2か月程前(2013年2月13日付)ジュネーブ市長のレミー・パガーニ氏から前双葉町長の井戸川克隆氏へ送られた『書簡』を
転載しても良いとのことですので、遅ればせながら転載させて頂きます。遠い国の首長でありながら、この方は日本の政府やマ
スコミ、医療関係者、教育者等々と違い、真実の言葉で日本の人々の『健康』を心配しておられます。その勇気ある発言に敬
意を表します。
(以下、お手紙を転載させて頂きます)
井戸川克隆様
ジュネーブ 2013年2月13日
拝啓
昨年のジュネーブご訪問に改めて感謝申し上げます。Palais Eynard(市庁舎)に井戸川さんをお迎えでき、大変光栄に存じま
す。2011年3月に発生した原発事故後、日本国民の皆さんが直面している問題の理解がより深まりました。
1月23日に双葉町長を辞職されたと伺いました。苦渋の決断だったとお察しいたします。井戸川さんは福島県の首長の中でた
だ一人住民を県外に避難させ、原発事故の深刻な状況に対し無策、無責任な態度を取る政府、東電を公然と糾弾されてきま
した。放射能被害から町民の皆さんを守るために、あらゆる措置を講じられてきました。辞職されたことは残念に思います。
昨年10月にお会いした際、チェルノブイリと日本の避難基準を比較した表を見せて下さいましたね。日本政府が、直ちに健康
への影響はないとの見解から、年間の放射線許容量を20mSvまで引き上げたと知り驚きました。
ご存知の通り、ICRPは一般公衆の年間被曝許容限度を1mSvと勧告しているほか(原発作業員の被曝許容限度は年間
20mSv)、子供は大人よりも放射能に対する感受性がより高いことは周知の事実です。また、放射能が及ぼす健康被害につい
ても幅広く論文化されており、最近ではニューヨーク・サイエンス・アカデミーが2009年に発行した研究書に詳細が述べられて
います(脚注にあるA.ヤブロコフ博士、A.ネステレンコ、V.ネステレンコ著の「チェルノブイリ:事故が人々と環境に与えた影響」
が該当する研究書です)。そして、多くの独立した研究者が数十年来の研究結果から、被爆に安全なレベルはないと唱えてい
ます(ICRPも閾値なし直線仮説を認めています)。
ICRPが勧告した年間被曝許容限度の引き上げ正当化の立証責任は、日本政府にあります。しかし、そんなことを実証できるの
でしょうか。実際には、これ(1mSv)以下の低線量被爆による健康被害が認められていることから、許容限度などは意味を持た
ないのです。政府に福島県民の皆さんがモルモットにされている事態は許しがたいです。事実、政府はIAEAとWHOの協力の
もとに、福島県民の健康実態のデータを集めようとしています。これは人権侵害であり、即刻阻止されなければなりません。
井戸川さんは、今後も政府当局による非人道的な扱いから市民の皆さんを守るために戦っていかれると伺いました。もっと多く
の人々が共闘することを望みます。人々が高濃度汚染地域での生活を強いられていることは到底受け入れられません。政府と
福島県が、双葉町の皆さんを致死的なレベルに汚染された地域に帰還させようと画策していることは狂気の沙汰としか言いよう
がありません。
また、福島県の約40%の子供達に甲状腺の異常が認められたことは由々しき事態です。福島県外でも、甲状腺異常の発生率
が増加していると伺いました。このような非常事態の中、医療関係者は真実を隠蔽し、被曝の影響を否定しています。お会いし
た時にも井戸川さんが強調なさっていた通り、日本人はチェルノブイリから学ばなければなりません。福島の状況は、住民の皆
さんの健康被害の発生頻度を見る限り、チェルノブイリよりも更に深刻に思えます。ご存知かと存じますが、チェルノブイリ周辺
で甲状腺ガンの発生率は1990年代に入ってから増加し始めました。双葉町では約300人の住民の皆さんが、福島第一原発の
第1号機爆発により発生した高濃度の放射能の灰を浴びたと仰っていましたね。にもかかわらず、政府や医療関係者は、被害
者の皆さんに対して健康調査を実施しなかったとのこと。会合の際お約束しましたが、ジュネーブ市は、医療関係者や
IndependentWHOなどをはじめとする団体と協同して、適切な健康調査が実施されるよう、最大限サポートしていく所存です。
他に何か協力できることがありましたら、遠慮なく仰って下さい。
今後益々のご活躍をお祈りするとともに、正義を勝ち取るための戦いに多くの皆さんが団結することを望んでやみません。くれ
ぐれも健康に留意され、またジュネーブでお目にかかれることを楽しみにしております。
敬具
ジュネーブ市長
レミー・パガーニ
*pdfです。↓
http://rollienne.jp/wp-content/uploads/Pagani_to_Idogawa.pdf
☆1万人から10万人へ、10万人から100万人へ、100万人から1000万人へ、1000万人から1億人へと、不正義に気付いた人が
周りの10人の人々の良心に問いかける事で、真実はどんどん周知されていくと思います。原発事故を起した当事国であるのに
日本では、ほんの僅かな自治体の首長さんだけが、原発事故による放射能被害の「真実」を訴えているという有様です。このよ
うな「良心によって行動」されている方を私達は、全力で応援していきたいと思っています。