★星空日記コリメート風goo★

星や旅などの話題を「ひらい」が札幌から発信。2010年開設。2022年7月にteacupからgooへ引越しました。

双眼鏡の選び方(初心者さん向けのアドバイス)

2024-09-21 06:00:00 | 双眼鏡・双眼望遠鏡
 過日、星を見るのが好きな知人から双眼鏡を選ぶ際のアドバイスを求められました。メールなどでお応えしましたが、うまく説明できません。そこで、双眼鏡のブログ記事を書きそれを見てもらうことにしました。

 この記事では、角度という単位にも慣れていない初心者さんへの「双眼鏡を選ぶ際の基本的アドバイス」として双眼鏡ライフ55年間の実体験を元に書いています。
 最初は初心者さん向けに簡潔に書こうと考えていましたが、あれもこれも伝えたいという思いから、かなりの長文になってしまいました。



 操作や導入が難しい望遠鏡に比べ、双眼鏡は取り扱いが比較的簡単です。とは言うものの双眼鏡は千差万別。何を選んだらいいのか初心者は迷います。ご自身で双眼鏡を選ぶために、まず双眼鏡の基本から。

❶ 双眼鏡の基本を知りましょう


 これは私が使っている双眼鏡のうちの1台です。中央に双眼鏡の倍率や対物レンズの口径などが表示されています。

❶-1 ポロ型とダハ型
 双眼鏡は一部の例外を除き使用するプリズムの種類によってポロ型とダハ型の2種類に大別され、それぞれ微妙な特徴があります。

 上段がポロ型、下段がダハ型です。(ヨドバシカメラ札幌店でスタッフの了解を得て2024年9月19日に撮影)
 ポロ型は近い距離が立体的に見やすい(遠いか近いかの差の判別がしやすい=立体視といいます)という特徴がありますが、天体は極めて遠い距離にあるので立体視の見やすさは双眼鏡を選ぶ際の選択肢にはなりません。

 ポロ型は安価で大きめ、ダハ型は高価で小さめです。その他にも微妙な特徴の差がありますが初心者のかたはあまり気にしなくていいと思います。(なお、逆ポロ型というタイプはコンパクトになります)
 初心者のかたはいずれのタイプでも下記の留意事項を参考に、実際に手に取ってみて予算内の気に入ったタイプを選べばいいと思います。

❶-2 角度に慣れましょう
 事前の知識として、天体を見るときには「角度」というものに親しんでおくと便利です。普段の生活であまり馴染みがない角度ですが、自身の腕をいっぱい伸ばしゲンコツを作り、上の親指と下の小指の挟む角度が大体10度。指1本分が2度と覚えておくと星を見るときに便利です。

 私の場合、少し腕が長く指が細いため約9度になりますが、平均的日本人では10度ほどになるはずです。(なお、大人でも子供でも大体同じ)

❶-3 倍率と口径
 1枚目の画像にある5×25 という表示は「ごばい にじゅうご」と読み、最初の数字5は倍率、最後の数字25は双眼鏡の先端に付いている対物レンズの直径をmm単位で示しています。
 倍率が高い双眼鏡がいいと思いがちですが倍率が高いと、
①ぶれやすくなります ②見えるものが暗くなってしまいます ③視野が狭いので天体を導入するにも難儀します
 という理由から初心者は高倍率の双眼鏡に手を出すと後悔することになると思います。詳しくは「❷双眼鏡の選び方」をご覧ください。

❶-4 実視界・1000m視界・見かけ視界
 ◆1枚目の画像にある15.8° という表示は実視界が15.8度ということを示しています。実視界(視野)というのは双眼鏡を覗いた際に見える丸い視野を角度で示したものです。現在市販されている双眼鏡の殆どが角度による表示です。

 ◆1000m視界というのは、1000m先の視野の左端から右端までの長さで視野を表示しています。(市販されている双眼鏡ではこの1000m視界表示は少数派です)

 ◆見かけ視界というのは、双眼鏡を覗いたときにひらけて見える視界の角度のことです。あくまでも近似式ですが、実視界×倍率≒見かけ視界 でおおよその見かけ視界が求められます。倍率7倍で実視界が7.3度であれば、見かけ視界は50度ほどです。なお、厳密式で算出した見かけ視界60°以上のものを広視界型双眼鏡と呼びます。メーカーによっては Wide Field などと表示する場合もあります。

