣れてきたので、29日の深夜から修正研磨を行います。以下、次の記事に続きます。
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