❶-5 アイレリーフ
 双眼鏡を覗いたときケラレなく全視野を見ることができる眼の位置から接眼レンズ最終面までの距離のことをアイレリーフといいます。この距離が長ければ、メガネをかけて覗く場合でも快適な視界が得られます。この時の眼の位置をアイポイントといいます。

 一般的にアイレリーフが16mm以上あればメガネをかけたままでケラレ(視界内の一部が暗くなること)が無いまま全視野を見られ、「ハイアイポイント双眼鏡」や「ハイアイ双眼鏡」などと呼ばれます。


 これは、1982年に私が購入した10×40ダハ式のハイアイポイント双眼鏡です。メガネを常用している私が使う際は見口のゴムを折り返して使います。重さは780g。
 40年以上活用していますが、ゴム見口は少し広くなったぐらいで弾力性を今でも保持しています。過去の国産双眼鏡にあったゴム見口がすぐボロボロになるのとは大違いです。(最近の双眼鏡は見口が簡単にポップアップできるよう工夫された製品が多くなっています。)
 なお、この10×40双眼鏡は珍しく1000m視界表示で1000m/110mとなっています。角度換算すると実視界は6.3度と計算でき、見かけ視界は近似式で63度の広視界型です。



❷ 双眼鏡の選び方
 双眼鏡の基本が理解できたところで、いよいよ選び方のアドバイスをします。

❷-1 軽い双眼鏡がお勧め
 家電量販店のスタッフなどから「天体観察には7×50双眼鏡がお勧めです」と言われる場合がありますが、次の理由で私はあまりお勧めしません。
 1番目の理由は重いからです。7×50双眼鏡の重さは1000gを超えるので手持ちだと星を見続けるのは辛いですし、ストラップを使い首からかけていても時間と共に重さが首に食い込んできます。また、結構かさばります。
 2番目の理由は口径50mmという口径の大きさが無駄になる人が圧倒的に多いからです。(詳細は下記「❷-2 ひとみ径に注意」をご覧ください)
 3番目の理由は7×50双眼鏡の大多数の実視野は7.3度と初心者には狭いからです。(詳細は下記「❷-3 視野の広い双眼鏡を選びましょう」をご覧ください)

 私が使用する双眼鏡のうち、使用頻度が最も高い双眼鏡は8×20双眼鏡です。天体用としては口径が小さく倍率が高めですが、何といっても重さは240g。手にスッポリ入る小型双眼鏡です。(初心者の方にはもう少し倍率が低く、もう少し口径の大きな双眼鏡をお勧めします)

❷-2 ひとみ径に注意
 人間の眼は周囲の明るさ暗さに応じてヒトミ(瞳)の大きさが変化します。暗い空だとヒトミの直径(ヒトミ径、瞳孔の大きさ)が最大7mmまで広がるとされています。色々な文献を読むとヒトミ径が最大の7mmになるのは20歳前後。その後は加齢に伴い少しずつ小さくなり70歳ごろにはヒトミ径は5mmほどになってしまうようです。
 これは個人差が大きく、私の場合、20歳ごろのヒトミ径は8mmほど、69歳時のヒトミ径は6.4mmと平均的日本人よりも大きいようです。

 一方で、双眼鏡の機能表示でも「ヒトミ径」という表示があります。正式には「射出瞳径」といい、明るい室内で双眼鏡の接眼部から30cm以上眼を離し、接眼レンズを後方から見ると、小さな円形の明るいものが見えるはずです。この円形の直径が射出瞳径です。

 今度は、接眼部の後ろに白い紙をかざすとボケ気味の丸い円が写り込み、紙を接眼部から少しずつ距離を変えると丸い円がくっきりと見える場所があります。このときの「ヒトミ径=射出瞳径」は「対物レンズの有効径÷倍率」に等しくなります。
 たとえば7×50双眼鏡の場合、射出瞳径=50mm÷7=7.1mmです。

 もうお気づきかと思いますが、双眼鏡使用者の最大ヒトミ径が5mmだった場合、射出瞳径が7.1mmの双眼鏡では集めた光が人間のヒトミからはみ出てしまい無駄になります。
 違う言い方をすれば、最大ヒトミ径が5mmの人は倍率が7倍の双眼鏡を使う場合、5mm×7=35mm、つまり口径35mm以上の大きな双眼鏡を選ぶのは意味がないことになります。
 なお、上記の白い丸がハッキリと投影された紙と接眼部の最終レンズ面までの距離がアイレリーフで、紙の位置がアイポイントです。

 10×40双眼鏡を明るい方に向け接眼部の見口を折返し、アイポイント位置に白紙を置き射出瞳径を確かめています。

 なお、双眼鏡カタログの仕様一覧に「明るさ」という数値が出ていることがあります。これは単に射出瞳径を2乗したもの(明るさ=射出瞳径×射出瞳径)で、この数値が大きければ夜でも明るく見えるという説明がされていますが、前述のように使用者のヒトミ径で妨げられる場合が多いのであまり参考にしない方が無難です。

❷-3 視野の広い双眼鏡を選びましょう
 この記事の最初の画像にある5×25双眼鏡の実視界は15.8度。市販されている双眼鏡としては比較的に広い視野です。とはいえ、オリオン座の1等星ベテルギュースとリゲルの角距離は19度ほどなので、同時に見ることができません。
 カシオペヤ座の明るい星々が形作るWは端から端まで13度ほど。実視界15度もあると双眼鏡を動かさずにWを確認できます。

 言い方を変えると、見かけ視界60度以上の広視界型双眼鏡でもなるべく倍率が低い双眼鏡でないと、初心者は目的の星に向けるのが難しくなります。

 私の経験上、初心者は5倍から6倍ぐらい、高くても7倍ぐらいまでがいいと思います。5倍の広視界型双眼鏡であれば実視界12度以上になるので、目的の星を導入しやすいばかりでなく手ブレもあまり気にならなくなります。
 なお、倍率が高い双眼鏡のうち「手ブレ補正装置=防振機能」が付いたものがありますが、高価ですし目的の星を導入しずらいことには変わりありません。

❷-4 オペラグラス

 これは、人生初のアルバイト賃金で1971年に買った3×28のオペラグラスです。メガネをかけて覗くと視野が狭く、メガネを外してみえる実視界は8度ほどと倍率の割には広くありません。
 オペラグラスとはプリズムを使わず接眼部に凹レンズ系を使用したガリレオ式の2倍から3倍ほどの簡易的な双眼鏡のことです。


 最近では倍率が2倍ほどの実視界が広いやや高価な星空観察用として推奨されているオペラグラスが市販されています。裸眼では見づらいような暗い星々を見るにはとても便利です。
 しかし、対物レンズの大きさは集光力に比例せず口径が大きくても意外と暗い星は見えないですし、接眼レンズに眼を極端に近づけてみないと視界が狭くなるのが弱点です。接眼部に凸レンズ系を使用した普通の双眼鏡(つまりケプラー式)の方がオペラグラスよりも集光力があるので、暗い星をより明るく見たい場合はケプラー式双眼鏡の方が有利です。

❷-5 双眼鏡を選ぶ際の「まとめ」
 使う目的、双眼鏡を支える肉体的要因、加齢によるヒトミ径の縮小などを総合的に判断すれば初心者には、
倍率が5倍から6倍、口径が30mmから35mm程度の広視界型の双眼鏡をお勧めします。
 低倍率の双眼鏡を十分体験し、それでも満足できなければ倍率が10倍ぐらいの双眼鏡の購入を検討するのがいいと思います。ズーム形式の双眼鏡を選ぶと後悔します。(倍率が高いとボケて暗くなるうえに手ブレで見づらくなります)

 双眼鏡としては比較的小型の6×30双眼鏡を使った場合でも裸眼より3等級ほど暗い星が見えます。裸眼で6等級の星が見える暗い場所であれば9等級までの暗い星が見えますし、明るい星雲や星団も楽しめます。



❸ 双眼鏡の使い方
 実際に双眼鏡をうまく使うためのアドバイスです。

❸-1 目幅調整
 意外と難しいのが双眼鏡の眼幅と自分の目幅を合わせることです。うまく合わせないと左右の像にケラレが発生します。双眼鏡によっては目幅の数値が中心軸に刻印されている場合もありますが、ご自身で色々と試してみてその数値を覚えておくと再現性が確保できます。

❸-2 視度調整
 視度調整というのは、左右の眼のピント合わせのことです。その合わせ方は双眼鏡によってかなり異なるため、取り扱い説明書をよく読んでおき、暗い夜空でも視度調整できるように練習しておきましょう。
 目幅調整と視度調整は双眼鏡の見え味に強く影響するのでベテランほどしっかり調整しています。なお、斜視のかたは双眼鏡を使いにくい傾向があるため、眼科医か信頼のおける眼鏡店にメガネなどの補整方法について相談してみてください。

❸-3 双眼鏡メーカーのカタログで勉強
 双眼鏡メーカーのカタログには、双眼鏡の選び方や用語の説明が詳しく書いてあることがあります。購入前にカタログを集めて参考にするのもいい方法です。

❸-4 三脚に固定して使ってみましょう
 双眼鏡を使う際は、両脇をしっかりと締めてなるべくブレないようにして見ましょう。建物や車両に寄り添い体を固定するのもいい方法です。
 さらに、写真三脚に双眼鏡を固定できる市販の取付け金具を使うとブレが皆無になり見え味がグンとアップします。なお、双眼鏡によっては三脚に固定できないタイプもあります。
 双眼鏡を三脚で固定し二重星が分離できたかの体験例を2011年8月のブログ記事 【 双眼鏡の分解能 】に書いておきました。ただし、この例は収差が少なく良く調整された双眼鏡による体験例です。



❹ 双眼鏡ライフを楽しみましょう
 家電量販店に行くと、倍率と口径が同じであっても1万円以下の安価な双眼鏡から70万円台の最高級双眼鏡までラインアップされています。目的に合ったコストパフォーマンスの高い双眼鏡を選べるといいのですが、なかなか難しいですね。

 激安の製品は左右の光軸がすでに狂っていたり、ピント調整ダイヤル部が不安定だったり、プリズム径が不足していたりするので初心者は購入しない方が無難です。

 双眼鏡の良し悪しがわかる場合は、見比べてコストパフォーマンスのいい双眼鏡を選ぶことも可能ですが初心者にはハードルが高いです。

 双眼鏡に知見があるベテランさんと同行すると、光軸の僅かな違いやプリズムのカゲリなどを教えてくれる場合がありますが、同行してくれる人がいない場合は、店員さんに頼んで高級双眼鏡との見え味の違いを確かめてみましょう。

 中心像の鋭さ・周辺像の乱れの少なさ・コントラスト(いわゆる像のヌケの良さ)・像の平坦性(中心部と周辺部のピント位置の差)・周辺像の減光具合・左右像の光軸ズレ具合・操作のしやすさなどを体験し、後はご自身の予算額などを考慮し双眼鏡を選ぶと良いでしょう。


 以上、長文になりましたが双眼鏡ライフを楽しんでくださいね。
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スピカ望遠鏡の双眼計画(太陽フィルター)

2023-07-31 06:00:00 | 双眼鏡・双眼望遠鏡
 2023年6月27日のブログ記事 【 スピカ望遠鏡の双眼計画その2 】からの続きです。

 6月下旬に完成した双眼スピカ望遠鏡を横山さんへ引き渡す際、太陽専用の減光フィルターを使い、太陽を見てもらいました。

 双眼スピカ望遠鏡の先端に、減光フィルターをマスキングテープ(マステ)で仮止めしています。
 この減光フィルターは口径10cm屈折望遠鏡用です。私が常時使っていることからお貸しする訳にもいかず、スピカ専用太陽フィルター部品の製作を引き受けました。

 スピカ望遠鏡の筒先の直径は45mm。そこに被せる何か適当なものがないかと探してみると、市販の缶コーヒーが寸法的に合うようです。


 90円の缶コーヒーを2本買い、飲み干してから筒先に直径42mm、筒底に46mmの穴を開けます。
 左の缶コーヒーは、ソーラーフィルムを貼る筒先部分に直径42mmの穴を開けるためのヤスリがけ前の状態です。
 右の缶コーヒーは、スピカ望遠鏡の筒先より1mm大きめの直径46mmになるようヤスリで仕上げ済みです。

 所定の穴が開け終わったら、スペーサーをコーヒー缶の内部に貼り、鏡筒外径に合うようにします。


 7月上旬、加工済みの缶コーヒーを依頼主の横山さんに手渡しました。
 横山さんがソーラーフィルムをマステで貼り付けて完成です。ちょっとシワシワですねー。(笑)


 さっそく、双眼スピカちゃんにソーラーフィルターを装着し太陽観望。

 双眼視するための必須作業「鏡筒の平行調整」は、XYの2軸方式でとても調整しやすいですと横山さんは語っていました。
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スピカ望遠鏡の双眼計画その2

2023-06-27 06:00:00 | 双眼鏡・双眼望遠鏡
 前回のブログ記事 【 スピカ望遠鏡の双眼計画その1 】からの続きです。


 スピカ望遠鏡を双眼にするための部品が6月下旬に完成しました。

 金色の金属片6枚は、鏡筒補強用の0.5mm厚の真鍮板で、ボール紙製の鏡筒の平行調整ネジが当たる部分に貼ります。
 下のカラフルな4枚のプラスチック板は目幅微調整用のシムです。詳細は後述。
 


 双眼部品を組み立てました。持ち運びしやすいよう取っ手を付けています。
 左目の鏡筒を固定式に、右目の鏡筒を平行調整できるように対物レンズ側はオーソドックスな120度おきの3点支持、接眼レンズ側は調整がしやすいようバネを使ったXY調整方式(2点調整方式)にしてあります。


 これまで平行度や目幅が合っていない多くの双眼望遠鏡を見てきたことから、双眼スタイルを希望した横山さんには、
 ①目幅の合わせ方 ②平行度の合わせ方 ③像の傾きの合わせ方 についてアドバイスしました。

 ①の目幅調整については、目幅固定方式を採用したので本来は調整が不要なのですが、遠方瞳孔間隔(PD)の測定誤差や、人間が誰でも持っている多少の斜視の影響などを考慮し、目幅を微調整できるシムを用意しました。双眼視に慣れてくると、目幅の僅かなズレが気になってくるはずです。
 初期値は眼鏡店が測定したYさんのPDになるよう3mm厚のアルミ板を介していますが、0.5mm単位で変更できるように厚さ0.5mmシム(黒色)・厚さ1.0mmシム(水色)・厚さ1.5mmシム(黄色)・厚さ2.0mmシム(緑色)の4枚を用意しました。このシムは住宅建設用の万能パッキンを流用しています。

 ②の平行度調整については、特徴のある対象物をスピカ双眼鏡の視野内に導入し、平行視に慣れていない初心者は接眼鏡の見口から20cm以上目を離して覗きます。遠方を見るような感じで覗くと左右の像が一致しないことが殆どなので、右眼の平行調整ネジで一致するよう調整します。平行視に慣れてくると、接眼鏡の見口から目を離さずに調整できるようになります。
 なお、上下の調整は比較的簡単です。左右の目は上下の像のズレに敏感だからです。それに対し、左右のズレには鈍感です。なぜなら、目には輻輳という自然な動きがあり、近いものを見るときには自然に左右の目が寄り目になるからです。見口を遠くから見るようにすると輻輳が防げます。

 ③の像の倒れ調整については、天頂ミラーを併用するため、左右の天頂ミラーが同一平面上でないと、左右で像が傾く現象が発生します。そこで遠方の建物壁タイルやアンテナなどを覗き左右の傾きがないよう調整します。

 再度②と③の調整を繰り返して調整完了です。このように書くと難しいように感じるかもしれませんが、慣れると数分で調整が完了します。
 これくらいしないと、双眼鏡を長時間見るのは目に無理な緊張を強いてしまい、頭痛の原因になります。
 なお、①と②と③の調整は連動し、より正確な調整には時間と習熟が必要ですが、まずは試してみることが大事です。


 完成した双眼スピカ望遠鏡です。
 きちんと調整された双眼望遠鏡は、単眼よりも良く見えます。人間が眼球を2個持っていることの生理的なものが影響しているのでしょうね。
 特に、月や土星などは立体的に感じます。錯覚とはわかっていてもそう見えてしまうのが不思議です。横山さん、双眼ライフを楽しんでくださいね。


◆ 参 考 ◆
 日本産業規格(旧日本工業規格→2019年7月の法令改正で名称が変更)JIS B7121:2007 により、双眼鏡の平行度許容値が定められています。
 上下(光軸の上下発散)は角度の30分角、左右の寄り眼(光軸の左右収束)は角度の90分角、左右の開き眼(光軸の左右発散)は角度の30分角となっていて、これを使用倍率で割った直が許容値です。
 市販されている安価な双眼鏡を販売店で実際に覗いてみたところ、許容値どころか大幅にズレている製品が結構あることに驚かされます。よく調整された安価な双眼鏡は稀です。

 スピカ望遠鏡に付属している接眼鏡の12mmだと倍率は35倍を得られるので、上下の開き具合の許容誤差は僅か1分角以内(左右は3分角以内)という厳しい値となります。
 調整ベース長が80mmなので角度の1分角は約0.00029mmに相当します。この光軸調整をM3ネジ(ピッチ0.5mm)で行うため、
 360度×(0.00029/0.5)=0.2度 つまり、1分角の微調整だとM3ネジを0.2度ほどの微小角を回す繊細さが必要になります。調整ベース長をもっと長く取れば調整が楽なのですが、スピカ望遠鏡のシンプルさを優先させました。微調整、ちょっと難しいかもしれません。
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スピカ望遠鏡の双眼計画その1

2023-06-25 06:00:00 | 双眼鏡・双眼望遠鏡
 スピカ望遠鏡というのは「小学校高学年であれば失敗なしで工作することができます」と宣伝されている子供向け自作望遠鏡キットです。

 鏡筒はボール紙製ですが、対物レンズは口径40mm焦点距離420mmの2枚合わせアクロマートという無理のない設計の本格的なレンズなので、とても良く見えます。付属しているK12mmという接眼鏡で35倍が得られます。

 そんなスピカ望遠鏡を愛用している星仲間の横山さんから、双眼仕様にしたいという希望が2022年暮れごろ私に寄せられ、双眼スピカ計画がスタート。


 2セット購入したスピカ望遠鏡を持ってきてもらい、組み立てをしてもらいながらどのような双眼仕様にするか相談しました。

 スピカ望遠鏡のシンプルさを生かした双眼にしたいという横山さんの意向で、目幅変更機能を省き、横山さんの瞳孔間隔に合わせた固定方式で製作します。
 検討の結果、事前に用意していた4種類の設計プランのうち、双眼の平行調整方法が簡単でスピカ望遠鏡の外観を損ねないような設計案に決定。

 双眼化にあたり、厄介なのは2本の望遠鏡同士の平行調整機能です。少しでもずれると天体が二重に見えてしまいます。
 市販の安価な双眼鏡の一部に平行度がズレているものが散見されますが、少しでもズレた双眼鏡で長時間覗くと目や脳のほうで無理に左右の像を合致させてしまうので、頭痛がしたり最悪の場合は斜視の原因になります。

 スピカ望遠鏡の鏡筒はボール紙製で光軸が狂いやすいはず。使用の都度、平行調整機能が簡単にできる機能が必須と考えました。


 横山さんが鏡筒2本を組み立てるのに2時間半ほどかかりました。居間に同席していた母とお喋りしながらの組み立てだったので、時間が多目にかかったようです。私はその間、工作室で加工を開始。
 なお、天頂ミラーと鏡筒下に置いてある接眼鏡(Or7mm)2個は組立キットに入っておらず別売です。


 横山さんが組み立てたスピカ望遠鏡を預かり、工作室で金属加工を続けました。
 これから数日間はDIYが楽しめます。(笑)

 この続きは、次回のブログ記事 【 スピカ望遠鏡の双眼計画その2 】で。
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双眼で星空散歩2

2014-10-19 07:00:00 | 双眼鏡・双眼望遠鏡
 10月15日(水)に続き、10月18日(土)も双眼望遠鏡を持って新篠津村まで遠征してきました。

 前回は林さんが不在でした。今回はどうでしょうか。
 20時に林さんの観測所に到着すると、林さんは観測所に到着済みでした。

 71020331
 口径10cm双眼望遠鏡で星空散歩する様子を記念撮影。
 奥のほうにある観測所で林さんは撮影準備をしています。 

 31230921
 前回は対空型の広角ファインダーの取付金具が見当たらなかったため、ファインダーがない状態で10cm双眼望遠鏡を使用しましたが、取付金具が見つかったので、無事ファインダーの取り付けができました。

 様々な星雲星団を観望後、例によって固定コリメート撮影をしてみました。

 71020339
 アンドロメダ座の大星雲です。
 露出15秒、絞りF1.6、感度ISO3200、合成焦点距離560mm、22時19分に撮影。
 左側に線状のゴミみたいなものが写ってしまったので、もう一枚撮影しました。

 71020340
 1分後の22時20分に撮影。
 今度は中央やや下に写りました。軌道が大きい(遠い)人工衛星か地球に近づき高速で移動する小惑星ではないでしょうか。

 気温はちょうど0℃でした。


【10月19日10時:記事追加】
 18日の午後に東区の地区センターでバイオリンの合奏をしました。
 演奏曲は 「キラキラ星変奏曲」。文字通り、昼も夜もキラキラ星状態でした。(笑)
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